「ドローン」と聞けば、ほとんどの人は何個もプロペラが付いた空を飛ぶ機械を思い浮かべるだろう。ところがヤマトホールディングスが研究している“貨物ドローン”はプロペラも羽もない

こんな奇抜な機械が空を飛んで荷物を運ぶ時代がやってくるかもしれないのだ。

(出典:ヤマトホールディングス)
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ヤマトHDは2021年3月から、オーストリアのサイクロテック社と共同で、強風でも狭い場所へ正確に着陸できる中型の電動垂直離着陸航空機を研究している。そして、この実用性などを理論上証明したとして理論研究の成果を4月12日に発表した。

時速120kmで40kmの距離を移動

CCY-01と名付けられた研究中のドローンは電気で動き、長さ2.7m、幅2.5m、高さ2.4mで、45Kgの荷物も含めた総重量は重さ280kg。

巡航速度は時速120kmで40kmの距離を飛び回り、25ノットの横風があっても3.5m四方の場所に着陸できるという。

(出典:ヤマトホールディングス)
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通常のプロペラや羽なしで空をとぶ秘密は、サイクロテックが開発した「サイクロローター」にある。これは複数のブレードがついたローターを縦に回転させて推力を生み出す仕組みで、瞬時に推力の強さと方向を変えられるので、スムーズに垂直離陸から水平飛行へ移れるそうだ。

実は、サイクロテックではすでに技術検証用の機体を製造し、屋内飛行試験を成功させている。

肝心の荷物については、ヤマトHDが開発している貨物ユニットの「PUPA」シリーズが使われる。

CCY-01にも搭載する「PUPA 701」タイプは、そのまま配送できる手押し車に変形したり、機体に取り付けるためのレールを登る機能がついているそうだ。

(出典:ヤマトホールディングス)
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リリースによると、高層ビルのヘリポートはもちろん、屋上や駐車場などに着陸可能で、都市のオフィスや工場・倉庫・鉄道ターミナル・ホテルなどを結び、革新的なサービスの可能性を広げることができるとしている。

航空機としての効率と人間の作業性を両立

画期的なフォルムが目を引くが、これはあくまで研究段階。なぜ今の段階で公表したのだろうか? また、空の輸送は一体いつ本格的に始まるのか? 担当者に聞いてみた。


――なぜ実物ではなく「研究成果」を公開したの?

今回の研究内容を実装するためには、サイクロテック社だけではなく自律制御や量産設計などの領域を担っていただけるパートナーの存在が不可欠です。こうしたパートナーとの連携を今後はかるために広く公開しました。


――このドローンは、どうしてこんな形になった?

PUPAを用いた安全で効率的な荷役やメンテナンスと、風に耐えて狭い土地に着陸しながら省エネで高速飛行も行うという要求を満たす設計を追求した結果、このような形状になりました。航空機としての効率と人間の作業性を両立させる形です。

(出典:ヤマトホールディングス)
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――では、ヤマトグループはなぜ「空の輸送」を目指している?

近年の技術革新によって空の領域での新しい輸送手段が出現し、これらを活用することによって、新しい価値を提供できる可能性が拡がっています。この可能性を活かし、今後益々多様化するお客様のニーズに応えるという使命の追求のため、研究開発を進めています。


――プロペラがあるドローンは実用化が難しいの?

今回の発表は、この機体を実際に導入するということでもなければ、サイクロローターの技術のみを使うということでもありません。他の方式にもメリット・デメリットがあり、サービス提供にあたっては、提供価値を最大化する機体を総合的に評価して採用したいと考えています。

(出典:ヤマトホールディングス)
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実用化は?「2020年代前半には最初のビジネス導入」

――このようなドローンが実用化すると宅配はどう変わる?

これまでの技術では実現し得なかったオンデマンドな超高速輸送サービスを提供できると考えています。


――「空の輸送」はいつ実用化される予定?

2020年代前半には最初のビジネス導入をして、段階的に本格的なサービスを提供していきたいと考えています。

(出典:ヤマトホールディングス)
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実はヤマトホールディングスでは、今回発表した以外にも様々な形のドローンを研究している。

その中には、もちろん普通のプロペラをもつ機体もあるが、実際にどれが空をとぶのかはまだ分からない。どんなドローンが空をとぶのか、生活がどれだけ便利になるのか、空の運輸が実現する日を楽しみに待ちたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。