10兆円規模のお総菜市場に革命が起きるのか。お総菜の盛り付け作業をこなすロボットが誕生した。

自動化で人手不足対策

大手スーパーのマックスバリュ東海が29日にお披露目したのは、3月から業界で初めて導入した総菜もりつけロボットだ。

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この総菜ロボットは、ある理由から実現は困難と言われていた。

ロボット開発者「コネクテッドロボティクス」塚本光一さん:
このように『不定形の食材』と呼びますが、形のはっきりしないもの、どろどろしていたり粘性の高いもの。見てもらうとわかるが、結構こびりついたりします。

自動化を妨げていた総菜のべたつき。このロボットはポテトサラダなど粘り気のある総菜を振り落とすため、アームを細かく振動させる機能を付けたほか、先端にはビニールを装着する。

べたつきを防ぐとともに簡単に取り換え可能で、すぐに別の総菜を盛り付けることができる。

「コネクテッドロボティクス」塚本光一さん:
1時間にだいたい250パックの盛り付けと考えています。1台で熟練の人までとはいかないが、大体人1人分くらいの能力・作業量を実現しています。

経済産業省によるロボット導入推進事業で日本の技術が結集し、わずか6カ月で開発された。

導入により盛り付け作業は以前の半分ほどの人数で可能となり、人手不足解消や人材活用の促進が期待されている。

マックスバリュ東海・遠藤真由美執行役員:
こういう単純作業はロボットに任せて、(従業員は)商品開発したり原料調達したり、オペレーションを考えてみたり、判断が伴うあるいは想像力が必要な仕事にシフトしていくと、さらに仕事にやりがいを持って進めてもらえる。

今後の課題は導入コストだが、ロボットメーカー側は製造数を増やすことで従業員1人の2年から3年分の人件費程度の価格を目指すとしている。

人とロボット「真の協働」

小澤 陽子キャスター
早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。お総菜の盛り付けロボットですが、モノづくりに詳しい長内さんの目にはどのように映りましたか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ハリウッド映画では強いロボットが鋼鉄も曲げるといった世界観がありますが、日本はドラえもんのようにのんびり、柔らかいロボット。これはフィクションの世界ではなく、現実の社会でも日本が世界に誇れる強みなんです。

この柔らかさ、しなやかさというソフトなロボット技術がこれから高齢者の介護だとか、トマトを収穫する農業など人手不足に悩む分野での活用が期待されています。

小澤キャスター:
人とロボットが一緒に働く光景はまだ見慣れてはいませんが、今後はこうしたシーンを見ることが増えそうですね。

長内厚さん:
人とロボットが一緒に働くことは簡単のようで難しい話ですが、ソフトなロボットが普及するとこれも可能になります。

今までのロボットは、力強い、早い、重い物も持てる一方で、人が近くに居ると危険です。しかし、ソフトでゆっくりしたロボットは人が近付いても危険ではない。このような新しいロボットは日本の技術がリードしていける可能性がありそうです。

小澤キャスター:
ソフトロボットの開発や実用化で日本が持っている強みはどの辺りですか?

長内厚さん:
全く新しい物を作るというよりも、今あるロボットの技術をうまく組み合わせ、調整し、すりあわせていくことでソフトでしなやかなロボットを作っていく。こうしたすりあわせの技術が日本の強みなので、それを活かすことでソフトロボットで世界をリードしていく、そして人手不足の中、人とロボットが共存していくという社会が訪れると考えられます。

小澤キャスター:
日本らしいきめ細かい視点や心遣いが高度な技術を生み出すのにポジティブに作用しているのかもしれません。 これからも世界をリードしていく技術に期待したいです。

(「Live News α」3月29日放送分)