マイレージならぬ、参礼寺(まいれいじ)。マイルならぬ、参詣(マイリ)。
実はこれ、お参りした時に貯まるポイントのことだ。今、寺社で参拝するとポイントがもらえる動きが進んでいる。

江戸総鎮守・神田明神では、今年1月にスマホアプリ「神田明神EDOCCO倶楽部」の運用を始めた。

「神田明神EDOCCO倶楽部」(※画像提供:神田明神)
「神田明神EDOCCO倶楽部」(※画像提供:神田明神)
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神田明神の境内各所に設置された専用端末にスマホをかざすと、参詣(マイリ)と呼ばれるポイントが取得できるというものだ。(※1日1回まで)

さらに、境内店舗や周辺の提携店の利用でも取得可能。また貯まったポイントは、例えば、10マイリで“将門煎餅”、50マイリで“ジンジャエール”、150マイリで“神田祭巾着”といった神社のオリジナルの記念品などと交換できる。

ポイント特典(※画像提供:神田明神)
ポイント特典(※画像提供:神田明神)

一方、浄土宗は2024年の浄土開宗850年の事業の一環として、今年9月下旬にスマホアプリ「そうだ、浄土宗寺院を巡ろう」をリリースする予定だ。

公式アプリ「そうだ、浄土宗寺院を巡ろう」(※画像提供:浄土宗)
公式アプリ「そうだ、浄土宗寺院を巡ろう」(※画像提供:浄土宗)

このアプリは、浄土宗寺院の参拝を目的とし、寺院に訪れると参拝した証として、スタンプと参礼寺ポイントが付与される。そして、貯まったポイントは記念品と交換できる。なお、リリース時には浄土宗の約1000カ所の寺院の登録を目指しているという。

参礼寺ポイント加算条件(※画像提供:浄土宗)
参礼寺ポイント加算条件(※画像提供:浄土宗)

家電量販店などの店舗を訪れた時に、来店ポイントが貯まるサービスは浸透してきているが、お参りがポイント化されてることは、知らなかった人も多いのではないだろうか。また歴史のある寺社が、このようなアプリを活用した取り組みをしていることを意外だと思った人もいるかもしれない。

神田明神「神社と接点がない方々に興味を持ってもらう」

では、なぜアプリを作ることにしたのか? お参りをポイント化することに反対の声はなかったのか?

まずは、神田明神の担当者に詳しく話を聞いた。


――なぜアプリを作ることにした?

EDOCCO倶楽部は令和4(2022)年1月からスタートした、神田明神を知って身近に感じていただくための、無料でご利用いただけるスマホアプリです。今まで神社との接点があまりなかった方々にも興味を持って頂き、お参りにお越しいただく一つのきっかけとなればと思い運用を始めました。

将来的には神社近隣の店舗とも連携し、地域の活性化につながってければと考えています。


――参拝をポイント化することについて、神社内でどんな声があった?

いままでにない取り組みのため神社内でも様々な意見が出ました。神社の信仰の部分においては変えてはいけないが、神社を知ってもらうための発信方法は時代に応じて変化していかなければいけないと考え、運用にいたりました。


――利用者はどのくらいいる?

コロナ禍で参拝者減少の中、5月末の時点で会員数は約1400人でした。反響があったと感じています。


――利用者からはどんな声を聞く?

EDOCCO倶楽部の会員になられた方からは今どきで楽ししい仕組みだと喜ばれています。

「神田明神EDOCCO倶楽部」マイリ確認画面(※画像提供:神田明神)
「神田明神EDOCCO倶楽部」マイリ確認画面(※画像提供:神田明神)

――マイリポイント、多い人はどのくらい貯めている?

1月から運用を開始し、6月上旬の段階で、220マイリ貯めた方はいらっしゃいました。


――既にポイント交換してる人は?

10マイリのおせんべいと交換する人は多くいらっしゃいます。


――今後、どう運用していく?

