東日本大震災から11年、これからにつなぐ取り組みをシリーズで伝える。

これは国の伝統的工芸品「雄勝硯」。雄勝石という特別な石で作られている。震災は宮城の伝統産業にも大きな爪痕を残した。雄勝硯も例外ではない。津波で被災した硯の産地で、600年以上続く伝統を守るべく奮闘する若者がいる。

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津波により硯職人を含め156人死亡

宮城県石巻市雄勝町。海沿いにあるこのまちが全国に誇る特産品が雄勝石。

堤勇高アナウンサー:
雄勝石の特徴はこの光沢のある黒です。宝石や金属とも違う光沢が黒に深みを増し、そして気品を感じさせます

粒子が細かいため墨をするのに適していて、室町時代にはすでに雄勝石を使った「雄勝硯」が作られていたと伝えられている。一時は、国内の硯の9割を占めていたという雄勝硯。しかし、東日本大震災で作業場はもちろん、街全体が被災。雄勝地区では津波により、硯職人も含めて156人が死亡した。

伝統の継承が危ぶまれる中、ボランティアの協力を得てがれきの中に残された石を集め、硯の生産は再開された。しかし…。

硯職人 徳水辰博さん:
何をするにも人手・機材・情報が足りない。常々実感しています

現状をこう話すのは、硯職人の徳水辰博さん(30)。雄勝出身の徳水さんは、2014年に雄勝硯生産販売協同組合に加入し、硯職人となった。職人歴は8年。

一時は後輩もできたが、仕事の特殊さに加え、職人の減少で育成のノウハウが絶たれていたこともあり、後輩たちは短期間で辞めてしまったという。組合に所属する硯職人は現在、徳水さんを含めてわずか6人。

硯職人 徳水辰博さん:
私は震災後に入ってきたもので、震災以前から活動している職人に教えを乞う機会がわずかしか取れなかったのが心残り

掘削が再開 雄勝硯の魅力を伝える活動も

若手にとって厳しい状況が続く中、よいニュースもあった。2021年8月、震災以降初めて、本格的な雄勝石の掘削が再開された。

硯職人 徳水辰博さん:
やっと安心できる材料がひとつできたという感じ

堤勇高アナウンサー:
達成感というよりは安心感?

硯職人 徳水辰博さん:
そうですね、どちらかというと

雄勝硯の伝統を未来につなぐために。ハード面の復興も徳水さんの背中を押している。

堤勇高アナウンサー:
伝統を未来へつなぐため、新たな拠点が動き出しています。工場から500メートルほどの場所にある、雄勝硯の魅力を広める雄勝硯伝統産業会館です

2020年5月にオープンした雄勝硯伝統産業会館。雄勝石を使ったさまざまな商品の販売や作品の展示を行っている。館内ではワークショップも開かれ、幅広い人に雄勝石の魅力を知ってもらう拠点となっている。

硯職人 徳水辰博さん:
訪れてくださる方は増えました。ワークショップを始めとして、私も子供の頃の経験からこの道に入ったので、こういった場を提供できるのは大きな進歩だと思う

2022年1月には徳水さんなど若手の作品を集めた企画展が開かれるなど、伝統工芸品として雄勝硯の魅力を発信する機会が増えてきた。

堤勇高アナウンサー:
一番の力作はどれになりますか?

硯職人 徳水辰博さん:
力作は…これかなと思います。年齢層はあまり意識しなかったが、若い人に面白さを感じてもらうというのは常々考えていたので。そういう人に伝わったなら、なおうれしいです

雄勝に生まれ育った徳水さんが見据える、雄勝石の未来。その中には、ともに伝統を受け継ぐ若手の育成も含まれている。

硯職人 徳水辰博さん:
私自身が若手として、職人として独り立ちできるようになった上で、それをモデルケースというか、カリキュラムのもとにしてもらえれば

(仙台放送)

記事 500 仙台放送

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