2021年12月にオープンした長野市のこども食堂。腕を振るうのは、1人の息子を育てるシングルファーザー。同じ境遇の親子にも利用してほしいと、「朝食専門」の食堂を開いた。
子どもも大人も集える「こどな食堂」
長野市平林の生花店。その奥で…大人と子どもが食事をしている。
ここは12月にオープンした朝食専門のこども食堂。子どもも大人も集えるようにと、「こどな食堂」と名付けられた。
利用者：
アットホームな感じで食事ができるかなと
オーナーは窪田義浩さん（42）。
こどな食堂・窪田義浩さん：
一緒にご飯を食べることで少し笑顔になって、学校に行ってもらいたいと
父子家庭の立場から決意…集まって食事ができる場を！
こどな食堂・窪田義浩さん：
旬シェフ、じゃあ持って
長男・旬くん：
はぁー
こどな食堂・窪田義浩さん：
なんだ、そのため息は（笑）
手伝うのは小学4年の息子・旬くん。食堂は2人の「居場所」でもある。
窪田さんの本職は「大工」。18歳でこの道に入り、12年前に独立。今や小さな工務店の社長だ。
午後6時…仕事を終えて、アパートに戻った窪田さん。慣れた手つきで夕食の準備をする。
こどな食堂・窪田義浩さん：
待て。いただきますしてから
2人だけの夜。窪田家は父子家庭だ。
窪田さんは元々、妻と2人の子ども、4人で暮らしていた。
しかし5年前に離婚。以来、旬くんと2人で暮らしている。
（Q.どんなお父さん？）
長男・旬くん：
優しい。ごはんを毎日、作ってくれるからうれしい
取材クルーに明るく振舞ってくれた旬くん。でも、心の片隅では…
長男・旬くん：
（当時は）寂しかった。
（Q.今は？）
今もですね
こどな食堂・窪田義浩さん：
長い間、寂しい思いをさせてきてしまったというのは申し訳ないじゃないですけど、つらい思いをさせちゃったなと
旬くんのためにも、窪田さんは「こども食堂のような、集まって食事ができる場が身近にあれば」と思うようになったが、機会に恵まれなかった。
こどな食堂・窪田義浩さん：
そういうところがあったらいいなと思ってたんですけど、全部、時間帯がバラバラで曜日もそれぞれだし、月のペースもそれぞれだし、父子家庭の立場からいえば使いにくい
ならば、自分で…
12月10日、オープン当日。
開業を決めたのは2021年の秋。自身の経験から、親も仕事に出る前に寄れるようにと「朝食専門」にした。
2人の朝食も食堂で取ることにし、365日開けることに。旬くんもこれからは早起きの日々だ。
こどな食堂・窪田義浩さん：
前から10日（オープン日）から5時起きだぞと言ってある
長男・旬くん：
大変、起こされても寝ちゃうときがあるから
こどな食堂・窪田義浩さん：
パパが寝坊したら起こせよ
支援の輪が広がって…
トントン拍子で食堂をオープンできたのは、強力な支援があったから。
社会奉仕の団体で知りあった生花店の社長・返町とも子さんが考えに共感し、店の一角を提供してくれたのだ。
花ボケー・返町とも子社長：
自分の目的に向かって絶対よそを振り向かないで、やるぞと決めたら真っ直ぐ進む。すごいと思う、応援したくなる人
支援は他にも…
この日は小川村の農園へ。畑では無農薬・有機栽培の野菜が栽培されている。
こどな食堂・窪田義浩さん：
みそ汁に入れても大丈夫ですか
農家：
みそ汁に入れてもおいしいですよ
「安心・安全な食材を」と、野菜はこの農園から仕入れ、安く提供してもらっている。
続いて訪れたのは、小川村の宮永正浩さんが営む養鶏場。
安心・安全で栄養たっぷりの卵は、「天空の卵」として売り出されている。
宮永さんも取り組みに共感し、規格外の小さな卵を無償で提供している。
宮永正浩さん：
毎日、仕事もして、子育てもして、こども食堂もやるというのは自分じゃマネできないので、何か協力できればと
こどな食堂・窪田義浩さん：
感無量というか、うれしいですね。もうとことんやるしかないと
「心のよりどころに…」
利用者：
みんなで話すことによって、笑顔で仕事に行ける
支援を受けながら動き出した「こどな食堂」。まだ利用者は少なめだが、窪田さんはやりがいを感じている。ここは窪田さん親子の居場所でもあるからだ。
こどな食堂・窪田義浩さん：
子ども（旬くん）を見ていればわかりやすい。今まで僕と2人だけで食べたのが（今は）楽しそう、あれが答えかなと
長男・旬くん：
やる気がでた、やる気。
（Q.学校、頑張れそう？）
頑張る、きょうも友達とサッカーやる
旬くんは学校へ…
シングルファーザー・窪田さんの挑戦が始まった。
こどな食堂・窪田義浩さん：
ここに来ればごはんはあるし、心のよりどころみたいな場所にしたい
営業時間は午前7時から8時半で、子どもは無料。（大人原則500円）
（長野放送）
