盗難被害で日本の寺から韓国に持ち込まれた仏像の所有権はどちらにあるのか。2022年6月15日、韓国で注目の裁判が再び動き出した。

観音寺・田中節竜住職:
以前から申しているが所有権は我々、観音寺側にある

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長崎県対馬市にある観音寺の田中節竜住職(46)が所有権を主しているのは、県の有形文化財「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」。

この仏像の所有権を巡って日韓の寺同士が、10年近く争いを続けている。

韓国の寺「略奪された」と主張 裁判泥沼化

事の発端は2012年10月。観音寺から、観世音菩薩坐像が何者かに盗まれる事件が発生した。

盗まれた仏像は3カ月後に韓国で見つかり、現地警察が窃盗グループを逮捕。当然、仏像は観音寺に返還されるものと思われていた。しかし…。

韓国の寺、浮石寺の住職などが「もともとは自分の寺にあった仏像だ」と所有権を主張。

600年以上前の室町時代などに活動していた日本の海賊集団「倭寇」に略奪されたものとして、日本への返還差し止めを訴えたのだ。

2016年、浮石寺側は韓国政府が保管している仏像の引き渡しを求めて提訴。

一審判決で「浮石寺への引き渡しを命じる」との判決が出たあと、韓国政府側が控訴し、裁判が継続される泥沼の事態となった。

対馬市の寺から仏像が盗まれてから10年、新たな動きがあった。

裁判に初出席 所有権を強く主張

観音寺・田中節竜住職:
裁判に参加しなかった場合は結審してしまうということなので、負担は大きかったが、参加する決意をした。粛々と毅然と対応していく

裁判前日に韓国入りした田中住職。日本への返還を主張する韓国政府側の「補助参加人」として、テジョン高裁で開かれた裁判に初めて出席した。

日本の田中住職は、韓国の浮石寺の前住職と法廷で初めて対峙し、自らの主張を直接訴えた。

観音寺・田中節竜住職:
韓国の寺側は、法的な意味でも所有権の立証が不十分。取得時効が成立し、取得権は観音寺にある

田中住職は、600年前に盗まれたという話は立証が不十分で、時効が成立していると主張した。そして、裁判終了。

観音寺・田中節竜住職:
檀家の心の拠りどころとして、長く大切に守ってきた。所有権は我々にあると強く主張していきました。言いたいことは全て申し上げたので、穏やかな対馬の海のような感じです

一方、韓国の浮石寺の前住職は…。

浮石寺・ウォヌ前住職:
まず、観音側の参加に対して感謝申し上げる。そちら側の主張を十分に聞いたから、検討を充分にして、法理的な準備をして、次の裁判に臨むようにする

果たして、仏像は日本に戻ってくるのか。次の裁判は8月に行われる予定だ。

(テレビ西日本)

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