震度6弱を観測した地震に見舞われた石川・珠洲市。この地震で、作品が壊れるなどの被害にあった珠洲焼作家の男性が、一時は諦めかけた展覧会を東京で開いた。

幻の古陶“珠洲焼”作家…震災を乗り越え個展
珠洲焼作家 篠原敬(しのはら・たかし)さん:
こんにちは。よろしくお願いします

2022年7月2日。東京都で珠洲焼作家、篠原敬(しのはら・たかし)さんの個展が始まった。
個展に訪れた客:
これは焼きが面白い

珠洲焼作家 篠原敬さん:
地震起きた直後は、(個展を)やめようかなと思ったけれど、あるものでやりましょうって

200点近くの作品が破損…「一時は辞めようか」とも
2022年6月19日。最大震度6弱の揺れが、能登半島の最先端にある石川・珠洲市を襲った。この地で珠洲焼を作り続けている篠原さんの作品も大きな被害にあった。

珠洲焼作家 篠原敬さん:
すごい状態です、あっちのほう。(作品が)300点ぐらいあったと思うんですけど、もう200点以上割れている感じですね

取材に来た記者:
これも廃棄?

珠洲焼作家 篠原敬さん:
廃棄です

珠洲焼作家 篠原敬さん:
後ろ向きになったね、気持ちが。人生の転機かな、地震のおかげでまた新しいことやろうかなって、冗談半分で思ったり…

珠洲焼作家 篠原敬さん:
とりあえず、今は東京の展覧会をキャンセルするわけには行かないので。(地震の後片づけより)ちゃんと(個展の準備を)やるのが先です

災害乗り越え生き残った作品には「役目がある」
地震の前から決まっていた、東京での展覧会。壊れなかった作品だけでも展示をしようと、予定通り開くことにした。

珠洲焼作家 篠原敬さん:
こんにちは

ギャラリーに並んだのは、皿やコップなど約80種類。
ギャラリーを訪れた客:
(入っても)良いですか?
地震の被害を知った、大勢のファンが集まった。

ギャラリーを訪れた女性:
すごく心配していた。でもよかった元気そう
ギャラリーを訪れた女性:
地震でニュースを見て、被害が甚大だと聞いて…

珠洲焼作家 篠原敬さん:
ありがとうございます

作品を購入した客は:
災害を乗り越えて生き残ることができたという事は、(作品に)なにかしら役目があるということだと思うので、生き残った器とか作品とか、それにこたえられるように大事に使っていきたいと思います

珠洲焼作家 篠原敬さん:
嬉しいですね
記者:
作品には人の心がないですけど…
珠洲焼作家 篠原敬さん:
そうだよ。物には感情も何もないんだけど、それを使う人が、そこに気持ちとかいろいろな思いを込める。工芸ってそういうことだと思うし。そういう言葉を頂けて嬉しい

地震の中を生き残った篠原さんの珠洲焼。新たな持ち主のもとで時を刻み始める。

(石川テレビ)