いよいよ4日、北京パラリンピックが開幕した。日本からは29人の選手が出場するが、実はそのトップアスリートの活躍を日本のものづくりが支えている。

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真っ白な雪の斜面をすさまじいスピードで滑り降りてくるのは、北京パラリンピック、アルペンスキー日本代表・森井大輝選手。

これまで5回パラリンピックに出場し、5個のメダルを獲得している日本パラスキー界を代表する選手。その森井選手が使用している、座席に1本のスキー板を固定したこのチェアスキー。実はここに日本のものづくりの技術が凝縮していた。

森井選手の強さを存分に引き出し、数々のメダル獲得の原動力にもなっているチェアスキー。座席の位置や角度、さらにフレームや風よけとなるカウルなど、森井選手の体や技術に合わせて細かくセッティングされているが、実はこれを開発しているのは、日本を代表する自動車メーカー・トヨタ自動車。

トヨタ自動車 榎本朋仁プロジェクトリーダー:どういう構造を実現したいんだ、どういう性能を実現したいんだ、どういうものづくりを実現したいんだ、そこに生かせる車両開発に関わる技術ですとか、生産技術というのが、どういう部分なのかを照らし合わせて、こういうことができないかと。

クルマづくりで培った技術をパラアスリートの支援に生かしたい。そんな思いで7年前からチェアスキーの開発を、イチから始めたトヨタ自動車。

車両開発で培った高い設計技術を生かした車体。軽量化や耐久性の強化に加え、風洞実験施設を使い、空気抵抗の低減に取り組むなど長年蓄積したノウハウをフルに活用して、チェアスキーの開発に挑んだ。

トヨタ自動車 カウル開発 岩脇彩香氏:あるべき(空気の)流れの姿というところは、車もチェアスキーも、およそは変わらないかなと思っています。ただ、形がそもそも違うので、どうやって実現させていくかは、違った対策になります。

現在トヨタ自動車には、森井選手のほかに、前回の平昌(ピョンチャン)大会で5個のメダルを獲得した村岡桃佳選手も所属。2人が北京で乗るチェアスキーにも、理想の滑りを実現するための知恵と技術、そして、エンジニアの思いが込められている。

北京パラリンピック代表 森井大輝選手:スポーツはよく心技体が必要だと言われるんですけど、チェアスキーの場合は用具の強化が必要だなと思っていて。今回はより細かくというか、設定でいうと0.1ミリ単位での調整。そこに対して、どんな乗り心地になるのか、どういうときにこの設定のメリットがあるのかということを、ずっと煮詰めてきました。

世界に誇る日本のものづくり。北京の大舞台でもパラアスリートたちの挑戦を後押しする。

トヨタ自動車 榎本朋仁プロジェクトリーダー:パラスポーツでは特に、用具が体の一部となってきます。やはり、理想の滑り、理想の性能を出すための用具開発を進めると、それに必要な心や技術もレベルが上がって、2人がより自信を持って、スタートゲートに立てるような形で、僕たちは用具の部分で、2名の選手を支えたいなと思います。

内田嶺衣奈キャスター:このニュースについては、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに話をうかがいます。車作りの技術を生かして、パラアスリートを支援という、素晴らしい取り組みだなと感じましたが、松江さんは、どう見てますか?

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:本当に素晴らしい取り組みだと思いますね。私は、この背景に、トヨタが、移動というものを、障がいを取り除くだけではなくて、新しい夢にチャレンジすることを後押しする。こういった大義を持って取り組んでいるところに意味があると思うんです。特に、その中でも、こういった技術者とアスリート、高い夢や目標を共有して、一体感を持って取り組むが故に生まれるフィードバックサイクル、そこに私は注目しているんです。

内田嶺衣奈キャスター:フィードバックサイクルというのは、具体的にはどういったことなんでしょうか?

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:技術者は、今まで培った技術を新しいものに試す、そしてアスリートは、それを使って、感覚も含めて、直接フィードバックをする。こういった作り手と使い手が本音で語り合うフィードバックサイクル、これが生み出されたことが、新しい価値を生む源泉になっているのではないかと見ているんです。こうしたフィードバックサイクルが生まれると、企業にとっては技術開発と人材育成の両面でメリットがあるんですね。例えば技術開発で言えば、車作りの車体の設計とか、強度のシミュレーション、これはチェアスキーの開発にも役に立ちますし、また今回のように取り組むことによって、例えば、車のカーブを曲がる時の荷重のかけ方とか、通常の車作りにも技術が生きてくる。こんなメリットにもつながるんですね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:また人材育成においても、アスリートの高い要求水準、これに応えることがエンジニアのモチベーションも高めますし、お客様に対してのニーズをくみ取る姿勢や能力の向上にもつながる。言わば、こういったフィードバックサイクルを活用することが、人材育成と技術開発、このプラスのスパイラルにつながる、こんなことが期待できるんじゃないかと思うんですね。

内田嶺衣奈キャスター:そういったプラスの流れというものが生まれれば、支援する側の企業にとっても大きなメリットがありそうですね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:そうなんですね。まさに今回の自動車メーカー以外にも、タイヤメーカーと用具メーカーとか、アスリートの技術支援、これはかなり裾野広く参入しているんですが、これから企業がパラリンピックに取り組む意味というのは、アスリートの課題解決に貢献するだけではなくて、企業自らが成長できる、こういった機会という風に捉えて取り組む、こういった考え方が、ますます重要になってくると思います。

内田嶺衣奈キャスター:しっかりとしたビジョンを持って支援をし、その姿勢を見せ続けることで、多くの人に、その思いを感じてもらうことができると思います。こういった取り組みによって共感する人が増え、支援の輪がさらに広がっていく、そんな未来につながっていくといいですね。

(「Live News α」3月4日放送より)

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