ヤングケアラーとは、家族のために介護や見守り、家事を日常的に行っている18歳未満を指す。長野県教育委員会が2021年、県内の高校生を対象に調査したところ、その「自覚がある」との回答は、全日制で1.6%だった。

ただ実態の把握は難しく、誰にも相談できず学校に通えなかったり、就職の機会を逃して困窮したりするケースも。母親の介護を経験した元ヤングケアラーの男性は、まず実情を知ってほしいと訴えている。

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母の介護に耐え、いら立ち…諦めの心境に

立教大学 コミュニティ福祉学部福祉学科・田中悠美子代助教:
ヤングケアラーは、ケアラーである前に成長途中にある子どもという視点が大事。その子どもの年齢や成長の度合いを考えた時に、不適切なケア、あるいは過度な負担を背負っていないか、早期に気づくことが大切

立教大学・田中悠美子代助教

ヤングケアラーを知ってもらおうと、長野県御代田町で開かれた講演会。支援や啓発に取り組む団体の代表理事で、立教大学の田中悠美子助教が講師となった。

会を企画した1人、御代田町の美齊津康弘さん(49)は元ヤングケアラーだ。

元ヤングケアラー・美齊津康弘さん:
一番つらいと思うことは、周囲から孤立をしてしまうこと。誰にも助けを求められず、1人で家族の世話を担ってじっと耐え続け、人生に夢も希望も持てなくなってしまいます

美齊津さんが小学5年の時、母・ちえ子さんが若年性認知症と診断された。以来5年間、母の介護が続いた。

元ヤングケアラー・美齊津康弘さん:
学校から帰ってくると家に母がいない。徘徊していて母を探すところから毎日、始まる。排泄がうまくいかなかったので、母はトイレの場所が分からなくて。日中、部屋のゴミ箱にビニール袋をセットしてそこで排泄をしていたよう。その後始末も私の仕事。病気の母だから仕方ないとは思えず、時には暴言を吐いたり、暴力をふるうこともあった

母の病気は、自分の顔も忘れてしまうほど進行していった。

提供・美齊津さん

自身の境遇への苛立ち、そして諦め。朝晩働き詰めの父親には、苦しさを訴えることができなかった。親しい友人にも…。

元ヤングケアラー・美齊津康弘さん:
母親が若年性アルツハイマー病になってしまって、問題行動を起こしていること自体、子ども心に家の恥と思ってしまう。ですから恥ずかしくて人に言えない。どうして自分だけこんな思いをするんだろうとか、だんだんと理不尽さに耐えられなくなって、人生投げやりになってしまうとか、そんな心境に

地域での気づきと支援「孤立にならないよう」

美齊津さんはその後、ケアマネージャーとなり、現在はヤングケアラーの問題と向き合っている。自分から言いだせず孤立を深めてしまうことを、まずは地域の人に知ってもらおうと、講演会を企画した。

長野県御代田町で開かれた講演会

参加者:
地域などで早く見つけるのも大事なことだと思いますし、それを早くに支援できるような策ができてくればいいのかなと

参加者:
やっぱり日本全体で考えていくべきものだと思う。これから本当に大事だと思う

元ヤングケアラー・美齊津康弘さん:
何がつらかったかというと、周りから孤立をしていたこと。誰にも相談できず、どんどん自分で悪い方に悪い方に考えてしまう。誰か1人でもいいので、自分の味方と感じられるような大人の存在があると、自分はずいぶん救われたのではないかなと

長野県は2020年度から、ヤングケアラーへの支援をスタートさせている。連携した各市町村の支援員が実態を把握し、子どもが担っている介護や家事の支援につなげる。課題の1つは、ケアをしている本人が声を上げにくいこと。いかに周りが気づいてあげられるかが重要だ。

講演した田中悠美子助教は、「ヤングケアラーはしっかり者のいい子に映ってしまう。見ようとしないと見えてこない存在だ」と指摘している。

相談窓口だけでなく福祉、医療、教育などの現場や地域での気づきが大切だ。

(長野放送)

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