秋篠宮ご夫妻は、4月26日、東京・八王子市にある武蔵陵墓地を訪れ、昭和天皇が眠る武蔵野陵と昭和天皇の后、香淳皇后が葬られた武蔵野東陵に参拝して、立皇嗣の礼が終わったことを報告されました。

昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)
昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)
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これで2020年11月に行われた立皇嗣の礼に関連する行事が全て終わりました。

東京から伊勢神宮まで車でご移動

これに先立ち、秋篠宮ご夫妻は、4月21日、三重県にある伊勢神宮を訪れ、慣例通り、外宮、内宮の順番で参拝されました。

伊勢神宮は、関係者やよく知る人からは「神宮」と呼ばれています。「神宮」と言われれば、それは伊勢神宮のことを示しています。神宮は、皇室とは縁が深く、皇室の皆さまは節目のごとに参拝されています。

今回の秋篠宮ご夫妻のご参拝を通し、どのような縁があるのか記したいと思います。

神宮は、天照大神を奉る皇大神宮(内宮)と豊受大神を奉る豊受大神宮(外宮)を中心に本宮とは別に作られた別宮や本宮が奉る神様と縁が深い神様を奉る摂社など125の神社から成り立っていて、これら全てを含め神宮と称されています。神宮の近くには、神話に詳しい方にはなじみが深い、月読宮も別宮として列せられています。

厳かな雰囲気の中、秋篠宮ご夫妻は伊勢神宮を参拝された。
厳かな雰囲気の中、秋篠宮ご夫妻は伊勢神宮を参拝された。

天照大神は皇室の祖先とされる神様で、豊受大神は天照大神の食事を司る神様です。内宮のご神体は、三種の神器の一つ、八咫鏡といわれ、外宮のご神体も鏡だと言われています。

皇室では、天照大神を敬い、1月1日に行われる宮中祭祀の四方拝では、神宮に向かい拝礼するほか、大嘗祭では神座を神宮方向に向け据えるなど、大切にしてこられました。

秋篠宮ご夫妻は、20日午前8時半に、東京・赤坂の秋篠宮邸をワゴン型の車でご出発。名古屋でセダン型の車に乗り換え、宿泊のため内宮へと向かわれました。車を代えたのは、名古屋までは私的な移動で、名古屋からは皇室行事という公的なご移動のためだということです。

秋篠宮邸をワゴン型の車で出発される秋篠宮ご夫妻(20日)
秋篠宮邸をワゴン型の車で出発される秋篠宮ご夫妻(20日)

皇嗣となられると宿泊場所も参拝場所も変わる

午後5時頃、内宮に到着し、行在所(あんざいしょ)と呼ばれる建物に入り、そこに泊まられました。この行在所は、天皇皇后両陛下や皇太子ご夫妻が泊まられる場所で、秋篠宮さまが皇嗣となられたことで、ご夫妻は初めて泊まられました。

行在所を出られる秋篠宮ご夫妻(21日)
行在所を出られる秋篠宮ご夫妻(21日)

このように、秋篠宮さまが皇嗣となられたことで、神宮参拝で、初めてとなったことがもう一つあります。

秋篠宮ご夫妻は、21日午前8時半過ぎ、内宮の行在所を出発し外宮へと向かわれました。外宮の行在所に一旦入った秋篠宮ご夫妻は、ここから徒歩で第二鳥居、神楽殿前を通り、外宮の正宮(しょうぐう)へと進まれました。

神楽殿前を歩かれる秋篠宮ご夫妻(21日)
神楽殿前を歩かれる秋篠宮ご夫妻(21日)

石井皇嗣職宮務官長が先導し、秋篠宮さまはモーニング姿に手にはシルクハット、その後ろの紀子さまは参拝服と呼ばれる裾長のドレスに扇を手に持たれ、竹歳御用掛が後へと続きました。

ちなみに、女性皇族がお召しになった参拝服は、神宮参拝専用のもので、他の拝礼に使ってしまうと使えなくなるため新調しなければなりません。聖と俗、次清(つぎきよ)(※次は穢れ、清は清浄を表す)の精神が強く感じられる神聖な場所で、いかに神宮が皇室に大切にされているかわかります。

