緊急事態宣言が全面解除されて早2カ月が経ったが、酒を飲みながら仕事仲間とコミュニケーションする機会は戻ってきただろうか? または、忘年会などの予定があるだろうか?

しかし今、日本生命保険相互会社の調査で、いわゆる「飲みニケーション」が不要だという声が初めて過半数を超えたことが分かった。

出典:日本生命保険
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日本生命保険は、2017年から「飲みニケーション」の調査を毎年続けており、今年は緊急事態宣言が全面解除された10月に、男女7774人がインターネットでのアンケートに答えていた。

11月17日に発表した結果は、「飲みニケーション」を「必要だとする人」(必要/どちらかといえば必要の合計)は38.2%。「不要だとする人」(不要/どちらかといえば不要の合計)は61.9%だった。

昨年は必要派の合計が54.3%、不要派が合計45.7%で、これまではずっと必要派の方が多かったが、今年は初めて不要派が上回ったというのだ。

男女別にみると、不要派は男性が55.8%だったのに対し、女性は67.8%と12ポイントも多かった。
 

出典:日本生命保険
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年代別では、不要派が最も多いのは20代までの若者で66.1%。それに続くのは60代以上で63.7%だった。逆に必要派が多かったのは30代で39.8%、50代が39.7%だったが、全年代で不要派の方が多かった

また必要派にその理由を聞くと、最も多かった答えは「本音を聞ける・距離を縮められるから」だったが、不要派の理由で最も多かったのが「気を遣うから」と、意見の食い違いが浮かび上がった。

飲みニケーションが苦手な人も…(画像はイメージ)
飲みニケーションが苦手な人も…(画像はイメージ)

「飲みニケーション」については、これまでも肯定的・否定的な様々な意見があり、編集部でもたびたび取り上げてきた。

参考記事:“飲みニケーション”を20代の過半数が「役立つ」と回答…意外な結果のワケ
4人に1人が「お酒を飲まない」時代に...誰もが楽しめる飲み会の“ルール”はある?

今回の調査は緊急事態宣言が全面解除された直後に行われている。感染予防で会社の飲み会がなかった期間を経てとなると思うが、コロナ禍がどのような影響をもたらしたのか?

また、不要派が増える「飲みニケーション」は今後どうなるのか? 担当者に聞いてみた。

必要派激減のワケは「昭和型」が考えを変えた?

――なぜ「飲みニケーション」の必要派が減っている?

「飲みニケーションは必要か?」に対する「必要」の割合を、以下のように5年前まで遡って時系列でみると、昨年までは比較的緩やかな減少傾向にあったものが、昨年から今年にかけては急落しています。

2021年:38.2%
2020年:54.3%
2019年:57.3%
2018年:53.6%
2017年:62.0%

飲みニケーションという表現には、単に職場の同僚との親交を深めるというだけでなく、職場の人間関係に対して、家族主義的な価値観からなる全人的(身体・心理・社会的立場などあらゆる面)な関わり方を求め、密接な関係構築を目指す意図を含んでいるようにも受け取れます。

リモートワーク+コロナ禍で会食自粛の生活が1年半にわたって続いたことで、仕事上のコミュニケーションを円滑に進めるための工夫を重ねるなか、コロナ以前にはアルコールを介した全人的なコミュニケーションを求める、いわば「昭和型」の働き方を必要悪として受け入れてきた方々も判断を変えることになったのではないかと思われます。


――女性に「飲みニケーション」を不要とする人が多い理由は?

不要とする理由の最上位にあげられる「気を遣うから」は、男性に比べ僅かながら女性の方が高くなっています。こうした意識の違いの背景には、周囲や女性自身のなかで、気遣いを求める(求められていると感じる)意識が根強く残っていることがあると思われます。

出典:日本生命保険
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また、家事負担が女性に偏る状況が続いているとすれば、就業時間外も忙しい女性にとって、上司や同僚とのコミュニケーションは職場の中で十分であり、時間外まで対応を求められたくはない、という考えもあるのではないでしょうか。男女を問わず勤務時間以外のプライベートの生活の充実を志向する方も同様かと思われます。

強制参加の飲み会は時流にそぐわないと淘汰も

――「飲みニケーション」の今後はどうなっていく?

就業時間外に事実上の強制参加となるような飲み会は時流にそぐわないものとして淘汰されていくことになるものと思われます。仕事を円滑に進める上では、上司や同僚との相互理解を図ることが重要であることに変わりはありませんが、勤務時間中の通常のコミュニケーションのなかで創意工夫をこらしていくことが求められるでしょう。

一方で、「飲みニケーション」自体はむしろ、社内外を問わず気のあう方同士が親交を深める機会の一つとして、続いていくのではないでしょうか。

こんな状況がなくなるかもしれない(画像はイメージ)
こんな状況がなくなるかもしれない(画像はイメージ)

これから忘年会や新年会と「飲みニケーション」の大イベントが続くが、オンライン飲み会という方法も使われるだろう。ちなみに日本生命保険の調査では、職場の人とオンライン飲み会をした人は、わずか9.3%しかいなかった。

仕事仲間との大人数の忘年会は、このまま衰退してしまうかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。