シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は統合医療の専門医、神奈川歯科大学大学院 統合医療学講座の川嶋朗特任教授が、生理不順や不妊症などあらゆる病気のもとになりかねない冷え症について解説。
予防法として最も効率が良いといわれる入浴の仕方や体質改善のための運動について語る。

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平熱が36度以下は冷え症 

体温は自分で調節できるはずなんですが、体温を調節する機能がうまく働かず体が冷えてしまう状況、また、冷えてしまうと苦痛を感じてしまう状況を「冷え症」といいます。

まずは平熱をチェックしてください。
平熱が36度以下の場合は冷え症といっていいでしょう。

また、体温が高めであっても、冷えて苦痛を感じる方がお風呂に入って温めたらそれが取れる状況を冷え症と考えればいいです。

自分が冷えているなと気付くのは、寒い時に手足が冷たくて苦痛だと感じる時が多いようですが、実際に冷えている方々は、冬は完全に防備をして部屋の中は温かいので特に苦痛は訴えませんが、逆に、冷房が大っ嫌いです。

冷え症のリスク

冷えるということは体温が下がります。
体温が下がると自ずと血液の温度も下がります。血液は酸素や栄養素を運ぶので、滞れば局所で必要なものが作れなくなります。女性ホルモンであれば生理不順不妊症が起こり得ます。
また、セロトニン、ドーパミンが上手く作れないと、うつ病になったりもします。

そして、免疫細胞がうまく届かず、感染症にもかかりやすくなったり、といった怖い病気にもなりやすくなったりします。老廃物の排泄も滞り、最近よくいわれるメタボリック症候群など代謝系の病気にもなる可能性もあります。
つまり、ありとあらゆる病気のもとになりかねないというのが冷えの怖いところです。

冷える方は、温度調節がうまく出来ないので、暑がりで寒がりです。

外気の温度が上がると体温も一緒に上がって、これは熱中症に繋がりかねない。また、外気の温度が下がれば体温も下がって冷え症に繋がってくるわけです。
ですから、冷え症の方々は実は熱中症になりやすいという性質を持っています。

予防は"服装"と38~40度の"入浴"

冷えは、予防も改善もできます。
冷やさない温めるに尽きます。

冷やさないためには冷たいものを摂らない、服装は下半身の方がより冷えやすいので上半身よりも下半身を重点的に覆うことを心がける。

また、締め付けすぎると血流を阻害して冷えてしまうので、締め付けすぎない服装にすることが重要です。

さらに、血流の多いところをなるべく露出しないことも大切です。
まず臓器のあるところ、筋肉の多いところ、動脈が体表面近くを走っているような場所、お腹太もも二の腕、さらに手首足首、といったところは動脈が表面を通っていますから冷やさないように、直接外気にさらさないようにすることが大切になります。

あとは温めること。温かいものを飲めばその熱をもらうことができるので、体を温められます。
また、物理的に温めることも可能です。
例えば、湯たんぽ。湯たんぽは、夜使うことが一般的と思われていますけど、日中も座っている時間があれば上手に使って頂く。

そして、最も効率良く温められる方法は入浴です。
冷え取りの入浴はちょっと特殊です。

人の自律神経は40度を境にしてスイッチします。
40度を超えるお風呂に入ると、交感神経、すなわちお目覚めモードの神経が優位になります。
40度を下回るお風呂に入ると、副交感神経、すなわちお休みモードの神経が優位になります。

交感神経が優位になると、血管が収縮して血圧が上がったり、血流が悪くなったりしますから、高い温度で入ることは冷え取りにはあまり適しません。

冷え取りの入浴法は、低めの温度、38~40度のぬるめのお湯に理想的には30分くらい、最低でも10分くらいは全身浴で浸かって頂く。
入浴は、寝る直前に入ることをお勧めします。

冷えを取るだけで睡眠薬が要らなくなった方もいますので是非お試しください。

「ちょっと嫌なことをしませんか?」

冷えを根本的に取るには、熱を作り出す力を育てることになります。
熱を作り出す1番の組織は筋肉になります。

筋肉を落とさない、若い方でしたら筋肉を付けることで冷えを完全に改善できる体質になります。筋肉を付けるとなれば、運動です。

運動は現代人は1番苦手かもしれませんが、時間がとれる方は自分の好きな運動をされるといいと思いますが、なかなか時間のとれない方にいくつかご紹介します。

一言で言いますと「ちょっと嫌なことをしませんか?」ということになります。
歩くとき、大股早歩きで歩く。

ちょっと嫌かもしれませんが、これがいい運動になります。
週に3回ほど散歩をするだけでアルツハイマーのリスクは2/3に、週に3回ほど強めの散歩をするだけでアルツハイマーのリスクが半分に減ると言われています。
認知症になりたくない方、冷えている方は是非お散歩をお勧めします。

あと、駅にもスーパーにもある階段。これは無料の天然のジムです。

皆さんはお得なものが好きですよね。
無料の天然のジムはとてもお得です。是非お使い頂きたいと思います。

また、乗り物で座ってしまうと筋肉は一切収縮しなくなってしまいます。ですから立っていた方がお得なんです。
そして日常の生活では、炊事つま先立ちでやる。
洗濯物を干す時は、1枚1枚しゃがんでみる。

さらに、お掃除ロボットを使わずに、自分で雑巾がけをするとか箒がけをすることで自分の体を強くする、筋肉を付ける、冷えから脱却する、丈夫な体になっていくという正の連鎖が始まります。

是非、日常生活をちょっときつくしてみませんか?
ちょっと嫌なことをお勧めします。
 

川嶋朗
川嶋朗

現職:神奈川歯科大学大学院統合医療学講座 特任教授 統合医療SDMクリニック 院長(名称は未決定) 日本内科学会 認定医・総合内科専門医 日本腎臓学会 学術評議員 認定専門医 日本透析医学会 認定専門医 日本医工学治療学会 評議員 日本ホメオパシー医学会 理事 認定医・専門医 Licensed Associates Member of Faculty of Homeopathy Certified Hypnotherapist of American Board of Hypnotherapy Certified Hypnotherapist of National Guild of Hypnotists