自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家に寄せられたのは、こんなエピソード。
「おもちゃで遊ぶとき、必ずおもちゃ箱をひっくり返してすべてのおもちゃを出してしまう。そして遊び終わったらそのまま出しっぱなしに…どうしてこうなっちゃうの?」
毎日の遊びタイム、ちょっと目を離した隙に部屋の中がおもちゃだらけに!
すぐに使うおもちゃだけ出してくれたら、お片付けが楽なのに…と思ってしまうけれど、どうしていちいちおもちゃ箱をひっくり返して全部出しちゃうの?
そして「遊んだらお片付け!」と口を酸っぱくして注意しても、散らかしっぱなしのおもちゃを片付けるのはいつもパパママ…どんな風に伝えたら楽しくお片付けしてくれるの?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
おもちゃを出すと「視覚的に満足」できる?
――おもちゃを全部おもちゃ箱から出しちゃう!これってどうして?
子どもがおもちゃをとりあえず全部出したがることはよくあります。大人からしたら「夕食までにわずか30分しかないのに」「遊びきれない量を散らかして」と感じますが、気の赴くままに広げてしまうんですよね。
おもちゃで遊ぶ年頃の子では、まだ時計を見て行動するというような時間の感覚が身についていませんので、遊べる時間がわずかであろうがおかまいなし。出すのに時間がかかって、広げたらタイムオーバーなんていうこともあるかと思います。これが起こる理由としては、
・とにかく全部出して視覚的に満足したい
・箱から出すこと自体が楽しい
・全部見てから、何で遊ぶかを決めたい
など色々と考えられます。わくわく感や喜びなどのポジティブな感情とつながっている点で共通しています。
対策としては、収納する箱を小さくするというのはまずできる工夫だと思います。大きな箱にたくさんのおもちゃを詰め込んでいると、どうしても全体像を見たくなるので、ひっくり返す箱自体を小さくしてしまうわけです。手ごろな大きさの箱を決め「とっておきのおもちゃ箱」なるものを作ろうと持ちかけ、そこに入るだけはOKとするという感じです。
また、もしおもちゃが多すぎるかもという場合、パパママから見て、最近明らかに使っていないおもちゃをこっそりと別箱に収納してしまうのもいいかもしれません。
その際、子どもに「どうする?」と聞くと、十中八九「遊ぶからしまっちゃダメ」と言われるのがオチなので、一緒にいないときに整理するのがいいと思います。
子どもたちからすると、「これとこれを使って遊ぼう!」と決めてからおもちゃ箱に手を伸ばすのではなく、そもそも「おもちゃを箱から出す」こと自体が楽しい遊びのひとつになっているのかも。
また“おもちゃコレクション”がたくさんあるのも、おもちゃ箱をひっくり返して「確認」したくなる理由のひとつ。次々おもちゃを買ってしまって、実はあんまり遊んでいないものがありそう…というパパママは、よく遊んでいるおもちゃだけを選抜した「とっておき箱」を作ってみると、遊びの時間のたびに部屋がおもちゃの海に…という状態を回避できるかもしれない。
「お片付けして!」はあいまいすぎる?
――遊んだおもちゃはすぐにお片付けする…このルール、子どもたちが守れるようになるのは何歳ごろ?
お片付けは、教えてあげないといつまでも学ばないけれど、教えたところですぐにできるようになるわけではないという難しさがあります。大人でも片付けベタな人はいますよね。正直、ママが自分で片付けた方が、よっぽど早いし完ぺきなのですが、親がいつまでもやってあげてしまうと、その力が身につきにくくなってしまいます。
幼少期のおもちゃのお片付けは「片付けとはどういうことか」を感覚的に学ぶプロセスですので、少しずつでいいので取り組み続けることが大事になります。
ただ、2~3歳くらいの子では、まだまだ自分で片付けるのは難しいものです。ママやパパと一緒に取り組み、できたらほめるということを繰り返していくのが、この時期にできる働きかけと言えます。それにより、幼稚園から小学校にかけて段々と上手にこなせるようになっていきます。
とは言っても、ママからしたらまだまだ完ぺきではないかもしれませんが……。それだけ“お片付け”というのは習得が難しいのです。長い付き合いを覚悟の上、できているところからほめて伸ばしていけると、時間をかけて取り組んでいけるでしょう。
――じゃあ、どんな声掛けをしてお片付けを覚えていくのがいい?
「お片付け」という言葉は、実はとてもあいまいです。大人であれば「片付けて」と言われれば、床にあるおもちゃをすべて収納することだと理解できますが、子どもにとってはブロックを2~3個だけ箱に入れる程度のことを意味しているかもしれません。
ですので、もし今、お片付けで悩んでいたら、「うちの子は、お片付けができないのではなく、その意味が伝わっていないのかも」という視点でぜひ状況を一度見直してみてください。
このような「あいまい語」は、それ単独では使わずに、具体的に何をすればいいかも加えていくようにするのがポイントです。
「床にあるお人形を全部ここに集めよう」
「ママは青のブロック、○○ちゃんは赤のブロック、よーいドンしようか」
このように子どもが理解できる語彙で伝えてあげてください。そして、それができたらしっかりほめていきます。このような働きかけを根気よく続けていくことで、「お片づけ」という複雑な言葉の意味を次第に理解していくようになります。
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※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)