私がお伝えしたいのは「タイで進む大麻の規制緩和の波紋」です。

タイでは6月に、大麻が麻薬指定から外され、家庭栽培も解禁。新たな産業にしたい政府は、100万株を無料配布しました。
解禁は医療や食品用などに限ったもので、娯楽目的の吸引は禁止、処罰の対象です。
しかし解禁後、過剰摂取した市民の搬送が相次ぎ、摂取後に死亡するケースも。
現地の日本大使館も注意を呼びかけています。

ポイントはこちら。「大麻の産業化に、高まる懸念

タイで栽培が許可されたのは、幻覚作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の割合が0.2%以下の大麻で、娯楽目的での大麻の吸引は引き続き禁止されます。
違反をすれば、3カ月以下の禁錮か罰金、または両方が科される可能性があります。
また、日本人がタイで大麻を購入や所持をした場合、国外犯処罰規定が適用され、処罰対象となることがあり、タイの日本大使館も「日本国外であっても安易に大麻に手を出さないよう」注意を呼びかけています。

大麻の家庭栽培の解禁はアジアでは初の試みとなりますが、タイ政府は医療用大麻のほか、食品や美容素材として世界的に注目を集めている成長市場に参入し、市場の一角を勝ち取りたい考えです。
すでに食品では、大麻の葉入りのケーキやクッキー、エキス入りのジュースなどが販売されていて、美容商品としても、種から抽出した油を配合したローションなどが販売されています。

一方で、タイの大学が6月下旬にオンラインで行った世論調査では、約7割が今回の緩和を懸念していると答えたほか、半数以上の人が「マイナスの影響が多い」と答えていて、専門家も乱用による健康被害への警鐘を鳴らしています。

政府と市民の意識との間に乖離がみられる状況が浮き彫りとなるなか、今後の行方が注目されます。

池谷庸介
池谷庸介

FNNバンコク支局 特派員

国際取材部
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