タイ政府は1月9日から、感染が拡大しているのを受けて国内の多くの地域でレストランの店内での飲酒を禁止とする措置を始めた。

一方で対策の強化を緩めている地域もある。観光エリアとしている「バンコク」「カンチャナブリ」「クラビ」「チョンブリ」「ノンタブリ」「パトゥムタニ」「パンガー」「プーケット」では、感染対策の基準を満たした飲食店で午後9時まで店内飲酒が許可される。これまで時間制限なしだったため、対策を強化したものの、時間制限はしつつ、飲酒できるとの措置にとどめた。

この地域は観光を生業としていて、人も多いことから感染者も多い地域でもある。しかし、この2年間で疲弊している観光業を政府も見捨てることはできない。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、タイ政府は対策を緩和するのか、強化するのか、中途半端といえる対策に舵を切ったともいえる。水際対策についても同様である。

タイ政府は、9日から店内での飲酒を禁止、ところが観光地は“緩和”されているという。
タイ政府は、9日から店内での飲酒を禁止、ところが観光地は“緩和”されているという。
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タイ政府は11月から日本を含む63の国と地域からの旅行者を対象にワクチン接種完了などを条件に入国後の隔離措置を免除していたが、12月に申請の受付を停止。今回、停止期間の延長も決まり、再開時期も未定だ。

一方でタイではサンドボックスという制度がある。ワクチン接種済みの旅行者がサンドボックスの対象地域内で7日間過ごす場合は入国時の隔離が免除されるというもの。(備考:72時間前までのRT-PCR検査の陰性証明、50000米ドル以上の保険契約、7日分のホテル予約などが必要)

その対象地域について現在は「プーケット県」に限定されているが、1月11日から「スラタニ県のサムイ島、パンガン島、タオ島」「パンガー県」「クラビ県」を指定地域に加えることが決まった。ほとんどが観光地である。

2019年には4000万人にのぼる外国人が訪れた観光立国のタイ。GDP=国内総生産のおよそ2割を占めるほど観光業への依存度が高いためである。

タイの1日あたりの新型コロナの新規感染者数は1月4日2967人、5日1月3730人、1月6日5560人、1月7日7178人と急増している。感染力の強いオミクロン株が広がっているとみられる。

「観光業の疲弊」と「感染者の急増」のなか、イギリスほどの規制緩和はできず、中国のようなゼロコロナも難しい。タイ政府の苦悩はしばらく続きそうだ。

国際取材部
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