2022年は6月の時点で連日のように猛暑日となった。夏本番となるこれからは、さらに暑い日が続くことも考えられるだろう。人間だけでなく植物への影響も心配される。

こちらは、Twitterユーザー・みんとん(@mintontktk)さんが6月28日に撮影した画像。暑い日が続き、育てていたミントが“枯れかけた”というのだ。その数日前のものと比べると、葉がしおれたり、黒ずんでいるのが分かる。

左が6月28日のミント。右がその数日前(提供:みんとんさん)
左が6月28日のミント。右がその数日前(提供:みんとんさん)
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ミントは生命力が強い植物として知られていて、これが枯れかけたことからも、今年の夏の過酷さが伝わってくる。SNSでは同じように、家庭菜園が暑さでダメになったいう声もあった。

熱帯性の植物でも、上限は30℃くらいまで

育てている人にはつらい環境だが、植物や果物を守ることはできるのか。夏の気候が与える影響や対策を、種苗メーカー・サカタのタネに聞いた。

――今年の夏の気候をどう見ている?猛暑が続くと植物にどんな影響を与えそう?

今年の夏が特に過酷だったのは、いまのところ、6月20日すぎから7月初めまでの約10日間です。その前は低温傾向で激しい寒暖差がありました。曇天や低温から急に高温になったので、幅広い植物がストレスを受けていると思います。
猛暑日が続くと、普段の夏は枯れない植物でも枯れてしまうことがあります。原因は主に激しい乾燥で、水やりの管理が難しくなることです。鉢植えでは1日2回以上与えなければならない日もありますし、普段は水やりの必要がない地植えでも、水やりを行う必要がでてきます。根が浅い植物は枯れることもあります。


――暑さは植物の成育にどんな影響を与える?

植物には生育適温があります。暑さを好む熱帯性の植物でも、上限は30℃くらいまでなので、猛暑日になると生育が止まったり枯れたりする原因になります。夜間の気温が下がらないことも、昼に光合成で作った養分を消耗してしまうことになります。


――植物のダメージが分かるサインはある?

一つは「しおれる」こと。鉢植えの場合、しおれ始めた時に夕方まで様子を見ると傷みが激しくなります。土が乾いているようであれば、水をあげて日陰に移動した方がいいです。葉にも水をあげてください。しおれてきた際に土が十分湿っている場合は、一旦日陰に移すか様子を見るしかありません。水切れ以外の要因で弱っている可能性が高いです。

もう一つが「葉の変色」。葉が変色していないか、新しい葉が元気に出ているか、日々観察してください。日中に激しくしおれて夕方に戻った場合は、葉の一部が茶色く枯れたり、黒っぽく変色します。暑さで生育不良になると新しい葉が伸びず、古い葉が老化していきます。ハダニの被害も、葉の色が白っぽくなることから発見されることが多いです。

葉などの状態を確認することも大切(画像はイメージ)
葉などの状態を確認することも大切(画像はイメージ)

――猛暑から植物を守るために気を付けてほしいことは?

植物を1日に最低1回はよく見てあげる、観察することです。前日と比べて何か様子がおかしい、弱っているといった際に早く発見できるほど、対策も効果が期待できます。逆に、放置してすっかり弱ってしまうと手遅れになることが多いです。弱ってしまった植物を復活させられるかどうかも、どの程度、どのように弱ったか、また、植物の種類と性質によりさまざまです。

1.育てている(育てようとする)植物の性質をよく知ること。2.育て始めたら、毎日必ず一度は観察し、その時々に必要な管理を行うこと。

これは園芸に共通するセオリーですが、猛暑時は特に注意していただきたいです。


――夏に起きがちな、園芸の失敗パターンは?

水やりの不足、逆にやり過ぎによる根腐れ。加えて主に葉に発生する日焼けが多くなります。ハダニ類の発生が増えますのでその被害もあります。

家庭でもできる!植物の暑さ対策

――植物の暑さ対策として、できることを教えて。

プランターや鉢の場合、まずは、半日陰に動かしてあげることです。目安は、朝に水やりして夕方までに乾く場合は移動させる。西日が当たるなら、建物やコンクリートの床などから遠ざけてもいいでしょう。建物が熱を吸収し、夜間も熱い場合があるためです。コンクリートや地面からの照り返しが激しいと育ちが悪くなるので、ウッドデッキやレンガ、すのこを台にして上に鉢などを置く対策もあります。5センチの間隔があくだけでも効果があります。

もしも、日当たりを好む植物なら、猛暑の時期だけ、木の下など半日陰に移動する。西日(午後2時以降)だけでも避ける。遮光材(寒冷紗など)を使って日よけをしてもいいでしょう。

コンクリートの熱や照り返しにも注意(画像はイメージ)
コンクリートの熱や照り返しにも注意(画像はイメージ)

――ほかには、どんな暑さ対策があるの?

