北京五輪フィギュアスケート男子ショートプログラム、3連覇を狙う羽生結弦選手は8位と波乱のスタートとなった。一方、鍵山優真選手は2位、宇野昌磨選手は3位とメダルに向けて好発進となった。

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決戦の直前の午後1時前、羽生結弦選手(27)は入念にジャンプの回転を確認していた。

男子フィギュアで94年ぶりとなるオリンピック3連覇に挑んだショートプログラム。現地・中国の人々も注目し会場の外に集まったファンのみならず大会のボランティアスタッフもモニター越しに演技を見守った。その中には羽生アイテム「くまのプーさん」を持ったスタッフの姿もあった。

ところが最初のジャンプで想定外のことが起きた。

(実況)「4回転サルコウの予定がシングルになりました」

冒頭のジャンプではリンクの溝にはまり4回転ジャンプが1回転となるまさかのミス。

しかしその直後にすぐに立て直し、4トゥループ+3トゥループのコンビネーションジャンプやトリプルアクセルを次々と決めた羽生結弦選手。美しいピアノの調べにのった情感あふれる演技を貫き通した。演技を終えた直後、失敗に終わった冒頭ジャンプの踏み切り位置を確認し、悔しそうな表情を浮かべた。

羽生結弦選手:
「うわあ…ハマった」

(実況)「今ちょっとハマったっていう…たぶん一度跳んだところの溝に乗ってしまったんでしょうね」

得点は95.15。全体の8位からフリーに向かうことになり難しいスタートとなった。

あのミスの瞬間、何が起きたのか。終了後、羽生選手自身が語った。

羽生結弦選手:
「いやもう一番自分がフワフワしてます。サルコウを跳ぶ瞬間のカーブに差し掛かったときに本当にもうテイクオフ、跳ぶ瞬間に穴があって、もうジャンプにならなかったです。練習してきたことは正しかったなって思いますしやっていることも正しいんだけどなっていうなんか複雑な心境です」

それでも、8日朝の練習では、初めて本番のリンクで4回転半ジャンプに挑戦。両足着平ながらもフリーの手応えを感じさせた。フリーでは羽生選手がこだわり抜く4回転半ジャンプ「クアッドアクセル」で巻き返しを狙う。

羽生結弦選手:
「まあやってみなきゃわからないところはあるんですけど、でも必死になって食らいついていきたいなって思います」

立ちはだかるのは世界最高得点でトップに立ったアメリカのネイサン・チェン選手。メダルを懸けた最終決戦・男子フリーは10日に行われる。

初出場の鍵山優真が2位発進 

オリンピック3連覇が懸かる羽生結弦選手のほか、宇野昌磨選手(24)、鍵山優真選手(18)の日本勢3選手が出場する男子フィギュアスケート。8日のSPで躍動したのが五輪初出場の鍵山優真選手だった。

父の正和コーチが見守る中、まず冒頭の4回転サルコーを成功させると、続くコンビネーションジャンプにも成功。その勢いに乗りノーミスで躍動感あふれる演技を終えた。最後は会心のガッツポーズ。喜びを爆発させ、父・正和コーチとガッチリ抱擁をかわした。

得点を待つ間も両手を高く突き上げた鍵山選手。祈るように待った結果は自己ベストを大幅に更新する108.12。ショートプログラムでトップに立ったネイサン・チェン選手に続く2位につけた。

鍵山優真選手:
「オリンピックっていう舞台をずっと目指して頑張ってきた。その結果が今日現れたんじゃないかなと思います。オリンピックは楽しいですね。やっぱり楽しまなきゃ損する」

親子二代でつかんだ五輪切符

かつて92年、96年と五輪2大会連続出場を果たした父・正和さんの影響で鍵山選手がフィギュアスケートを始めたのは5歳の頃。小さな体で大人顔負けのスピンや連続ジャンプを6歳にして決めていた。フィギュアを始めてからわずか4カ月で大会に出場し優勝までしてみせた。鍵山選手は当時「パパがオリンピックに出ててスケート始めようかなと思った。夢はオリンピックに出たい」と話し、当時の夢はすでに世界の大舞台だった。

以来親子二人三脚で歩んできたスケート人生。2019年には全日本ジュニアで優勝し初めての日本一を経験した。そしてこの直後、ジュニアながら全日本選手権で3位に入り、宇野選手、羽生選手と同じ表彰台に立つ。そして北京への切符をかけた2021年12月の全日本選手権で3位に入り初のオリンピック代表に選ばれた。

6日までの団体戦では男子フリーで1位となり、団体初の銅メダル獲得に貢献。

鍵山優真選手:
「今はまだ上とかメダルを考えずに自分のベストを尽くすことが一番だと思いますので頑張ります」

その若さと勢いで個人戦でもメダルを手にするのか期待が高まる。

宇野昌磨自己ベスト3位発進「次につながる演技」

さらに日本勢では平昌大会の銀メダリスト宇野昌磨選手も堂々たる演技を見せた。まず決めたのは冒頭の4回転フリップ。コンビネーションジャンプでは手をつくなどわずかなミスが出た。それでも、表現力豊かな演技を見せ、笑顔で演技を終えた。その得点は。自身もあっと驚く105.90の高得点。団体戦での自己記録を更新し、全体の3位でメダルを狙うことになった。

宇野昌磨選手:
「完璧な演技がしたいというよりも、ちゃんと次につながる演技、そして自分の気持ちに負けずにちゃんといつも通りの自分を出すこと、それがフリーの目標です」

メダルを懸けた最終決戦・男子フリーは10日に行われる。

(イット!2月8日放送分より)