ロンドン東部にあるMen in Shedsへ取材に

イギリスは2018年に世界で初めて孤独担当大臣を設置し、孤独対策に取り組んできた。

その一環として、定年退職などで社会とのつながりを失い孤独を感じている人たちが、木工作業などを通じて交流する「Men in Sheds(男たちの小屋)」と呼ばれる場所がある。

イギリス国内にはおよそ600もの「Men in Sheds」があり、廃材などを使って様々なものを作り、地域の公園や近隣の小学校などへ作った物を提供している。

イギリス国内にはおよそ600もの「Men in Sheds」がある
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私たちは「Men in Sheds」の取材のために、ロンドン東部のベクスリー(Bexley)という街に向かった。教会に隣接する小屋の中で、棚、ベンチ、カップボード、鳥小屋など、集まった人たちがそれぞれ製作に取り組んでいた。

廃材などを使って様々なものを作り、地域の公園や近隣の小学校などへ作った物を提供している

人生で大きな変化を経験した人たちがものづくりの技術を共有

ベクスリーでMen in Shedsの運営に関わるチャリティー団体「Age UK Bexley」のエミリー・ウィリー(Emily Willey)さんは、「人生の大きな変化を経験した人が多く、同じ目的を持って仲良く活動している」と話す。

エミリーさん:
Men in Shedsでは年齢も性別も関係なく参加できますが、多くは仕事の引退やパートナーの喪失など、人生で大きな変化を経験した65歳以上の男性が参加しています。現在、この施設には男女27人の登録者がいて、入会の順番待ちをしている人たちも多くいます。

チャリティー団体「Age UK Bexley」の エミリー・ウィリー(Emily Willey)さん

「ものづくりについては、どんな技量の人でも参加することができて、彼らはお互いにスキルアップするために教え合います。彼らは同じ目的を持って集まっているので、とても仲がいいです。自分の好きなものを作っている人もいますし、地域の人々が望むものを作っている人もいます。そして私たちは彼らが作業を安全に行うことができる場所を提供しています」

banterがある場所。人と会うためにここに来ている。

Men in Shedsでものづくりを楽しむ人たちに話を聞いてみた。

「私は妻を亡くしてここに来ました。私たちはここで一緒に働いています。みんな友達です。
ここには“banter”がある。人生それがすべてさ。不幸になるにはまだ早すぎる!」

「不幸になるにはまだ早すぎる!」

「妻に先立たれ、子供が独立しても、家の外の時間が大半だったから、寂しくはなかった。
でも定年退職してからは、ほとんどの時間が家での時間になり、やることが見つからなかったんだ。友達にMen in Shedsを紹介されてから、ここから離れられなくなったよ!今はここに来て、仲間と“banter”をするのが楽しいんだ!」

仲間との「banter」を楽しむ男性たち

人々の繋がりこそが幸せの基盤

取材中、Men in Shedsのいろいろなところから、「banter」という単語が聞こえてきた。彼らは笑顔で、とても楽しそうだった。

「banter」とはイギリス人がよく使う言葉だ。日本語に訳すると「からかい、冷やかし、冗談の言い合い」などとなる。

私は3カ月前、カメラマンとしてロンドンに赴任し初めてこの言葉を知ったが、身近でよく耳にする。

同僚、近所の人、一緒にサッカーをしている仲間。イギリス人は会話の端々に「banter」を散りばめてくる。真面目に話をしていると思いきや、途中から冗談に変わっていて、最後は笑いで締める、といった具合だ。

イギリスでは新型コロナウイルスによるロックダウンを経て、性別や年齢層を問わず孤独や孤立はさらに大きな問題になりつつある。ダイアナ・バラン孤独担当大臣は「孤独の問題は現在、危機的段階にあり、これまで以上に行動をとることが重要だ」としてSNSのWhatsAppなどと協力し、コミュニティの孤立問題を解決しようと取り組んでいる。

人々のつながりこそが社会の安定や幸せの基盤になる。

イギリスで人とつながりたいと思う気持ちに応える場所 Men in Sheds。

「ものづくり」と「banter」で第二の人生を楽しむ人たちを取材し、イギリスの孤独対策の一端を知ることができた。

【執筆:FNNロンドン支局 一文字哲也】

一文字哲也
一文字哲也

FNNロンドン支局 カメラマン

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