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東京・大田区、住宅街の中にさまざまな町工場がひしめく“ものづくり”のまち。そこを走る京急の高架下。一見、倉庫かと思いきや、自律移動ロボットが。この地で進む、ものづくりの新たなコミュニケーションの場とは。

京急梅屋敷駅と大森町駅の間の高架下に作られた“梅森プラットフォーム”。

入居しているこの町工場では、自律移動ロボットの車体の設計などを手がけている。実はこのロボット、2022年1月に開催される最新テクノロジーの見本市・CESで、イノベーション・アワードの受賞が決まっている最先端のロボットだ。

こういった革新的なものづくりのために欠かせないのが、対面での綿密なコミュニケーションだという。

自律移動ロボットの車体を設計 テクノロジーリンク 黒尾守社長:当然ですけど、物がない形、状態から始めますので、お互いのイメージのすり合わせ作業ですね。徐々に形に近づけていくというような作業をします。

自律移動ロボットを開発 ピエゾ ソニック 多田興平社長:『ここがぶつかるんだよ』『ここがまずいよ』というのは会って話した方がよくて、できた物が、失敗が減るというのが、大きなメリットだと思っています。

2人がロボット製作で活用したのが、気軽に立ち寄れる高架下のプラットホームだった。この高架下を、採算性の高い駐車場ではなく、なぜ町工場とクリエイターのコミュニケーションゾーンにしたのか。開発した京急電鉄は...。

京浜急行電鉄 生活事業創造本部・百々海仁さん:地元の大田区は、3000以上の町工場があるエリアなんですけども。そこの移転先が開発によって少なくなっている現状がありましたので、地域活性化、少しでもその礎を築けたらという思いでやってきました。

2年前にオープンし、今では3つの町工場とシェア工房などが入居している。そのほかに、トークイベントなどに利用できるラウンジやシェアキッチンもあり、ものづくりの楽しさを伝えるためのイベントも積極的に開催している。

このようなものづくりのための環境を整え、さまざまな出会いの場を京急電鉄とともにつくってきたのは、エリア開発などを手掛ける、アットカマタの茨田禎之さん。茨田さんは、このプラットフォームの最大の狙いは、クリエイターと町工場のコラボレーションの場を提供することだという。

2020年は、ここに集うクリエイターと町工場がアイデアを出し合いながら、遊具を作る企画が実現。対話しながらものづくりをすることで、さらに新しい発想が生まれると好評を得たそうだ。

アットカマタ 共同代表 茨田禎之さん:町工場も『すごく楽しかった』と言っていただいて。より多くの人を巻き込んで、あるいは巻き込まれて、活動が進んでいけたらと思います。

クリエイターと町工場が出会う新しいプラットホームが、日本のものづくりに新たな価値を生み出していく。

内田嶺衣奈キャスター:このニュースについては、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに話を伺います。こうした取り組み、とても素敵だなと感じましたが、松江さんは、どうご覧になりましたか?

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:そうですよね、本当にユニークな出会い、交わりだと思いますね。私は、交わるからこそ見える強みの再発見、ここに期待しているんですよね。まず、交わりという意味で言うと、鉄道の高架下と町工場、なかなか距離が遠いように思うんですけど、実は、高架下というのは、騒音の関係もあって、音に対して寛容な空間でもあるんですね。これが、町工場が入りやすい素地になっている。さらには、駅前で、多くの人が集いやすいということで、クリエイターとか地域の方々も集まりやすい。ここは、まさに高架下ならではの新しい交わり、これが非常に特徴的だと思うんですよね。

内田嶺衣奈キャスター:高架下が、そんな風に絶好の出会いの場になっているということ、私は知りませんでした。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:そうですよね。実は、町工場にとっても、高架下で色んな方と出会うことによって、大きなメリットがあるんですね。ひと言で言うと、強みの再発見があるという風に思うんですが、実際に、町工場の方々、今まで光が当たらなかったような、技術や職人の技も、こういったクリエイターや地域の方に、共有し可視化されることによって、今まで得られなかったような素朴な反応とか、新しいアイデアに出会うことができる。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:それによって、この技術も、他にも使えるかもしれないということで、強みの再発見につながる。こんな展開が出始めているんですね。実際に、細い穴を通すとか、球体のものを作るとか、焼き物の色使いとか、こういった伝統的な技術も、クリエイターの全く違う視点を通すことによって、新しい製品になっている、こんな事例も出始めていて、当たり前だと思っていた技術も、違う視点を通すことによって、強みの再発見につながる。これは大きなメリットだと思うんですよね。

内田嶺衣奈キャスター:そういった化学反応が起こることは、町工場だけに止まらず、メリットが大きそうですね。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:その通りなんですね。実は、大田区は、仲間回しという習慣があって、自分の町工場にできないものは他に回す、こんな風習があるんですけれども、今回のよう新しい技術も、他の町工場と一緒にやることによって、単に個別ではなくて、地域(まち)自体の強みの再発見になっていく。こんな展開も期待できると思うんです。こういった地域のために集ったメンバーが、それぞれ強みを再発見して、つながっていくことによって、地域の活性化につながる、こんなことに期待したいなと思います。

内田嶺衣奈キャスター:1つの視点だけだと見えてこなかった部分が、全く違った専門分野の人がキッカケとなって見えてくるというのは、とても興味深いなと感じました。小さな、そのキッカケを見落とさないためにも、日頃のコミュニケーションも大切にしたいですね。

(「Live News α」12月17日放送分)