新潟市で笑いや感動を届けようと、障害のある人と家族によって結成された市民劇団。新型コロナウイルスにより3年ぶりとなった公演を取材した。
初の主役に意気込み「練習も仕事も頑張る」
5月、新潟市東区にあるホールで演劇のリハーサルが行われていた。発達障害がある人と家族などで2013年から活動する「劇団わくわく」だ。

劇団わくわく 後藤行子 代表:
見る人も役者も楽しい、ワクワクするような劇団

毎年公演を続けてきた劇団は新型コロナウイルスにより、2020年と2021年の公演が中止になった。
劇団員:
この日を迎えられるのがうれしい

3年ぶりとなる舞台は、江戸時代の大泥棒・ねずみ小僧による人情噺。主役を務めるのは内藤陽紀さん(22)だ。
内藤陽紀さん:
初めての主役なので頑張ります

内藤さんは就労に向け、新潟市東区の福祉施設で施設が請け負う清掃業務を行っている。
内藤陽紀さん:
立派に働けるようになろうと思う

知的障害がある内藤さんは、仕事と劇団の両立を大切に考えている。
内藤陽紀さん:
劇の練習もやっているから仕事も頑張ろうと思う

福祉施設の施設長も内藤さんを応援している。
メイプルかめだ 田中亨 施設長:
生活を充実させるには、働くだけでなく趣味が重要

セリフが苦手でも演出でカバー 保護者の明るいサポートも
舞台の監督を務めるのは、劇団員で障害がある息子を育てる坂詰慎次郎さん。
舞台監督 坂詰慎次郎さん:
最初は、この子たちにできるのかなと思っていたけど、やらせてみると本当に表情豊かで。ステージに上がると、全然はりきり具合が違う

知的障害がある子どもと親が中心の劇団には、公演での工夫がある。
ミュージカルのようなダンスが組み込まれているのは、セリフが得意でなくても役者ができるようにする演出だ。

そして、舞台の袖ではスタッフが出番のタイミングをサポートする。
舞台監督 坂詰慎次郎さん:
どの場面で出たらいいかというのを幕の裏で指示する

お母さんたちはセリフの練習に余念がない。
劇に出演する保護者:
大丈夫。本番に強いので
劇に出演する保護者:
伊達に年取ってないからね

明るく前向きな団員の力が、劇団わくわくの魅力だ。
「障害あり・なしは関係ない」助け合って舞台をつくる
そして5月14日、公演当日。主役のねずみ小僧を演じる内藤さんは…。
内藤陽紀さん:
久しぶりの公演なので、少し緊張している

劇中で住民を苦しめる悪者を演じるのは、滝沢慎平さんと井出健太さん。3年ぶりの舞台に気合いが入る。

劇団わくわく 後藤行子 代表:
新型コロナで2年間公演できなかった思いをぶつけて、精一杯みんなで楽しくやりたい
舞台は役者がお客さんの反応を肌で感じられるのも魅力だ。お客さんの拍手や笑いが会場を包むと、舞台の袖で見守る役者仲間も笑顔に。

舞台には悪者役の滝沢さんと井出さんが登場。途中、セリフが止まってしまったが、そんなときは舞台袖から監督が助け舟を出す。

ピンチを切り抜けた2人は次の出番に向けて自主練習。どんな時も助け合うことで前に進み続けるのが、劇団わくわく流だ。
滝沢慎平さん:
障害あり・なし関係なく、盛り上げるのが劇団わくわく

そして、ねずみ小僧の活躍で見事、悪者は御用に。

舞台の感想はお客さんの顔が物語っていた。
お客さん:
すごくよかった。ファンになっちゃった

内藤陽紀さん:
劇団を続けて、仕事も就職に向けて頑張ろうと思う。両方とも大切にしている。

中止から3年ぶりの公演。団員に新しい幕が開けた。
(NST新潟総合テレビ)