「引退の気持ち」一転、挑む北京五輪
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「想定していなかったオリンピックなので、引退の気持ちに傾いていました」
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2021年8月だった。故郷の北海道で北京五輪への挑戦に葛藤があったことを明かしたのはスノーボード女子パラレル大回転の竹内智香、38歳。出場すれば冬の五輪では日本女子史上初の6度目となるレジェンドだ。
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一度は引退で気持ちを固めるも現役続行の道を選んだ竹内は2021年の3月には世界選手権で7位に入るなど、既に北京五輪の派遣推薦基準をクリア。「本当にここ最近2カ月くらいはベストな時と同等、もしくはそれ以上じゃないかというくらい体は仕上がっています」と、厳しいトレーニングに明け暮れる毎日を送っていた。
日本女子初の銀メダルも「悔しい」
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初めての五輪は今から20年前、高校3年生18歳で出場したソルトレイクシティーだった。それ以降、2006年トリノ五輪、2010年バンクーバー五輪と世界と渡り合い、4度目の挑戦となった2014年のソチでは、スノーボードで日本女子初の銀メダルという快挙を成し遂げた。
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「一番高い目標、金メダルを目指していたんですけど銀メダルで終わったことはすごく悔しかったです」と振り返る竹内はこの悔しさを糧に5度目となる2018年の平昌五輪へ。
五輪銀メダル直後に襲い掛かった試練
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しかし、2016年に竹内に試練が襲い掛かる。「左膝前十字靭帯断裂」というアスリートにとっては選手生命にかかわる大ケガを負った。
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「ソチから平昌の4年間はすごく苦しかったです。結果が出なかったこともありますし、ケガが多かった。(競技を)続けたことへの後悔もありました」
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それでも竹内は前を向き続けた。手術直前には病床で「でも(靭帯が)切れて良かったと思う。もう一回、頑張る気になったから。ソチ五輪が終わって、なんだかんだ気持ちが抜けていたから。これはこれでまた課題ができて面白いな」と話すなど強靭なメンタルでリハビリを続け復活を遂げた。
「努力は裏切る」脳裏をよぎった引退
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そして迎えた2018年の平昌オリンピック。金メダルを目指したが、結果は5位に終わった。
「正直、34歳で平昌五輪を迎えたので、年齢的にも5回の五輪っていうのも自分の中でそれが最後になると思っていた」
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このとき脳裏によぎったのは「引退」の文字。
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「基本的に努力は裏切るものだと思っています。努力をしたからといって絶対に金メダルを取れるわけではないですし、それでも順位が付くのがスポーツの厳しさだと思いますし、それでも努力をすること、先の見えないものに投資する努力を積み重ねることはすごく大事だと思う」
「努力は裏切る」、それは数々の経験をした竹内だからこそ出た言葉だった。
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「今までは競技を続けたくても続けられない時がありましたし、今は続けられる環境があって目指せるチャンスがもう一回ある。それを簡単に引退って決めるのは後悔するんじゃないかと。迷わせてもらえる時間があるのであれば迷えるだけ迷ってみようかなと」
悩み抜いた2年半でたどり着いた答え
平昌からおよそ2年半。竹内は自分と向き合うため一度、競技から離れることを決意した。
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「夏のスポーツだったり、スキューバダイビングだったり、いろんな学びの時間をつくったり、本当に内容の濃い2年半を過ごさせてもらって、すごく楽しくて。このままフェードアウトして引退でもいいのかなと思う時期も正直あった」
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様々な経験を重ねる中、竹内の心境にある変化が。そのきっかけのひとつとなったのは、「楽しく学んでもらえたら」と故郷を拠点に自身でスタートさせたスノーボードキッズの育成プロジェクトだった。
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「子供たちって本当に素直で純粋にどんどんいろんなことを吸収していくので本当に楽しんでやっている姿、ああいう姿って本来大人の私たちも持っているはず。子供たちと一緒に居ることで違うところに本当は楽しみ方ってあるんだなと気付かせてもらった。180度違う側の世界を見て気付くこともたくさんありますし戻った時に雪上が仕事ってすごく良い環境というのを改めて感じさせられました」
競技を離れたからこそ感じたスノーボードへの純粋な気持ち。そして悩み抜いた2年半でたどり着いた答えが現役復帰だった。
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「どんな結果になっても良かったと思える自信がある。そのゆとりが楽しい。もう6大会ですからね。人生のほとんどだよ」
五輪6度目の挑戦に込めた思い
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「復帰した時の楽しさ。この気持ちはここ10年、20年持っていなかった気持ち。その楽しさと勝ちたいという気持ち、この2つの感情をうまくコントロールしてスタートに立てたら面白い五輪になるんじゃないかと思っています」
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変化した五輪への向き合い方。竹内智香、6度目の挑戦が始まろうとしている。