文部科学省は、小中学生の近視の実態調査を初めて行った。その結果、学年が上がるにつれて近視が悪化していることが明らかになった。

全国の小中高校生の中で、視力が1.0未満の割合は、2019年度に過去最多を更新。そのため、文科省は、去年4月から12月にかけて、全国の小中学生およそ7400人を対象に近視の実態調査を行った。

調査では「眼軸長」と呼ばれる目の角膜から網膜までの長さを計測。「眼軸長」は長いほど近視の度合いが強いとされる。「眼軸長」の長さは、小学1年生の男子が平均22.96mm、女子が平均22.35mm。これに対して、中学3年では男子が24.61mm、女子が24.18mmだった。学年が上がるにつれて「眼軸長」が長くなり、近視が悪化していることが明らかになった。

文科省によると、2005年に、福岡県久山町で、40歳以上の男女を対象に行われた調査では、眼軸長の長さは、男性が平均23.8mmで、女性が平均23.4mmだった。久山町は、日本の人口構成と似通っていることから、このデータは、日本人の平均として参考にされているという。

そのデータと比較しても、中学生の眼軸長は、成人よりも長く、近視が進んでいることが分かる。調査に携わった東京医科歯科大学・大野京子教授は、記者会見で「眼軸長が、結構、長くなっている。我々の予想よりも長かった」と指摘した。

また、視力が1.0未満の割合は、小学生が32.9%、中学生では54.7%。逆に、視力1.0以上の割合は、小学校1年生ではおよそ8割だったが、学年が上がるにつれて減少。中学3年生では、およそ4割まで低下していた。

メガネやコンタクトレンズの使用率は、男子中学生(3年生)はおよそ4割。女子ではおよそ半数にのぼっていたことも、今回の調査で初めて明らかになった。視力0.3未満の割合は、小学校1年生では1~2%だが、中学校3年生では、およそ3割まで増加。男子より女子の方が、視力が悪い傾向も分かったという。

その理由について、大野教授は「女子の方が、体の発達が男子よりも早く、眼軸長が長くなる時期も体の成長と密接に関係がある。そのため、近視が男子より女子に顕著であったことが考えられる」と分析。その上で、「画面の小さいスマートフォンやゲーム機が目に悪影響と言われている」として注意を呼びかけた。

一方、文科省は「GIGAスクール構想」として1人1台端末を推奨し、学習の際にタブレット端末の使用を進めているが、タブレット端末を使用する際は、「画面から目を30センチ以上離すこと」や、「30分に1回は20秒以上遠くを見る」などと注意喚起をしている。

社会部
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