ロシアが中国に軍事・経済両面での支援を要請
ここ数日、ウクライナの戦況は、ウクライナ軍の当初からの抵抗が変わらず功を奏していて、ロシアの進軍を何とか食い止めている。携行型のミサイルの供与など西側の軍事的支援の効果も大きく、ロシア側の被害は彼らの想定を遥かに超えているようだ。

これに業を煮やしたロシア側は遠方からのミサイル攻撃を増やすなどして攻撃対象を拡げ、ウクライナの一般市民や市街地の被害は拡大している。南部の都市・マリウポリなどの包囲戦はウクライナ側にとって極めて厳しい状況にある。

一方、西側の金融・経済制裁はロシアをじわじわと追い詰めつつある。
こうした状況に、ロシアのプーチン大統領は中国に軍事と経済の両面で支援を要請したと報じられている。

これを受け、アメリカ・バイデン政権の国家安全保障問題担当のサリバン補佐官は現地時間の14日、ローマで、中国の外交トップの楊潔篪共産党政治局委員と7時間にも亘って会談し、アメリカ側のバック・グラウンド・ブリーフィングによれば、サリバン氏は中国の対露協調姿勢への重大な懸念をストレートに伝え、中国の今後の行動次第では、相応の結果を招くだろうと警告したという。

ただ、そのアメリカ側の“懸念”や“相応の結果”の具体的な中身について「中国には直接伝えた。報道を通じて伝えるつもりはない」としてブリーフィング担当者は明らかにしなかった。中国が超えてはならぬ一線=レッド・ラインはあるのかという記者の問いにも応えなかった。
中国はロシアの支援要請に応じるのか?
そこで、バイデン政権の東アジア政策に詳しい、アメリカの元香港総領事、カート・トン氏に訊いてみた。
筆者:
武器や弾薬の供与はレッド・ラインを超えると考えられるが、もしも、中国がそうした対露支援に踏み切れば、グローバルな新冷戦が始まることになるのか?
カート・トン氏:
そのような支援は間違いなく、アメリカによる厳しい対中制裁に繋がるだろう。EU・欧州連合もきっとアメリカに同調するだろう。しかし、それがグローバルな新冷戦に繋がるか否かは、その後の動き次第になると思う
筆者:
習近平政権は、ロシアが望んだと伝えられる、そのような支援に出る可能性はあると考えるか?
カート・トン氏:
答えはノーだ。武器の供与は明らかな失策になる。中国がそこまでするとは思っていない。ただ、あからさまではない形で、間接的な経済支援は可能と判断するかもしれない。しかし、その場合でも、中国はアメリカの金融・ハイテク制裁を避けようとするだろう
驚くには当たらないが、中国の対露支援は、プーチン大統領の希望を叶えることはなく、これまでと同じように、曖昧なものに留まるのではないかという見立てであった。

とすると、ウクライナにおける戦況はどうあれ、ロシアとプーチン大統領の孤立は日々ますます深まることになる。
プーチン大統領も、もはや、否が応でも、この孤立を感じているはずである。こうした状況が、戦闘の停止と本格的な話し合いによる解決に繋がることを願うばかりである。
北朝鮮がICBMの本格実験に踏み切る可能性高い
話は変わるが、サリバン氏は楊政治局委員と北朝鮮問題についても話し合った。
本日16日朝、北朝鮮がミサイル実験を強行し、失敗したのではないかという韓国軍発表の少し前に尋ねた話であることを予めお断りするが、これに関連して、トン氏は「北朝鮮は近い将来ICBMの本格実験に踏み切る可能性が高い。そうなれば、アメリカ政府は、日米韓三か国の連携を更に強化することになる。米韓の合同軍事演習もやることになるかもしれない」という。

春の大規模合同軍事演習を実施すれば、これに対抗する警戒措置を取らざるを得なくなる北朝鮮軍を財政的に搾り上げる効果がある。これも狙いになるらしい。
当然、日本政府と韓国新政権は関係改善をより強く求められることになる。
今回のロシアのウクライナ侵攻で結束を強めた西側各国の協調行動は、ロシアの締め付けに大きな効果を発揮している。北朝鮮への対応でも、日米韓のより強固な連携は必要なのである。
【執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎】