スポーツ名門校に通っていたアスリートたちはどんな高校時代だったのか。

1月23日の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、スポーツ名門校を特集。強さの秘密の一つ、寮生活やそこでのルールなどを放送。番組では、延岡学園高校、青森山田高校、白樺学園高校、武生商業高校などをそれぞれの学校出身のアスリートと共に紹介した。

女子バレー部の独特ルール

宮崎・延岡学園高等学校。

ロンドン五輪で水泳・男子400メドレーリレーの銀メダル獲得に貢献した水泳・松田丈志さんと、同じくロンドン五輪で女子バレーボール28年ぶりの銅メダル獲得の立役者、新鍋理沙さんらを輩出。

甲子園常連の野球部をはじめ、バスケ部、弓道部など全国レベルの部活が数多く存在する。

そんな延岡学園には全国のスポーツエリートが集まるクラスがあり、同じ教室で切磋琢磨して、勉強や部活に没頭している。スポーツ特待生を1クラスに集めることで、生徒同士が刺激を与え合い、相乗効果が生まれるというのだ。

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松田さんは「スポーツクラスだけ茶道の授業があったんです。先生に理由を聞くと『お前ら元気がありすぎて、エネルギー有り余っているから週に1回は茶道の授業を受けて心を鎮めろ』と。卒業するときには裏千家三級の資格取りました」と話し、新鍋さんも「持っています」と頷く。

新鍋さんがいた頃の女子バレーボール部には「挨拶は先輩の数だけする」「先輩の前で男子と話しちゃダメ」「朝3時に起きて先輩のサポーターを素手で乾かす」というルールがあったという。

先輩が集団でいても1人1人に挨拶し、男子と話しているところを先輩に目撃されたら、話していたことを問われ、「喋ってしまってすみませんでした」と謝ったそう。

「サポーターを素手で乾かす」ことは、「遠征は前日の午後まで練習して、その日のうちに洗濯して干すんですけど、次の日の朝に帰るときに乾いてない。朝はドライヤーも使えない」ため、新鍋さんはサポーターを手でこすって、その摩擦で乾かしていたと明かした。

現在、宮崎県で1、2を争う強豪バレー部。当時、新鍋さんを苦しめた独特ルールについて、現役のバレー部員に聞くと、「挨拶は先輩の数だけする」は「上限2回まで」となり、少し緩和されていた。

「先輩の前で男子と話しちゃダメ」は、全員が「ムリムリ」と衝撃を受け、「そんなルール、嫌だ」と驚いていた。また、「サポーターを摩擦で乾かす」は、部員一同が爆笑。「大変」「厳しい」と、かつてのルールを笑い飛ばした。

一方、松田さんの水泳部は現在存在しないという。

その理由を副校長先生は「丈志のための水泳部であり、卒業すると同時になくなりました。県立高校だと授業日数が足りなくなり融通が利かないと、当時の丈志のコーチと高体連の方が来て、丈志をバックアップするために水泳部を作りました」と明かす。

中学卒業後、松田さんは県立高校に入学したが、水泳に打ち込むため1年生の夏に転入。延岡学園のサポートを受け、在学中には日本代表にも選ばれた。

多くのスポーツエリートが暮らすのが学校から徒歩1分のところにある学生寮。

現在、バレー部の2年生が暮らす部屋は6畳の部屋に並んだベッドが2つ。部屋替えはないため、同室の2人は卒業まで共に生活をするという。

そんな寮生活に部員は「1人の時間も大事だけど、落ち込んだ時に励ましてくれるので、2人部屋が良い」と寮生活の良さを挙げた。

朝練厳しいけど、寮生活楽しい!

ロンドン五輪バドミントン銀メダルの藤井瑞希さんの出身校は、青森・青森山田高等学校。

校舎には数々のスポーツ大会で成績を収めたトロフィーやカップなどが並ぶ。

これまで卓球・福原愛さん、水谷隼選手、丹羽孝希選手。先日、全国高等学校サッカー選手権を制したサッカー部からは、日本代表として活躍する柴崎岳選手、室屋成選手を排出。日本バドミントン界に初めてメダルをもたらした藤井さん、垣岩令佳さんペアなど、世界で活躍するアスリートが巣立っている。

藤井さんが所属したバドミントン部の朝練は、1.5キロのランニング、500回の二重跳び、テニスラケットやバドミントンラケットの素振りを朝5時からこなし、その後、全員で朝食をとる。

