2022年3月、宮崎県では日向灘をめぐり、マグニチュード8クラスの巨大地震が起こる可能性があるという調査結果が公表された。

この発表に至った根拠の一つに、江戸時代に日向灘で起こった地震の研究がある。過去を知り、将来起こりうる巨大地震に備えてもらおうと、研究者は日向灘地震の実態解明を目指している。

最大でM7.6の想定を見直し

遠くない将来に大きな地震が起こると指摘されている日向灘。政府の地震調査委員会は3月、この日向灘でマグニチュード8クラスの巨大地震が起こる可能性があると発表した。

発生確率については「不明」としながらも、これまで最大でマグニチュード7.6と想定していた地震の規模を18年ぶりに見直した形になる。

18年ぶりに見直された地震規模
18年ぶりに見直された地震規模
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今回の見直しの理由の一つに、日向灘で1662年に発生した外所(とんところ)地震に関する研究の進展がある。

京都大学 防災研究所 宮崎観測所 山下裕亮助教:
(外所地震は)マグニチュード7.6と推定されているんですが、本当にそうなのかと昔から疑問に思っていました

こう話すのは、京都大学防災研究所宮崎観測所の山下裕亮助教。外所地震に関する記録や津波堆積物の研究と、海底で起こっているスロー地震の調査などから、日向灘地震のメカニズムを明らかにしようとしている。

外所地震の津波堆積物を発見か

3年前、山下助教などの研究グループが日南市小目井で行った調査で見つかったのが…。

京都大学 防災研究所 宮崎観測所 山下裕亮助教:
色が違う土があります。これが海から来たと考えられそうな層です

海岸から約500メートル、標高約7メートルの場所で、外所地震によって海から運ばれてきた津波堆積物とみられるものが見つかった。

京都大学 防災研究所 宮崎観測所 山下裕亮助教:
高潮ではなかなか説明できないような高さですし、地質学的に詳しく見た感じだと、流されてきて堆積したような痕跡が層の中から見つかってきているので、これが今回のマグニチュード8という新たな想定の一つの大きな根拠として扱われています

しかし、この研究はあくまで途中の段階。それにもかかわらず、最新の評価に反映された理由について、山下助教は東日本大震災の教訓があったと指摘する。

京都大学 防災研究所 宮崎観測所 山下裕亮助教:
東北で今まで知られていなかったような大きい地震が起きていたということが、東日本大震災の数カ月前に公になって、国の長期評価にも生かされる予定だった。それが、残念ながら地震の方が早く起こってしまった。間に合わなかったということがあって、国としても、ある程度可能性があるものは積極的に取り込んでいこうという方向にシフトしたのだと思います

津波の高さや浸水面積 被害想定は

宮崎県は2021年、日向灘を震源とするマグニチュード7.6の地震が起きた場合、最大震度6強の揺れ、沿岸には最大6メートルの津波が襲うという調査結果を公表した。

しかし今回、マグニチュード8クラスの地震が起きると新たに示されたことで、津波の高さや浸水面積はこの想定より大きくなる見通し。4月12日に行われた定例記者会見で、河野知事は次のように述べた。

河野俊嗣知事:
(日向灘地震の被害想定について)見直す必要があるのではないかと考えている。どういうスケジュールでどのような作業を行うのかというところを今、(国や専門家に)相談をしています。日向灘地震にはリスクがあるということを地域の皆さまに実感していただくことが、国が情報提供をした大きな意味合いであると考えています

過去の地震の痕跡から少しずつわかってきた日向灘地震。山下助教は今後起こりうる巨大地震を前に、その実態解明を急いでいる。

京都大学 防災研究所 宮崎観測所 山下裕亮助教:
外所地震の実態像を明らかにして、将来起こりうる地震がどういうものなのか、どういう危険性があるのかということを、将来の世代の人たちのためにも残したいと思っています

山下助教は、マグニチュード8クラスであっても私たちができる対策は変わらないと話す。そして、揺れが強い、もしくは揺れが長い場合は津波の可能性があるため、速やかに避難行動をとることが大切だと呼びかけている。

(テレビ宮崎)

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