プラスチックのゴミなどが劣化し、米粒程度の大きさまで細かくなったマイクロプラスチック。人間が利便性を追求する中でつくり出した物質が、地球環境と生態系を脅かしている。

丹精込めた”天然の塩” 混入に危機感

人を容易に寄せ付けない南極近海。その大海原を網ですくうと、中にはプラスチックの小さな粒「マイクロプラスチック」があった。

南極近海で採取された「マイクロプラスチック」(提供:東京海洋大学)
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マイクロプラスチックは、捨てられたプラスチックゴミなどが劣化し、直径5mm以下まで小さくなったもの。一部の洗顔剤や歯磨き粉に含まれるマイクロビーズなどもこれに含まれる。

この人工の異物が、いま福岡県糸島市にある塩作りの現場でも脅威となりつつある。

糸島半島の西の突端で、太陽と風の力を借りて海水を凝縮する製塩所「工房とったん」。造ったのは、元料理人の平川秀一さんだ。

元料理人の平川さんが造った製塩所

新三郎商店・平川秀一社長:
竹を逆さにつるしているんですが、上の方から海水をシャワー状に出して。この竹を伝っていく間により時間をかけて、ゆっくりと天日と風にあたって、塩分が濃縮していくんですね

この工程を10日間繰り返すと、塩分濃度は約3倍になる。

その後、5日ほど釜炊きをすると美しい飴色に変化していく。海外のレストランからも注文が入るという「またいちの塩」は、文字通り手塩にかけて丁寧に作られているのだ。

記者:
(舐めて)ほんのり甘いですね

新三郎商店・平川秀一社長:
そう! 塩辛さだけではないんですよ。海水中のミネラルが80種類ぐらい入っている

記者:
どれぐらいの量の海水から、何グラムの塩が最終的にできるんですか?

新三郎商店・平川秀一社長:
だいたい100リットルから100グラムなんですが、家庭にあるような風呂1杯分の海水から、ゴルフボール2~3個程度ですね

約100リットルの海水からとれる塩は約100グラム

平川さんは、この天然の塩にマイクロプラスチックが混入することを恐れている。

新三郎商店・平川秀一社長:
この先、マイクロプラスチックが入らないということではありませんので、入らないためにはどうしたらいいのか。危機感を持って、調査機関だとかに検査していただいている

劣化して粉や粒に 海を漂う「有害物質の運び屋」

プラスチックごみが社会に与える影響などを研究している九州大学の清野准教授に、プラスチックが劣化していく過程を説明してもらった。

九州大学・清野聡子准教授:
発砲スチロールは、だんだん風化していって剥がれてきて。生き物が穴を掘っていってということなんですね。漂流している間に劣化していくんです。これを海の中に放ったままだと、粒になって粉になるまでいく

粒や粉となって海を漂い続けるマイクロプラスチック。その危険性については…。

九州大学・清野聡子准教授:
プラスチックは素材としてすごく便利なんですが、表面にいろんな物質を吸着してしまう。生物に問題があるようなものが吸着されると、それを塊にして海に持って来てしまうので、海に出てしまうと二重に迷惑なものになります

有害物質の運び屋でもあるプラスチックは、海洋生物に捕食され、その体内に取り込まれる。そして、魚を食べる人間の体にも影響を及ぼす恐れがあるという。

手遅れになる前に、自然物への置き換えを

糸島市で塩作りを行っている平川さんの会社では、月に一度、海辺に捨てられたプラスチックゴミなどを拾うビーチクリーン活動をスタッフ総出で行っている。

また2021年からは、販売している塩の容器をプラスチックの袋から紙コップに変更した。

新三郎商店・平川秀一社長:
よく見るとアイスクリームみたいなんですけど、中に塩が入っています。こんな感じですね

塩の容器を紙コップに変更して販売

こうした取り組みは全て、糸島の美しい海を守り、安全でおいしい塩を提供し続けるためだ。

新三郎商店・平川秀一社長:
僕らの身近にあるプラスチックをなるべく減らす。ただ、このプラスチックが悪いものであるかというと、そうでもないんですよね。正しい使い方をするかどうかだと思うんです

「プラスチックは悪いものではない」と話す

九州大学の清野准教授も、環境を守るための我慢ではなく、まず置き換えから始めるべきだと提案する。

九州大学・清野聡子准教授:
これしかないかなという時はプラスチックを使って、それ以外は少しでも自然物や別の素材に置き換えていくことが大切。プラスチックは生活の中に少しずつ入ってきたものだと思うので、少しずつ置き換えていくことは可能だと思うんです

世界では、プラスチックの代替品として、海中でも分解されやすい材質で作られたものを使おうという動きも加速しているようだが、環境が悪化していくスピードと比べると、まだまだ動きが遅いのが実情だ。

マイクロプラスチックは約50年後、海域によっては今の4倍の量に増えるとの予測もある。

地球が大きな悲鳴を上げている…。いま手を打たないと、本当に手遅れになることは間違いない。人間が利便性を追求する中でつくり出した物質が、地球環境と生態系を脅かす中、一人一人の「選択」と「行動」が問われている。

(テレビ西日本)

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