年明けから、税務署や国税局は、あることの周知活動で、さまざまなイベントを開いていることをご存じだろうか?アイドルが登場したり、女子プロレスラーたちが体を張ったり。女優の佐藤奈緒美さんや劇団四季も協力した、あわせて10以上のイベントを企画するなど熱量が高いが、すべては「確定申告」のためだ。

これまでは確定申告が必要なのは会社経営者やフリーランスの人のみと思われていたが、近年、会社員がふるさと納税の控除や、副業での申告のため確定申告が必要な人が増えてきたことで国税庁などは積極的に周知活動を行っている。

アイドルグループ「=LOVE」が確定申告をPR(2月4日)
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初めて行う人も簡単に手続きができるよう、国税庁は電子申告サービス「e-Tax」を改良。 “面倒な確定申告”のイメージを払拭する動きもある。周知活動に、申告サービスの改良。ここまで確定申告に力をいれているのは、なぜだろうか。

そもそも確定申告とは何なのか。確定申告は、前年の1月1日から12月31日までに受け取った給料などの所得税を、原則、自分で正確に税務署に申告するもの。納税額が不足していれば「納付」、多ければ「還付」される。

会社員などの場合は、所得税は毎月の給与から源泉徴収として引かれるが、実は“ざっくり”徴収されている。年末に「年末調整」で生命保険料や地震保険料などを控除すると課税所得が決定し、所得税が確定する。

女子プロレス「PURE-J」も国税イベントに協力(1月19日)
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ただこの年末調整でも申告できない税金があるため、会社員でも確定申告をする人がいるのだ。では、どんな場合に確定申告が必要なのか。・2カ所以上から(副業などで)給与がある人・2000万円以上の所得がある人など。

コロナ禍で収入が減った人や、テレワークで在宅勤務が増えスキマ時間を活用しようと、会社員が副業などを始める人が増加した。食事のデリバリーサービスや、動画配信をする人など様々だが、こうした副業の収入がある場合は申告が必要だ。

また、暗号資産や株式取引などの投資をする人も、利子・配当を受け取ったら申告が必要となる。海外口座で配当を受け取っても、租税条約や国際的なとりきめにより、申告をしていないことが見つかるケースもあり、ペナルティが科されるので注意が必要だ。

女優の佐藤奈緒美さんは芝税務署のイベントに参加(1月28日)
女優の佐藤奈緒美さんは芝税務署のイベントに参加(1月28日)

もちろん、納付するばかりではない。還付を受けられるケースもある。・ふるさと納税など寄付をした人(寄付金控除)・医療費 10 万円以上支払った人(医療費控除)・暗号資産取引、株取引で損益があった人(損益通算と繰越控除)・マイホームの売却した人(損益通算と繰越控除)・住宅ローンを組んだ人(住宅ローン控除)・災害で住宅や家財に損害を受けた人(災害減免法)・経費があった人(特定支出控除)

病院で医療費を多く使った場合に受けられるのが、医療費控除だ。控除されるのは、1年間の医療費の合計金額から10万円を引いた額となる。対象は、高額療養費、出産育児一時金などを受け取った場合や、歯科医師による診療・治療のための費用なども含まれる。

高齢者が老人ホームや介助サービスを利用している場合も、自己負担額が控除されることがある。さらに、副業をしている人は、売り上げと経費を損益通算することで翌年の住民税が低くなるなど、節税できる場合もあるのだという。

このほかに、新型コロナの影響で会社が倒産するなどし、年末調整が行われなかった場合も税金が戻ってくる。例えば、1月から9月まで勤務した場合などだ。仮に、同じ年に再就職し、新しい会社が年末調整する場合には、退職した会社分と一緒に行うことができる。

劇団四季ミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」も「e-Tax」普及に一役買った(1月18日)
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また、パート・アルバイトでの給与所得の源泉徴収票で給与103万円以下にも関わらず、源泉徴収税額で税金が引かれている場合、申告すれば戻ってくる。仕事を2カ所以上掛け持ちして働く場合でも、合わせて103万円以下なら還付の対象だ。

では、確定申告をしないとどうなるのか。ふるさと納税や医療費控除などは、5年前まで遡って申請することができるので、今年申告忘れがあっても来年にまわすことができる。ただ、副業などの収入については、期間内に納めないとペナルティがある。期間をすぎて申告内容に間違いを直す場合や、申告をしなかったり忘れていた場合は罰金が科される。

一方で税金を多く申告していたことに気づいた場合は「更正の請求」をすることで、訂正することができ、納めすぎた税金が還付される。

ここまで厳格なルールがあるのは、税務署や国税局も、必要な分だけ納めて欲しいというフェアの精神からだ。正しい金額を申告し、正しく納税・還付する。ただ、手続きが煩雑では誰もやらない。多くの人がスムーズに確定申告ができるようにするため、国税庁は今年、電子申告サービス「e-Tax」の機能を追加。スマホで源泉徴収票を読み取ると給与所得が自動入力されるようになった。

「正しく納めてほしい」確定申告に力をいれる理由は税金の取り立てではなく、税金の払いすぎの人、税を逃れている人のいない社会を目指すからだった。

(フジテレビ社会部・国税担当 長谷川菜奈)

社会部
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