食堂では他の部の男子も続々と合流するが、バドミントン部の女子部員いわく「恋愛は禁止」だそう。女子部員たちは「寮生活が楽しい」ため、そのルールは問題ないという。

学校の敷地内にあるバドミントン部の女子寮は、50人ほどの部員が過ごし、かつての藤井さんの部屋は現在2人の1年生が使っている。

部屋の両脇にベッドが1台ずつあり、部屋にある2台の小型の冷蔵庫には各々が好きなものを入れているそう。

さらに新しくできた寮のお風呂では、こんなルールが存在する。「失礼します、こんばんは」と言ってから入り、浴槽に先輩がいる場合は「入ってもいいですか?」と一声かけて、了承を得て「失礼します」と言って浴槽に入る。

VTRをみて懐かしそうにしていた藤井さんも「寮生活が楽しかった」そうで、「寝る時間が決まっていたんですけど、盛り上がって守らない日もあって。隣が理事長先生の家で『うるさい!』と怒られた」と振り返る。

「すごく楽しかったので私は高校生活もう1回したいです!」と話す藤井さんに、厳しい寮生活を味わった番組MCの浜田雅功さんは「俺は絶対に嫌!」と苦い顔をした。

先輩のおかわりに気を配る?

ウインタースポーツの名門、北海道・白樺学園高等学校。

リレハンメル五輪銅メダリストの堀井学さん、北京五輪代表の郷亜里砂選手。そして夏と冬合わせてオリンピック3大会連続出場した大菅小百合さんらを輩出。

約25年前に新校舎建設にあたって、W杯も開催される国内でも数少ない屋内のリンク「明治北海道十勝オーバル」の近くに学校が引っ越した。

そんな名門校の強さの秘密は彼らが寝食を共にする寮にある。

現在は男女13人が一つ屋根の下でスケート漬けの生活を送っている。朝5時半に起床し、自転車でリンクに向かい6時から朝練。その後朝食をとり、自転車で8時過ぎに登校。授業、練習を終え、夜9時近くに夕食をとって彼らの1日が終わる。

部員が使う自転車は学校内で専用のローラーに乗せると、トレーニングマシンに。学校自慢のトレーニングルームには、プロの競輪選手が使う足を鍛えるためのバイクを7台所有しているという。

大菅さんは、スピードスケート部の寮にあった厳しい食事のルールを明かす。

そのルールは「食事中の会話は禁止」「皿の上のものは全部食べろ」「1年生は先輩より早く食べ終え、先輩のおかわりタイミングに気を配れ」の3つ。

このルールに「わかるわ~」と返す浜田さん。大菅さんは「おかず以外、水とご飯とお味噌汁は、先輩がおかわりするタイミングを気遣って見ていないといけない。でも直視できないので横目で見ながら」と話す大菅選手に、浜田さんは強く頷く。

しかし、今一番大変なルールを部員たちに聞くと、「外に出るときに鍵をかけること」「夜10時には帰ること」とかなりの緩和。そこで大菅さん時代のルールを見せると、「時代だなと思います」と返ってきた。

他にも数々の決まりごとがあり、大菅さんは「1年生の時は略語が禁止だった」と明かす。「日体大も日本体育大学、朝練も朝練習。一番困ったのが“ママチャリ”。私も注意されて、“婦人用自転車”って言いなさいって言われた」と振り返った。

オリンピアンを生み出す秘訣

福井県越前市の武生商業高等学校。

日本初の金メダルを獲得した男子エペ・見延和靖選手をはじめ、三大会連続出場の女子エペ・佐藤希望選手、さらに青木千佳、徳南堅太と4人の東京五輪代表を送り込んだ、フェンシングの名門校。公立高校でありながら、4人のオリンピアンを輩出した。

現在は男子4人、女子6人の10人が所属するフェンシング部。10人のうち、フェンシング経験者はゼロ。全員が体験入部でフェンシングに出会った。

佐藤選手も高校からフェンシングをはじめ、高校3年生の時に日本一を達成している。

武生商がフェンシング初心者を世界のトップクラスにまで鍛え上げる秘密を、見延選手は「すごく考えられる選手が育つこと」と明かす。

生徒たちは「フェンシングノート」を持ち、そこに自分の課題や反省を書き込み、練習メニューも自ら考えるという。顧問の先生も選手に疑問を投げかけ、答えが出るまで考えさせるという指導を貫く。

生徒も何度も答えを顧問の先生にぶつけにいき、何度も考え直し、ようやく答えにたどり着くと、真っ先にその答えをノートの書き込むという。

見延選手は「ヒントを与えても答えは言わない。何が原因でこうなっているかを、自分が気づくまで考えさせる」と話した。

(『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送)