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一見、ごく普通のフルート。ではなく、上にシェードがついている。

渋谷教育学園 幕張中学校・高等学校 吹奏楽部部長:今までは廃棄されるだけだったので、少し寂しい思いはしていたんですけど、今回こうして再生(再利用)して頂けるということで、すごくうれしいですし、完成が楽しみです。

役目を終えて捨てられてしまうはずだった楽器は、本来の形を残しながら生まれ変わっていた。

東京・江東区にある「島村楽器 有明ガーデン店」。

ピアノやギター、管楽器などが並ぶ中、ランプシェードが付いたフルートやポケットトランペットから生まれ変わった照明が、インテリアとしてショーケースに展示されている。

実は、これらは廃棄されるはずだった楽器や、対応年数を過ぎた部品などから作られている。廃棄する楽器にもう一度命を吹き込み、活躍の機会を与えたいという思いのもと、家具やインテリアのアップサイクル商品の自主制作などを手掛ける会社と提携し、2021年12月、プロジェクトをスタート。

島村楽器が運営する音楽教室や、プロジェクトの趣旨に賛同してくれた学校などから、使わなくなった楽器を回収。

それを提携する会社に提供し、楽器の形をそのまま残したインテリアに。それだけではない。

島村楽器 広報担当・宇佐美綾乃さん:当プロジェクトで得られた収益により、楽器を寄贈することで、子どもたちの音楽を始めるきっかけが生まれることを弊社としても望んでおります。

完成したインテリアは、島村楽器の一部店舗とオンラインストアで販売。プロジェクトで得た収益は、楽器演奏の機会を得にくい子どもたちへの寄付金や楽器購入資金に充てられる。

島村楽器 広報担当・宇佐美綾乃さん:現在制作しているインテリア楽器はトランペット、フルート、クラリネット、サックスなどの管楽器をベースにしたものだけですが、ギターやピアノなども製品化できればと考えております。

島村楽器 広報担当・宇佐美綾乃さん:楽器が、これまで楽器として生きてきた歴史を感じつつ、インテリアとして生まれ変わったこれらの楽器によって、ぜひ皆さんの日々の生活を彩っていただけたらと思います。

廃棄する楽器の再利用だけではなく、子どもたちが楽器に触れるきっかけにもつながるこの取り組み。今後は製品のラインアップを増やし、活動の幅を広げていきたいとしている。

内田嶺衣奈キャスター:ここではデロイト トーマツ グループの松江英夫さんに、お話をうかがいます。今回の取り組み、どうご覧になりましたか。

デロイト トーマツ グループCS松江英夫氏:素晴らしいと思いますね。私は、アップサイクルを、ライフサイクルにつなげる、こうした視点を持つことが大事だと思うんですね。今回の楽器は、演奏をするという元々の価値に加えて、アップサイクルによって、インテリアに変えることで、見た目の美しさを鑑賞するという新しい価値が生まれた、ここが大きいと思うんです。それによって楽器の寿命も延びますし、物としてのライフサイクルが広がる、ここに大きな意味があると思うんです。それによって、携わる人の裾野も広がっていくことも期待できるんじゃないかなと思います。

内田嶺衣奈キャスター:演奏をしない人でも、楽器を身近に感じることができるようになりますよね。

デロイト トーマツ グループCS松江英夫氏:そうなんですね。それに加えて、今回の特徴は、アップサイクルで得た収益の一部を、若い人が楽器を使うことに還元する、ここにあると思うんですが、これによって楽器を使う世代の裾野が広がっていって、人のライフサイクルそのものが広がっていく、こんな展開にも期待できると思うんです。

デロイト トーマツ グループCS松江英夫氏:実は、楽器は国内市場700億円規模と言われているんですが、2014年から減少傾向にあって、これからこういった事業を伸ばしていくには、使う人の人生の中で、楽器に触れあう場面をいかに増やすか、演奏するとか、鑑賞するのも含めて、人のライフサイクルの中で、楽器の存在感をいかに高めていけるか、この辺が、ますます重要になってくると思うんですね。

内田嶺衣奈キャスター:楽器に限らず、役目を終えたものに、新たに命を与えていく、アップサイクルという仕組みが、さらに広まっていくといいですよね。

デロイト トーマツ グループCS松江英夫氏:本当にそう思いますね。それが広まるためには、使う人の人生のストーリーといかに重ね合わせるか、この辺の演出というのが非常に大事になってくると思うんですね。今回の楽器に限らず、家具やアクセサリー、着物など、比較的、高価で長持ちするようなものというのは、使う側にとって思い入れがありますから、そこにストーリーが生まれてくるんですね。それがアップサイクルによって、物が元々持っている機能と、使う人の人生のストーリー、これが重なり合って、奏で合うことによって、物そのものが生涯に渡って、価値を高めていく、こんな取り組みが増えていくことを期待したいなと思います。

内田嶺衣奈キャスター:音や楽器との触れあいは、心を豊かにしてくれます。アップサイクルによって、今度は暮らしを豊かにしてくれるのかもしれません。

(「Live News α」3月11日放送分)