「戦争はダメ」ロシアの生放送で女性が命がけの抗議

ロシア国内に向け生放送中のテレビ番組で、まさに体を張って反戦を訴えた女性スタッフがいた。国営テレビのキャスターがロシアへの経済制裁を伝えていると、突然、女性が乱入して紙を掲げて「戦争はダメ」と叫び、大声を上げた。

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紙には「戦争を止めてください。プロパガンダを信じないでください」などと書かれている。その後、女性は拘束されたという。

女性は、事前に撮影したとみられる動画で、声をあげた理由をこう話していた。

抗議をしたテレビ職員:
私の父はウクライナ人です。母はロシア人です。もちろん夫婦であって敵になってはいません。残念ながら、最近何年か、私はロシア「第1チャンネル」に勤めていました。主に何をしていたかというとプロパガンダをしていました。ロシア人が騙されていると知っていたのに、黙っていることが恥ずかしい

女性はそれぞれの国旗の色をしたネックレスを身につけ、自身が加担してきたプロパガンダへの反省を口にした。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア国内での勇気ある抗議にロシア語で感謝を伝えた。プロパガンダで国内世論の抑え込みを図るロシア。しかし拘束を恐れずに声をあげる人々は増えつつある。

報道番組で「戦争」という単語を使うと15年の実刑

加藤綾子キャスター:
もう耐えられないという心からの声だと思います。危険を顧みずこういった声を上げることは本当に勇気のいることだと思いますけれども、今、彼女がどういう状況なのか、その無事を祈るばかりです。こういった国内の声が、戦争を止める大きな力につながってほしいなと思う一方で、ただ一人一人の訴えっていうのは、本当に命がけなんだなと思うと、複雑な思いになってしまいますね

パトリック・ハーラン氏:
そうですね。先日成立された新法によって、報道番組で「戦争」という単語を使っただけで、15年もの実刑が伴う、本当に重犯罪になり得るということになってますが、今、彼女は弁護士も会えない状態で逮捕されているという報道もあります。彼女だけじゃなくてデモ隊で逮捕されている若者も多く、そうなんですけど、真実を持って勇気を出して行動に出ているという方は少なくないんです。ただ残念なことにロシア人が全員そういうことではないんですね

パトリック・ハーラン氏:
戦争前の調査になりますが、50%くらいのロシア人は、政府の国営放送つまりプロパガンダはそのまま信じ込んでいるらしいですね。しかも最近の情報統制が、さらに強化され、SNSをブロックされ、真実を知りうる状態ではなくなってますよね。ってことは真実を知らない国民の民意も、もしかしたら変わらないかもしれません。しかも仮に変わったとしても民主主義は働かないとその民意が政府の政策に反映されません。こういう状況だと国民の気持ちではなく、プーチン一人の気持ちによって戦争が終わるかどうかが変わると思います

(「イット!」3月15日放送分より)