ほかには「マルチング」という、植えた植物の地表面(株元)を腐葉土やピートモスなどで覆うことも水分の蒸発などを防ぐ対策になります。

水やりも大切です。目安は、朝は土の表面が乾いていたらたっぷりとあげる。夕方は表面が乾いている程度であれば翌朝まで与えず、中まで乾いていたら(しおれてから戻らない、鉢が軽いという状態の場合)たっぷり与える。日中の水やりは基本的にしませんが、しおれて鉢の土がよく乾いている場合、応急措置としてすぐ日陰に移して、水をあげてください。

水のあげかたは慎重に(画像はイメージ)
水のあげかたは慎重に(画像はイメージ)

露地(畑)の場合は対策が限られますが、マルチングは畑でも有効です。葉物野菜や、夏から秋の根菜類の生育初期には遮光・雨よけ・通気性を兼ね備えた、夏用トンネル資材の使用もおすすめです。

夏用トンネル資材「モヒカンネット」(提供:サカタのタネ)
夏用トンネル資材「モヒカンネット」(提供:サカタのタネ)

――暑さ以外で、夏に注意すべきことは?

まずは「病害虫」。梅雨、秋の長雨時には日照不足と相まって病気や害虫が多く発生します。病気や害虫を見つけたらすぐに対策をすることが大事です。あっという間にまん延します。

また「台風・ゲリラ豪雨」もベランダや戸外の植物が大きな被害を受けます。風対策には、ネットを使ったり、鉢を影響が受けにくい室内などに移動すること。雨対策には、鉢を軒下などに移動させたり、畑の場合は排水をよくすることで対処できます。このほか、台風の進路によっては塩害を受けることがあります。こちらは塩が乾く前に水で流すことが対策になります。

台風や豪雨の対策も忘れずに(画像はイメージ)
台風や豪雨の対策も忘れずに(画像はイメージ)

そして最も注意してほしいのは「人の健康」。熱中症にならないよう、炎天下での作業を避け、帽子、通気性の良い服、水分補給、こまめな休息が対策になります。日中の作業は避けてください。

猛暑で野菜や果物の成育はどうなる?

――暑さに強い野菜や植物を教えて。

暑さに強い野菜には、エンツァイ、サツマイモ、ナス、オクラ、ゴーヤなどがあります。おすすめの品種はオクラの「ずーっとみどり」、ナスの「黒福」などです。暑さに強い花には、ポーチュラカ、ペンタス、ニチニチソウ、ブルーサルビアなど。おすすめの品種はニチニチソウの「サンダー」シリーズです。当社のサイトでは暑さに強い品種を紹介もしています。

ニチニチソウのサンダー(提供:サカタのタネ)
ニチニチソウのサンダー(提供:サカタのタネ)

――猛暑でおいしくなりそうな野菜や果物、逆に成育が難しそうなものはある?

日照が多い時に味が良くなる野菜・果物は、トマト、カボチャ、サツマイモ、モモ、ブドウ、ナシ、サクランボなどがあります。ただし、サクランボのように高温に弱いものもあり、主な産地は北海道や東北、高冷地になります。“味がよくなる=育てやすい”ではありません。

高温多湿の状況でおいしくなりそうなものは思い当たりません。熱帯地方のフルーツなどはおいしくなるのかもしれませんが、日本では冬の寒さで枯れてしまうので、栽培が難しいと思います。近年増えている、極端な猛暑は多くの野菜や果物で成育を阻害します。ジャガイモ、キュウリ、トウモロコシ、夏のネギやキャベツなどが不作となる可能性があります。



夏は猛暑だけではなく、台風や大雨に見舞われる可能性もある。植物や果物が水不足でしおれたり、逆に水が多すぎて根腐れしないよう、こまめに様子を見たほうがよさそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。