2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻。和平への道筋が見えない中で、多くの血が今も流れています。

(ロシアがウクライナに軍事侵攻・2月28日)
(ロシアがウクライナに軍事侵攻・2月28日)
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天皇皇后両陛下を始めとする皇室の皆さまも、この戦争には心を痛められていると想像しています。

侵攻前日の天皇誕生日…世界平和を願うお言葉

天皇陛下は、ロシアの侵攻前日、62歳の誕生日を迎え、誕生日に当たっての記者会見で東京オリンピック・パラリンピックの思い出と共に、世界平和を願うお言葉を述べられています。

「国と国との間では、様々な緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が、国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界につながってほしいと願っております」

誕生日にあたり会見に臨まれた天皇陛下
誕生日にあたり会見に臨まれた天皇陛下

両陛下の側近によれば、ウクライナへの侵攻について、受け止めについては伺っていないとしながらも、「記者会見で国と国とを超えた世界の平和について発言なさっている通りのお気持ちではないか」ということです。

2国間の紛争について、皇室の皆さまが、触れるのは憚られることで、世界の平和を願われるお立場なのです。

人と人との交流が世界平和の礎に

こうした、人と人との交流が平和な世界の礎となるというお考えは、上皇ご夫妻もこれまで述べられています。

上皇さまは1994年、フランスとスペインを訪問する前に行われた記者会見で、外国訪問に対するお考えを問われ、このように答えられたのでした。

「国と国との関係はその時々の政治情勢や経済情勢によって影響を受けますが、国民と国民との交流と理解が進み、友好関係が確立している場合には国家間の問題を越えて続いていくものと思います。国と国との関係がこのような互いの信頼関係に支えられていることは大変重要なことと思います。この意味において、様々な分野を通じて国民と国民とが相互理解に基づく友好関係を築いていくことが国際親善の上から意義深いことと考えます。私もこのことを念頭に置きながら、多くの人々と接し、相互理解に基づく友好関係が更に深まるよう努めていきたいと思っています」

上皇后さまのお考えは、1993年のヨーロッパご訪問の際の記者会見から見て取れます。

「どの国もが、それぞれの歴史を背負い、現在に至っていることを思いますと、それぞれの国が複雑な過去の重荷に耐え、その中でなお,自分の国を愛し、より望ましい姿で未来に向かって努力することが、どれ程大切であるかを感じさせられます。それぞれの国にあって、自国を思い、他国との間の平和を求めて努力をしている人々と出会い、共に生きる感覚を失うことがないよう心掛けていきたいと思っております」

日本とウクライナとの交流

日本とウクライナの関係は、外務省の資料などによりますと、ソビエト崩壊後、独立したウクライナと1992年に外交関係を結んだことに始まります。

ウクライナの首都・キエフは京都市と、港湾都市・オデッサは横浜市と姉妹都市となり、草の根の交流が続いていました。

ウクライナ自体は、親ロシアの政権や反ロシアの政権などの交代もありましたが、2019年5月、今のゼレンスキー大統領が就任します。コメディー俳優をしていたことやドラマで大統領役をしていたことなどをご存じの方も多いと思います。

ウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナのゼレンスキー大統領

そのゼレンスキー大統領は、就任から5カ月たった10月、夫妻で来日。

ゼレンスキー大統領夫妻を出迎えられる両陛下
ゼレンスキー大統領夫妻を出迎えられる両陛下

即位礼正殿の儀などに出席するためで、天皇皇后両陛下とこのとき会い、言葉を交わされています。

ゼレンスキー大統領を出迎えられる陛下
ゼレンスキー大統領を出迎えられる陛下

また、この訪日に合わせ、ゼレンスキー大統領は、当時の安倍首相とも約20分間、会談をもち、ゼレンスキー大統領からは「日本からの2014年以降の支援の積み重ねに感謝する。最近では下水処理場改修への支援も感謝する。引き続き国内改革を進めていくので、日本の協力を得たい」との発言があったということです。

日本とロシアとの交流

一方のロシアですが、即位礼正殿の儀には、ロシア連邦の上院副議長が出席しています。

プーチン大統領は2000年9月、公式実務訪問で来日し、当時の天皇皇后両陛下、上皇ご夫妻とお会いになっています。プーチン大統領が選挙で初めて当選し就任して4カ月後のことでした。

ロシアのプーチン大統領
ロシアのプーチン大統領

両国の大統領とも国賓としての来日はなく、また、天皇のご訪問はありません。ロシアは天皇が訪問されたことがない国の一つなのです。

これは、平和条約が未だに締結されていないことが影響しています。

日本とロシアは、国交を結んでいますが、サンフランシスコ講和条約への調印を当時のソビエト連邦が拒んだため戦後処理を行うための平和条約が結ばれていないのです。

高円宮妃久子さまのロシアご訪問

ただ、皇族はロシアを訪問されています。

高円宮妃久子さまが、2018年、サッカーのワールドカップ・ロシア大会での日本代表の試合観戦などのため102年ぶりにロシアの地に立たれたのです。

ロシアへ出発される高円宮妃久子さま
ロシアへ出発される高円宮妃久子さま

その際、「日本の人たちにとってロシアを知る、いい機会ですので、今後ともこのような友好関係が発展していけば素晴らしいと思います」と述べられています。

相互理解と人と人との交流という皇室の国際親善に務められたのでした。

ロシアのウクライナへの侵攻は決して許されるものではなく、私たちはウクライナに心を寄せる事は大切です。

それと同時に、私たちは、全てのロシア人が悪いわけではないことを心に留め、陛下が述べられたように「人と人との交流が、国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界」がくることを私は願ってやみません。

(フジテレビ皇室取材班 橋本寿史解説委員)