将来的には神社近隣の店舗とも連携し、地域の活性化につながっていければと考えています。

浄土宗「賛否両論あると思います」

既に運用を始めている神田明神の現状は分かった。では、これから始める予定の浄土宗はどうなのだろうか? 浄土宗浄土宗教学部の担当者にも詳しく話を聞いた。


――なぜアプリを作ることにした?

現代においては、社会状況の変化により、檀信徒の減少や家の継承形態が様変わりしつつあり、これからの寺院運営の変革が求められています。ほとんどの浄土宗寺院の公開は限定的なため、檀信徒以外の方が寺院内に足を踏み入れる機会が少ないことから、敷居が高く入りづらいと思われがちかと存じます。

そこで、「開かれたお寺」、「地域とともに生きるお寺」を目指して、一般の方に向けた開宗850年慶讃事業の「そうだ、浄土宗寺院を巡ろう」の1施策として、スマホアプリを計画いたしました。


――宗教離れしている人が増えていることは実感している?

核家族化等に伴い、家庭に仏壇がない、祖父母や父母と墓参りに行かなくなる等、仏事に触れ合う機会が減っており、宗教離れしている人が増えていることは実感しています。さらには、過疎化による檀家の減少は特に実感しております。


――ターゲットは高齢者というよりは若者?

スマートフォンアプリをインストールしてアプリが使える方が対象とはなりますが、スマホの普及率は、2021年に9割を超え、2022年を迎えた時点では94%に達したとの調査結果がでております。よって、全世代を対象といたしております。


――参拝をポイント化することに反対の声はあった?

賛否両論あると思います。ポイントはあくまで参拝を促すキッカケになればと思っております。

画面イメージ(画像提供:浄土宗)
画面イメージ(画像提供:浄土宗)

御朱印機能やスタンプ機能も

――1日最大何ポイントを取得できる?

同一寺院の参拝ポイント付与は1日1参拝のみですが、他の寺院を参拝していただければ1日何ポイントでも貯めることができます。また、同一寺院の参拝は、毎日でも参拝いただきたいのですが、ポイント付与につきましては、1ヶ月1回の制限をかけさせていただいています。


――ポイントの特典はどんなものを考えている?

一定数のポイントが貯まるごとに景品との交換を考えていますが、交換品についてはまだ検討中であり正式に決まってはいません。

現在の考えとしては、浄土宗公式キャラクターのなむちゃんグッズ、寺院巡り好きの方に喜んでいただける品、浄土宗開宗850年のために菓子店とコラボしたお菓子、さらには賛同いただける皆様のお力もお借りしながら、この事業を盛り上げていきたいと考えております。


――アプリについて、浄土宗寺院の方々の反応は?

寺院に資料を送付(6月中旬予定)する前にこのアプリ事業の報道がなされましたので、まだ反応は分かりませんが、様々な意見があるとは思っています。今回は「参礼寺ポイント」がピックアップされ報道されましたが、このアプリの中には、たくさんの機能を盛り込んでおります。

寺院参拝時に付与いただける「参礼寺ポイント」とともに貰える「寺院スタンプ」は、スタンプラリー的に地域毎にスタンプを管理できる機能。スマホ内で授与可能となる「スマホ御朱印」は、「スマホ御朱印帳」に保存していける御朱印機能。さらにはアプリ参加者のみが参加可能となる「フォトコンテスト」などの機能を盛り込んでいます。

ポイント、スタンプ、デジタルの御朱印と斬新な内容ではありますが、観光地ではない普段は足を踏み入れることがない浄土宗寺院に参拝いただきいとの思いから企画したものでありますので、浄土宗の御寺院には、ご理解いただけるよう丁寧な説明に努めていきたいと考えております。

御朱印機能イメージ(画像提供:浄土宗)
御朱印機能イメージ(画像提供:浄土宗)


“御朱印ブーム”などはあるものの、浄土宗の担当者が話すように、宗教離れが進んで寺社も変革の時期が来ているようだ。こうしたアプリも活用することで、少しでも興味を持ってもらうことが今後の寺社運営に必要なことなのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。