たくさん遊んだ後のお片付けは面倒でやる気が出ない子も多いことだろう。そんな「お片付けをしない」という親の悩みを解決してくれそうなおもちゃ箱が、Twitter上で「かわいい」と話題になっている。

それが普段はITエンジニアとして働くlaniusさん(@lanius)が作った、“歩くおもちゃ箱”だ。

歩くおもちゃ箱
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ガッシリとした昆虫のような6本の脚が付いたおもちゃ箱で、投稿された約40秒の動画では、まるで女の子と一緒に散らかったおもちゃのお片付けをしているようだ。ちなみに動画に出てくる2人の女の子はlaniusさんの娘さん。

歩くおもちゃ箱とお片付けする長女

おもちゃ箱は前後に進むだけでなく、長女がおもちゃを拾っている間には「まだー?」と待っているかのように上下に屈伸運動のような動きも。また、次女に引っ張られている際には「やめてー」と逃げようとするかのように脚をばたつかせたりと、かわいらしい様子を見せてくれている。

次女に捕まったおもちゃ箱

まるで生き物のようなこのおもちゃ箱にはTwitterでも「かわいいペットみたいです」「我が家にも欲しい」「お片付け楽しそう」といったコメントが寄せられ、1万8000のいいねが付く話題となっている(12月7日時点)。

「心がある」と感じられる人工物を作りたい

laniusさんが「歩くおもちゃ箱つくった。これで少しはお片付けが楽しくなるかも?」と投稿の際にコメントしているように、こんなかわいい仲間がお片付けを手伝ってくれるのならば、少しはやる気が出てくるかもしれない。

では実際、このおもちゃ箱で娘さんたちはお片付けをしっかりするようになったのか? laniusさんに話を聞いてみた。


ーーなぜおもちゃ箱に脚を付けようと思った?

もともと「心がある」と感じられるような人工物を作りたいと思っていました。私自身が最初は簡単なデジタル生物やペットロボットを作ったり遊んだりしていたのですが、毎回飽きて使わなくなってしまいました。あるとき、これは人工物に愛着や「心がある」と感じないから使わなくなるのではなく、使わないから心を感じるようにならないのではないかと思うようになりました。そこで、飽きに関係なく、日常で使い続けられるような、生活の役に立つ人工物を作ろうと思ったのがきっかけです。

いろいろな身の回りのものに脚をつけていたのですが、今回はおもちゃ箱が目に留まり、子どもがなかなかおもちゃのお片づけをしないという課題に着目して、動かすことで解決してみようと思いました。

子どもがお片付けをしないことから誕生

ーーどうやって脚を付けたの?

おもちゃ箱はもともと自宅にあったものを使っています。動かしたいおもちゃ箱に接続できるような脚をコンピューターで設計し、必要な部品をそろえて組み立てます。本体との接続部品や脚の構造部分などオリジナルのパーツは自宅の3Dプリンターでプリントしています。実物を動かす前に、物理シミュレーターを活用して動きのデザインや制御の試験をしています。


ーー制作期間はどれくらい?

おもちゃ箱は3、4日程度で開発しました。脚をつけた家具・家電は過去に何度か作っており、ツールやフレームワークが整ってきたので、比較的スピーディーに作ることができます。はじめて作ったときは半年くらいかかっていたと思います。金額ですが、モーターやコンピューターなどの材料費を合算すると10万円くらいになります。

お片付けというよりはぬいぐるみを入れて遊んでいる?

ーー本当に生きているかのような動きだけど、どうやって動いているの?

まだ開発中なので、大半はリモコンで動かしています。「ゆっくり前に進む」「すばやく旋回する」といった大まかな指示を出すと、あとは自動で適した歩行のパターンを生成して歩いてくれるようになっています。ゆくゆくはおもちゃ箱の意思で自律的に動けるようにしたいと思っています。

「遊びたーい」と子どもたちからは好評

ーーこだわった部分はどこ?

少しでも「心がある」と感じられるように、生き物に近い雰囲気や、生き物らしい動きの多様さを表現できないか試行錯誤しています。

例えば、動画では少しわかりにくいのですが、同じ移動でも1人目の子どもに接近するときと2人目の子どもに接近するときで脚の使い方を変えています(前者ではより大胆に素早く、後者では細かく繊細に動かすようにしています)。

これも基本的にはリモコンでの指示です。ただし「動きを変えよ」と明示的に指示しているというよりも、指示した移動速度の大きさによって歩き方が自動的に変わるような仕組みを取り入れています。

このあたりは実際の生物にも学びながら検討しています。

次女も興味津々

ーー子どもたちの反応は?

まだ開発中なので子ども部屋で常に稼働しているわけではないのですが、動かし始めると「(おもちゃ箱と)遊びたーい」と言って中におもちゃを入れたがります。


ーー出来栄えの感想を教えて。

本当に便利になるか、楽しくお片づけできるか、半信半疑だったのですが、子どもの反応がよくてよかったです。

「遊びたーい」と子どもたちには好評

ーー現在、歩くおもちゃ箱はどうしているの?

遊んだり改造したりしながら次の開発に活かすための知見を貯めています。


ーー投稿には多くの反響があるが、それに対してはどう感じている?

賛否含めていろいろな反応をいただけるのが楽しいです。わたし自身が「こういうものが家にあったらいいのに」と考えて作ったものなので、「かわいい」「ほしい」などポジティブな感想に対しては「やっぱりそうだよね!」と嬉しく思います。また「わたしだったら〇〇を動かしたい」といったアイデアをコメントいただけるのは非常に刺激的です。

歩くおもちゃ箱

生活を快適に、楽しくできる物に脚を

laniusさんは今回のおもちゃ箱の他にもさまざまな日用品に脚を付けている。「心がある」と感じられるような人工物を作るため、「一見すると動かないことが当たり前だけど、実は動いたら生活を快適にしたり楽しくできそうなもの」に脚を付けているのだそう。


ーー今まで制作した中でどれが一番、脚をつけたら便利だった?

十数体作ってきましたが、「歩く踏み台」は結構実用的なのではないかと思っています。特に小さなお子さんのいるご家庭ですと踏み台を用意したり動かすシーンは多いのではないでしょうか。


ーー今後もいろんな日用品に脚を付けていく?

身の回りにあって動いたら便利そうなものは何でも動かしてみようと思っています。

歩く踏み台

愛嬌のある動きをする歩くおもちゃ箱は、子どもにとって一緒に“片付けをする”というよりも“遊んでくれる”存在となっているようだ。楽しく遊びながら部屋をキレイにできるとなれば、一石二鳥でおもちゃ箱としてもうれしい結果となったのではないだろうか。

次はどんな物に脚を付け、かわいらしい生き物を誕生させてくれるのか楽しみだ。