各地で5歳から11歳への新型コロナウイルスワクチンの接種が始まる中、子どものワクチン接種にはためらいの声もある。東京・港区のアンケートでは「接種を受けたい」という保護者は4割以下にとどまっている。
接種の決断にあたってポイントとなる、メリットや副反応のリスクについて、港区の愛育病院小児科部長・浦島崇医師に聞いた。
Q子どものワクチンの副反応はどの程度?
浦島医師:5歳から11歳は、成人の方の1/3の量の接種です。先行接種しているアメリカの大規模なデータが、CDC=疾病対策センターのホームページから出されていて、その結果を見ると、熱を出す方は2回目の接種後でも20%以下、あとは重篤な心筋炎、胸痛などを訴える方が800万接種で11例。重篤な反応が出る方は極めて少ないというデータが出ています。

Q大人と比較して、副反応のリスクはどう?
浦島医師:(子どもは接種するワクチンの)量が少ないから、副反応が出にくいということかなと思います。大人の場合は、ファイザー2回目だと半数ぐらいの方に高い熱が出たりしますが、それと比べるとやはり発熱の率は少ないですね。大人のワクチンの結果以上の副反応が出るというデータはないです。
Q長期的な副反応が、子どもだと大人よりも、今後成長して行くにつれて気になる部分もあると思うが、そういった不安に関しては?
浦島医師:数年後にどのような副反応が出るかということに関しては、まだ始まったばかりのワクチンなので、やはり断定できないところではあるかなと思います。
Q保護者が一番心配するのはどういう部分?
浦島医師:一番心配されているのが、モデルナで問題になった心筋炎ですね。心筋炎は、コロナに罹患してもなる可能性がある合併症で、それがワクチンを打っても出ることがあると分かっています。日本でも、10代の方のワクチン接種で、心筋炎で亡くなった方はいらっしゃらないですが、心筋炎になった方は少数報告が出ています。心筋炎になってしまったらもう取り返しがつかない、ということではなくて、基本的に安静にしていただければ完治する状態です。

Qコロナになっても心筋炎になる可能性があるというと、ワクチンのリスク・メリットで、比較するとどう?
浦島医師:副反応に関して、今のデータだとコロナに罹患して心筋炎になってしまうリスクの方が高いというふうに考えられています。
Q子どもに関して、接種のメリットは?
浦島医師:お子さんの場合、お子さん自体は重症化されるリスクは少ないんですけれども、お子さんから家庭内、家庭内から社会に感染が広がっていきますので、一番の目的は、家庭内感染を防ぐということになると思います。
Q愛育病院に訪れる患者も家庭内感染の事例が多い?
浦島医師:第5波までと違い、オミクロン株の流行にともなって、子どもから家庭内へ広がることが多いです。それで、ご両親や祖父母に移っていくことが、今の感染の一番の根本なので、そこをなるべく押さえてあげることは一つ大事な点だと思います。オミクロン株が流行してから、子ども同士の感染が非常に増えたのは特徴の一つで、子どもから妊娠中のお母さんへうつることも問題になっていますね。

Q愛育病院でも感染した妊婦を受け入れているが、オミクロンになって増えた?
浦島医師:第5波まではお父さんからうつる方が多かったのですが、第6波になってからはお子さんからお母さん、妊婦さんにうつるケースが非常に増えています。
Q各家庭での判断基準として、どういうお子さん、ご家庭だったら、特に接種を受けたほうが良い?
浦島医師:お母さんが妊娠されていたり基礎疾患があるご家族がいる場合、あとはお子さん自体にもやはり神経的な慢性疾患があったりという方は、接種を受けた方がいいと思います。
Q CDCのデータの死亡事例(接種との因果関係は示されていない)は病歴があったということで、基礎疾患ある子どもが打つことに不安な家族もいると思うがどう?
浦島医師:基礎疾患があることで重症化しやすく、特に寝たきりのお子さんなどは普通の風邪でも重症化しやすいので、特にオミクロン株はやはり感染力が強いので、接種を受けた方がメリットが高いというふうに思ってます。

Q接種を迷っている家庭、まだ接種は控えたいという家庭に対しては?
浦島医師:お子さんの接種は義務ではないので、家庭内で感染が広がることのデメリットがある場合、あとは学校に行けなくなる、修学の機会がなくなるということも踏まえて、ご家庭で判断していただくことになると思いますが、データは病院や保健所のホームページに掲載されていますので、まずはしっかりとした情報をきちんと読んでいただいて、それでも不安がある場合は保健所が電話相談を用意していることが多いので、そうしたところにご相談いただくといいと思います。
Qほかのワクチンと著しく違う部分はある?
浦島医師:今回違うのがmRNAワクチンといって、今までの不活化ワクチンとちょっと違います。そこが、やはりジャッジを難しくしている点かなと思います。mRNAワクチンで、今回のファイザーワクチンが世界的に初めてなので、少し予期できないところがあるかもしれないというところが危惧点ですね。
Q現時点で他のワクチンと比べて特異な結果は?心筋炎は他のワクチンでもなる可能性はある?
浦島医師:ほかのワクチンではあまり聞かないですけれども、確率的には非常に低く、いろんなワクチンで稀な合併症っていうのは起こり得るので、アメリカのデータを見ると、ファイザーのワクチンだけ特別副反応が重篤という状況ではないと思います。
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子どもから家庭へ、そして社会へと広がる感染の波。5歳から11歳のワクチン接種は、それを食い止める鍵となるのか。該当する年齢の子どもがいる家庭は、接種を受けるかの判断にあたって情報を収集し、家族でしっかり話し合って納得することが大切だ。
(フジテレビ社会部 市原璃音)