牛乳が苦手という人は、小学校時代の“給食の牛乳”で最後まで飲み切るまで家に帰れなかったなど、苦い思い出があるかもしれない。

そんな牛乳が苦手な子どもでも、楽しく、牛乳を飲み切りたくなる牛乳瓶が開発された。

牛乳を最後まで飲み切ると4コマ漫画が浮かび上がる牛乳瓶「ミルクコミック」で、開発したのは、乳製品の製造・販売を手掛ける岐阜県の会社「関牛乳」だ。

ミルクコミック(提供:関牛乳)
ミルクコミック(提供:関牛乳)
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「ミルクコミック」は、牛乳瓶に子どもたちが好きな4コマ漫画をプリントしてある。ただ、漫画は牛乳色の白いインクで印刷されているため、牛乳が入った状態では、はっきりと読むことができない。

牛乳を飲み進めることで徐々に漫画が現れ、最後まで飲まないと結末が分からないので、ついつい飲み切ってしまうという仕掛けだ。

ミルクモンスター(提供:関牛乳)
ミルクモンスター(提供:関牛乳)

この漫画の作者は、「それでも人間レオンくん」「自称漫画家だけど学校の先生やってます」などの作品で知られる、漫画家のあみあきひこ先生だ。

全10話となっており、子どもたちに「他のストーリーも読みたい」という気持ちを促すことで、継続的に牛乳を飲み切る習慣が付くような工夫が施されている。

「ミルクコミック」は6月1日の「牛乳の日」にちなんで、5月31日に岐阜県・関市立旭ヶ丘小学校の給食で試験的に導入。4年生、5年生、6年生を対象に約200本が提供された。

牛乳瓶に描かれているのは、オリジナルの4コマギャグ漫画ということだが、一体、どのような内容なのか?

そして、「ミルクコミック」で給食の牛乳を飲んだ子どもたちは、どのような反応を見せたのか?


「関牛乳」の代表取締役社長・吉田宰志さんに話を聞いた。

「楽しく前向きな気持ちで、おいしく牛乳を飲んでもらいたい」

――「ミルクコミック」を開発した理由は?

廃棄乳問題、特に学校給食での廃棄乳を減らすことができないかと考えていました。

ただし、子どもたちに無理やり飲ませるのではなく、楽しく前向きな気持ちで、おいしく牛乳を飲んでもらい、好きになってもらいたい、そんな想いから、このプロジェクトは始まりました。 

「ミルクコミック」を通して、子どもたちに牛乳を好きになってもらうこと、さらには、これをきっかけに多くの人がこの問題に目を向けて、学校の給食に牛乳が出てくる意義を感じてもらえたら嬉しいです。

――4コマ漫画はどのような内容?

子どもたちがなんとなく敬遠しがちな“牛乳”から生まれた“ミルクモンスター”と“人間の子ども”が面白おかしく交流しながら親交を深める痛快4コマキャグ漫画です。

4コマ漫画の内容(提供:関牛乳)
4コマ漫画の内容(提供:関牛乳)

――10種類の漫画の内容は全て繋がっている?

1話1話のストーリーは繋がっていませんが、牛乳から生まれたミルクモンスターと人間の子どもが親交を深めるというコンセプトは、全話に共通しています。
 

――漫画の内容を考えるうえで苦労したポイントは?

試作段階では、モンスター達が少しイタズラをする様な内容も含んでいたのですが、ミルクモンスターを読んだ子どもたちが牛乳に悪い印象を持たないように、モンスター達を悪者にせず、かつ、4コマ漫画らしいオチをつけるのに苦労しました。
 

「何度も検証し、ベストなインクの濃度にたどり着きました」

――牛乳を最後まで飲み切らないと漫画を読めないようにするのは大変だった?

はい。
牛乳を飲み切らないと読めないようにするために、印刷段階でトライアンドエラーを重ねました。

通常のインクの濃度で印刷した牛乳瓶だと、漫画の影が牛乳に落ち、牛乳が入っている状態でも容易に漫画を読むことができました。

インクの濃度を下げ、透過性が高まることで影が薄くなり、漫画は読みづらくなるのですが、濃度を下げすぎると飲み切った後も漫画の視認性が落ちてしまうのです。
何度も検証し、現状のベストなインクの濃度にたどり着きました。

牛乳を飲む前の「ミルクコミック」(提供:関牛乳)
牛乳を飲む前の「ミルクコミック」(提供:関牛乳)
牛乳を飲み、漫画が浮かび上がった「ミルクコミック」(提供:関牛乳)
牛乳を飲み、漫画が浮かび上がった「ミルクコミック」(提供:関牛乳)

――試験的に提供された小学校の生徒からは、どのような感想が寄せられている?

子どもたちは「牛乳を飲み終わったときに漫画が出るのがおもしろい!」「漫画がおもしろかったし、給食が楽しくなりました」などと大喜びで、牛乳を残さず飲むことの大切さに気づいた様子でした。
 

――「ミルクコミック」によって、牛乳の飲み残しは減った?

今回の試験導入では、対象の児童の反応も総じて好意的で、「普段は残してしまうこともあるけれど、漫画があるおかげで楽しく最後まで飲むことができた」といったコメントもいただいています。

今後、この取り組みを広げていく中で、給食の牛乳の飲み残し・廃棄という課題に少しでも貢献できるよう、トライアルと効果の検証を継続的に重ねていきたいと思います。

定着させるには印刷のコストが課題

――今後、小学校の給食として定着する可能性は?

今回、“牛乳瓶”にミルクコミックを印刷しましたが、現状、関牛乳では“紙パック”で牛乳を提供しています。
年に一回、「牛乳の日」のイベントとしてやっていきたいと思っています。
 

――小学校の給食として定着させるためにはどのような課題がある?

牛乳瓶の印刷にはコストがかかります。
このコストが課題です。



子どもにとって身近な食品ロスである牛乳の飲み残しを減らすために開発された、最後まで飲んだら“4コマ漫画”が現れる牛乳瓶「ミルクコミック」。

この牛乳瓶で牛乳を飲むという体験をした子どもたちは、きっと、給食の牛乳がポジティブなものとして記憶に残っていくのだろう。
現状、学校給食で定着するのは難しいようだったが、イベントとして、多くの学校で実施されていくことを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。