コロナ禍で度重なる飲食店への休業や時短要請を受け、消費が落ち込んだ清酒業界は、今なお厳しい状況が続いている。
そんな中、愛媛の老舗蔵元は「海外」と「若者」に期待を寄せている。

日本酒は、新酒の季節。2020年に創業100年を迎えた西条市の老舗の蔵元「石鎚酒造」でも…

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石鎚酒造のスタッフ:
だいぶガスが、炭酸ガスが出てきてますね。まだ、仕込んで6日目なんですけど、だいぶ流動化しまして、泡が徐々に上がってきています

冬の冷たい空気に包まれた酒蔵では、ことし採れた米で作る新酒の仕込みが本番を迎える。

新酒の仕込み作業
新酒の仕込み作業

愛媛県内では、新型コロナの感染が落ち着きを見せ始め、居酒屋などで酒を楽しむ人の姿も増えてきたが…

松山市の居酒屋「炙り家かんたろう」・多田晃弘オーナー:
日本酒をガンガン飲んでた人、そういう人がいないような気はします。お一人さまが飲む量は減ってるような気がしますね

進む日本酒離れ 酒造りの期間も短縮

実は、“日本酒離れ”が顕著になっている現状があった。

日本酒の国内出荷量は、ピーク時の1973年には170万キロリットルを超えていたが、近年、チューハイやリキュール、ウイスキーなど、ほかのアルコール飲料との競合などで減少傾向が続いている。

この落ち込みに拍車をかけたのが、新型コロナウイルスだ。
外食や酒類提供自粛の影響で、2020年は業務用の酒を中心に2019年より1割減り、約42万キロリットルにまで落ち込んだ。

2021年も、7月までの時点でさらに3%減少して、清酒業界にとって厳しい状況が続いている。

石鎚酒造・越智浩社長:
去年、100周年というひとつの節目の年でもあったんですが、コロナ前に比べて(出荷量が)2割~3割ダウンということで、作り手としては、お酒がコロナを増幅させてるようなイメージも少し出ていたのではないかと思うんですね

石鎚酒造・越智浩社長
石鎚酒造・越智浩社長

石鎚酒造・越智浩社長:
せっかくいいお酒が愛媛県下で造ってできている中で、それがお客さまにしっかりと受けとめていただいていない状況。それはすごくつらいし、残念

石鎚酒造は、出荷量がコロナ前の7割から8割程度に落ち込んだ。需要の減少に伴って、2021年の酒造りの期間は例年より1カ月短くなる見通しだ。

海外では好調 若者や女性もターゲットに

石鎚酒造・越智浩社長:
ただ、輸出の方につきましては、非常に明るい兆しも見えておりまして、前年の出荷量でいうと230%、出荷金額は260%ということで、海外では思わぬ好調ぶりが出ています。それが今、ひとつの希望の星ですね

海外市場で好調ぶりを見せる日本酒
海外市場で好調ぶりを見せる日本酒

実は、日本酒の海外への輸出量は、全国的に増加傾向となっている。
2020年は、新型コロナの影響で一時的に落ち込んだが、9月以降は、香港や中国などアジア圏を中心に輸出が急速に回復し、「輸出」金額は前年を3%上回った。

越智社長によると、特に人気なのが1本1万円の高価な日本酒だ。
愛媛産の酒米を極限の25%まで精米し、香り高く仕上げたスペシャルな酒は、日本食ブームを背景に、海外の高級レストランやホテルでの需要が年々増えているという。

また、愛媛県も県内の蔵元を支援しようと、「推し酒さがそ!キャンペーン」を12月からスタート。愛媛県内35の蔵元からお気に入りの酒 = 「推し酒」を見つけてもらおうという取り組みだ。

新たな日本酒ファンの獲得へ、ターゲットは、これまで日本酒になじみの薄かった若い世代や女性。

松山市の居酒屋「炙り家かんたろう」・多田晃弘オーナー:
県外のお客さんだったんですけど、愛媛の地酒を飲んで、「これ、おいしい」とか言って。「これ、どこで売ってますか? お土産に買って帰りたいです」とか、そういう話があったので、若い子だったんですけど、徐々にそういうふうに増えてきています

石鎚酒造・越智浩社長:
これからの日本酒のオピニオンリーダーは若い方、あと女性という結果が出ています

石鎚酒造・越智浩社長:
愛媛の酒らしい、愛媛ならではのお酒の開発もしていきたいと思っていますし、海外ですごく有名になって、日本でもブーメラン効果っていうんですかね、日本酒のイメージがどんどん上がって、日本酒がたくさん皆さんに愛していただくような状況になることを望んでいます

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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