天皇皇后両陛下は、7月1日、東京・千代田区で開催された「日米フルブライト交流計画」の70周年記念式典に臨まれました。

日米フルブライト交流計画とは

フルブライト交流計画は、人と人との相互理解を目的に、アメリカのフルブライト元上院議員の提唱で発足した留学制度です。日米間では昭和27年(1952年)に始まり、70年間で日本からアメリカに6600人以上が留学。小柴昌俊さん、利根川進さんら複数のノーベル賞受賞者を含め、幅広い分野で活躍する人材を輩出しています。

陛下 式典でのおことば

「若い時の海外への留学は、とても貴重な経験となります。私や皇后にとっても、留学先の国の社会や文化などについて直に知る経験ができたのみならず、他の留学生とも交流を深め、また、自分の国を見つめ直す良い機会になったと思います。」

令和4年7月(2022年) おことばを述べられる陛下
令和4年7月(2022年) おことばを述べられる陛下
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陛下 イギリス留学とそのご感想

陛下は、昭和58年(1983年)から約2年間、イギリスのオックスフォード大学に留学されています。天皇家で初めての長期留学でした。「18世紀のテムズ川の水上交通」について研究する傍ら、陛下は、様々な経験を通して見聞を広められました。

昭和58年(1983年) テムズ川を視察される陛下
昭和58年(1983年) テムズ川を視察される陛下

留学中の2年間は、学生寮に入られ、生まれて初めての1人暮らしを体験。身の回りのことを自分一人でやらなければならない環境で、初めて経験されたのが洗濯でした。洗濯機に服を詰め込みすぎて、水と泡があふれ出す大失敗もありました。

昭和60年(1985年)学生寮で机に向かわれる陛下 
昭和60年(1985年)学生寮で机に向かわれる陛下 

自転車に乗って街を巡ったり、クレジットカードで気ままに買い物をしたりと日本ではできなかったことを経験されます。

昭和58年(1983年) 友人と街を散策される陛下
昭和58年(1983年) 友人と街を散策される陛下

留学はまた、イギリスをはじめ、ヨーロッパ各国の王室と、親交を深められる機会にもなりました。エリザベス女王の誕生日を祝うパレード。陛下は、バッキンガム宮殿のバルコニーからダイアナ元妃らと一緒にご覧に…

昭和60年(1985年) エリザベス女王の誕生日パレードを英王室の方々とご覧に
昭和60年(1985年) エリザベス女王の誕生日パレードを英王室の方々とご覧に

リヒテンシュタインでは、皇太子一家とスキーを楽しまれた陛下。
留学期間中、ヨーロッパの14カ国を訪問し、各地を視察されました。

昭和59年(1984年) リヒテンシュタインの皇太子一家とスキーを楽しまれる陛下
昭和59年(1984年) リヒテンシュタインの皇太子一家とスキーを楽しまれる陛下

陛下はのちに留学について…「日本にいる時より自由に行動でき、その中で、様々な人との交流を重ね、イギリス社会を内側から見つめるとともに、外から、より客観的に日本を見る視点を養うことができた」と振り返られています。

陛下 留学への思い

今回、陛下は、ご自身の経験を踏まえ、留学する学生や研究者に向けて、思いを述べられました。

【陛下おことば】
「新型コロナウイルス感染症の影響により一時停止されていた、留学のための両国間の渡航が再開されるようになり、日米両国の学生や研究者が、再び留学を通して、専門分野の研鑽を積むことに加えて、両国の歴史や社会、文化を学び、交流を深め、様々な貴重な経験を積まれることを願っています。」

留学を通じて、日米の人々の相互理解が一層深まり、世界の平和と発展につながることを願われた天皇皇后両陛下です。

(皇室ご一家」7月10日放送より)