新型コロナウイルスの感染拡大で、経済活動が落ち込んだことなどから、2020年度の国内の温室効果ガスの排出量が過去最少を更新した。

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環境省の発表によると、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの2020年度の国内排出量は11億4900万トンで、前の年度から5.1%減った。減少は7年連続で過去最少を更新している。

温室効果ガスの9割を占める二酸化炭素の排出量が産業部門や運輸部門などで減少していて、コロナの影響で経済活動が大幅に落ち込んだことなどが要因だとしている。一方、自宅で過ごす時間が増えたことから家庭部門の排出量は増加しているという。

内田嶺衣奈キャスター:このニュースについては、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんにお話をうかがいます。コロナによる影響というのがありながらも、温室効果ガスの排出量が過去最少にということですが、松江さんは、このニュースをどう見ていますか

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:はい、大事なのは、一過性に終わらせずに、将来、2030年とか2050年と言った、長期に渡って、いかに持続できるか、ここにあると思うんです。これからは、脱炭素というのを、産業の競争力に結びつけていく、成長のシナリオ、これが求められると思うんですが、そこにおいて私は、ヒントになるのは、実は、日本の強みである「資源生産性」、ここに着目することにあると思うんです。

内田嶺衣奈キャスター:「資源生産性」というのは、どういったものなんでしょうか?

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:はい、これは、少ない資源で、いかに付加価値を生み出すか。GDPを、天然資源の投入量で割ったような指標、これを言うんですが、実は、日本は、OECDの中で、第5位ということで、20年間に渡って、欧米を上回る水準を維持した、ある種、日本の強みでもあると思うんですね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:背景には、長持ちしたりとか、ある種、省力化するような、消費者の品質の意識の高さとか、それに応えるような省エネとか省力技術、この物づくりの力、これがあって、将来に渡っても、日本の強みになりうる技術だと思うんですね。

内田嶺衣奈キャスター:そういった強みがある一方で、課題と言えば、どういうことがあげられますか?

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:はい、まさに脱炭素化に向けては、資源生産性の入口である、資源のあり方、ここに課題があると思うんです。日本は、1次エネルギーの88%は石化燃料に依存していますし、また、その大半は輸入に依存していてコストが高い、ここが、まさに脱炭素化の中ではネックになってくる課題だと思うんですね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:言わば、日本では、資源から付加価値を生み出す出口のところは強いんだけれども、資源そのものの入口のところに課題がある。この克服が課題だと思います。

内田嶺衣奈キャスター:その課題、どうやって乗り越えていけばいいんでしょうか。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:はい、ここはひとえに、入口の資源を、いかに脱炭素化できるか、そのための代替エネルギーの技術開発、ここに尽きると思うんですね。具体的には、水素であるとか、アンモニアであるとか、CO2を地中に埋め込むようなCCUS、こういった技術をいかに投資をして、実用化できるか、ここが生命線だと思うんです。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:日本では、まさに入口の脱炭素化、ここを実現することによって、強みである出口までつなげて、脱炭素化された資源生産性を高める好循環を作っていく、ここに活路を見いだしていく必要があると思います。

内田嶺衣奈キャスター:代替エネルギーの開発というのは、莫大な資金と労力がかかると思います。この課題を乗り越えていくために、企業同士の連携や官民一体となったサポート体制の構築なども、今後、必要なように思います。

(「Live News α」12月10日放送より)