プロはどのように課題を発見して解決しているのか。教室を離れた学びに迫った。

プロとの仕事で得る新たな学び

緊張感あふれるドラマの撮影現場。指揮を執るのは「HERO」、「監察医 朝顔」などで知られる平野眞監督で、スタッフは大学生だ。

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撮影しているのは、現在YouTubeで公開されているドラマ「僕は君にガーベラを贈る」。

10年ぶりに再会したかつての仲間たちが、在学中に残したある落書きのことを思い出すというストーリーだ。

東京都内にある大正大学とドラマのプロが組み、学生たちに学びの場を提供するプロジェクトで作られた。

大正大学はこれまでも、地元の商店街とともにアンテナショップの運営を行ったり、ウェブマーケティング企業などとともにARの謎解きイベントを開催するなど、"実践的な学び"を行ってきた。

大正大学 魅力化推進部・高橋慈海さん:
大学の中は、結構用意されたものの中である程度レールに乗って動けるところがあるが、社会に出たらそういうわけにはいかないので、そういうときに何をしたらいいか身につけさせたい。

今回のドラマ撮影でも、例えば揺れるカーテンが印象的なカットは、物語のヤマ場となる重要なシーンだが、この画を撮るために教室にカーテンをセットし、監督自ら扇風機をあてる一幕も。

さらに、平野監督の「カーテンさ、ごめんもうちょっと上げない?」という鶴の一声で、カーテンをもう一度セットし直し。

平野眞監督:
この画の中に、この裾を入れたかったんです。だから、これを固定してしまうとカメラが移動しなきゃならなくなるのね。それはよくない。カメラが決まったらそれに合わせて僕らは画を作っていくというのがドラマの世界です。

現場の学生たちはみんな真剣。俳優さんのケアをしたり、こまめに台本にメモを取ったり。
実は、学生のそれぞれの役割は特に決まっておらず、自分たちで周りを見て動くようになったのだという。

岡村有理さん(4年):
記録さんがいないので、できるだけ取ろうと思っています。最初は誰と一緒にいて、どこについていれば成長できるんだろうと考えていたけど、だんだん吸収するにつれて、どこで自分が役に立てるんだろうという考えに変わって。

平野眞監督:
どんな場面でも楽しさを見つけてくれるような人になってくれると、来たかいがあったなという気がします。

12月、大学で開かれた完成披露試写会では、上映中、目を潤ませる学生も。

岡村有理さん(4年):
大学生のうちにたくさん失敗できたことがうれしくて、社会人になる前に『ここはこう直していけばいいんだ』って相手のことをちゃんと考えられる事前準備ができました。

プロとの仕事で得る新たな学び。たくさんの経験とたくさんの気づきを胸に学生たちは社会へと巣立つ。

学習は「教室」から「地域」へ

三田友梨佳キャスター:
コミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さんに聞きます。
教室を離れてドラマの撮影に参加する学生たちにとって貴重な経験になりそうですね。

studio-L代表・山崎亮さん:
教室で行われる受け身の学習だけではなくて自分が能動的に動かないといけない 「仕事の現場」を経験することは大切です。
いま教育の現場では、自らが主体的に動き、対話を通して深い学びを得る学習への転換が図られています。

三田キャスター:
これまでは科目別に先生が講義をして試験で学びの定着を試す教育がメインでしたよね。

山崎亮さん:
そうした教室での授業は学びが身につく定着率が低いことが米国の国立訓練研究所の研究で明らかになっています。

学習方法と学びの定着率を示すラーニングピラミッドと呼ばれるものがあります。
受け身の講義だけでは学びの定着率は極めて低く、これが討論を取り入れると半分程に上がり、さらに自ら体験したりそれを誰かに伝えるプレゼンなど主体的な学びを取り入れると、学びの定着率は9割へと近づくとされています。

そこで、具体的なプロジェクトをベースに自分で調べ、仲間との議論やプレゼンを通して社会で求められる課題解決の経験をつませるプロジェクトベースドラーニングが注目されています。

三田キャスター:
課題解決の経験を積む学習はどのように行われるのでしょうか?

山崎亮さん:
学ぶ環境が教室、学校、さらに地域へと広がっていくにつれて多くを学ぶことが出来ます。
例えば、地域が抱える課題の解決方法を探すというミッションを与えられた場合、多様な主体との調整や準備が必要となり学ぶ者はどんどん本気にならざるを得ない。

ただし、地域は「学ぶ」ということが前提で日常が営まれているわけではないので、学びの実践を展開させてもらう場合は、学校と地域との普段からの関係づくりが大切になります。
なにより学生は後に後輩たちが地域で学ぶ機会を無くしてしまわないように責任ある行動が求められるようになると思います。

三田キャスター:
もちろん机での学び、知識は大切ですが、現場での経験はそれを上回る価値があるのかもしれません。
学びは学校の中だけで完結するのではなく、実践的な学びの重要性が増しているようです。

(「Live News α」3月21日放送分)