正宮は、神様が奉られている正殿(しょうでん)がある場所で、正殿は4重の塀で囲まれています。一番外側は板垣で、一般の方も板垣南門を通り内側へと入ることができます。

内宮の外玉垣南門を通り、中重鳥居へと向かわれた(21日)
内宮の外玉垣南門を通り、中重鳥居へと向かわれた(21日)

板垣の内側には外玉垣と呼ばれる囲いがあり、一般の方は外玉垣の南御門も前で拝礼することになります。ある程度の金額を奉納した特別参拝の方は、外玉垣の中に入り、中重(なかのえ)という場所で参拝することが出来ます。

秋篠宮ご夫妻は、板垣南御門を通ると、お祓いを受けて外玉垣南御門から中重へと入り、中重鳥居(なかのえのとりい)を通り、手を清められた後、内玉垣南御門へと向かわれます。そして、門から参入されました。

実は、秋篠宮ご夫妻が、内玉垣の内側に入られるのは初めてのことです。

神宮では、お立場によりご参拝の場所が変わります。

天皇皇后両陛下の場合には、内玉垣の内側にある瑞垣を越え、正殿前まで進み、内院と呼ばれる場所から拝礼し玉串を捧げられます。

参拝を終え正宮前石段を降りられる秋篠宮ご夫妻(21日)
参拝を終え正宮前石段を降りられる秋篠宮ご夫妻(21日)

皇太子ご夫妻の場合には、瑞垣の手前、内玉垣を超えた場所から拝礼をされます。秋篠宮さまが皇嗣となったことで、ご夫妻は瑞垣の手前で拝礼されたのです。

参拝の際捧げられた玉串は、神宮の大宮司を通じて正殿の階下にいた黒田清子さんに渡され、黒田さんが正殿の中で神様に捧げられたということです。黒田清子さんは、神宮の祭主を務めていて、神宮での祭祀や皇族の参拝などの際、お務めをされているのです。

こうして外宮でのご参拝は終わり、秋篠宮ご夫妻は内宮へと向かわれました。内宮でも、同じように瑞垣の前から拝礼をされたといいます。

22日午前には、ご夫妻は奈良県橿原市にある神武天皇陵を参拝し、皇嗣となったことを報告されています。さらにこの日、京都市にある孝明天皇山陵とその后、英照皇太后の山陵を参拝し、続いて明治天皇陵、昭憲皇太后の陵を参拝されています。

神武天皇陵を参拝される秋篠宮ご夫妻(22日)
神武天皇陵を参拝される秋篠宮ご夫妻(22日)

神武天皇陵へのご参拝は、立皇嗣の礼の関連行事ですが、そのほかの陵へのご参拝は、秋篠宮ご夫妻のお気持ちからのご参拝だということです。

そして26日、東京・八王子市にある武蔵陵墓地を訪問し、昭和天皇陵とその后、香淳皇后の陵を参拝し、皇嗣となったことを報告されました。

昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)
昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)

こちらの陵への参拝は、やはり立皇嗣の礼に関連した行事となっています。これで、立皇嗣の礼関連の行事は全て終了しました。

昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)
昭和天皇陵に参拝される秋篠宮ご夫妻(26日)

神宮参拝から昭和天皇陵参拝までの行事が終わったことはどんな意味があるのでしょうか。

秋篠宮ご夫妻が、地方での行事に臨まれるのは、2020年1月の阪神淡路大震災の追悼式以来、2年3カ月ぶりです。実はこの追悼式は、立皇嗣の礼以前に出席されたものです。

2020年11月の立皇嗣の礼以降、秋篠宮ご夫妻は地方に足を運び行事に出席することはなく、オンラインを使ってのご訪問しかなかったのです。

神宮などのご参拝の前に、地方を実際に訪問されることを避けられたのです。つまり、今後は新型コロナウイルスの感染拡大には注意をしながらも、実際に地方に足を運ばれることになると思われます。

神宮や神武天皇陵へのご参拝は、約800キロを車で移動された秋篠宮ご夫妻。新型コロナウイルスの感染拡大を心配し、人が集まらないようにと車を使い、同行する職員も直前にPCR検査をしたと言います。

秋篠宮ご夫妻のお姿をゆっくり拝見できる日が早く来てほしいと願うばかりです。

【フジテレビ皇室取材班 橋本寿史解説委員】

橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。