新型コロナの影響で厳しい経営が続く、愛媛・松山市のバーが廃業した銭湯を舞台に新たな一歩を踏み出そうとしている。
「ここで100年商売を続けたい」
その思いとは。

廃業した銭湯で新たなビジネスに挑戦

こだわりのクラフトジンでつくるカクテルが売りの松山市一番町の「Bar MIYAO」。
オーナーの宮尾翔一さんは、愛媛県の要請を受けて、5月まで時短営業に応じていた。

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Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
現状、酒類提供午後7時までということで、お客さまは非常に少ない状況。正直なところ1日平均4~5人

バーテンダー歴18年の宮尾さんが、これまで想像もしなかった先の見えないコロナ禍。
松山の夜の街から明かりが消えた。

そんな中、宮尾さんは今、新たなビジネスに挑戦しようとしている。
松山市祇園町の路地裏にひっそりとたたずむレトロな建物。
創業66年、老舗の銭湯「祇園湯」。

燃料費の高騰や新型コロナによる先行きの不安から、2020年8月に廃業したこの「祇園湯」に、宮尾さんの姿があった。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
銭湯の形を残して、お酒とかグラス、お酒にまつわるいろいろ関連するものを販売できる店舗を作りたい。今の予定では、この銭湯のメインの浴槽の部分を底上げして、外のタイルは残して、ここにお酒を陳列させるイメージ

祖父が始めた銭湯…この場所で100年商売を

銭湯の雰囲気を残しながら、酒を提供する店舗にリノベーションしたい。
「銭湯」という形にこだわるのにはある理由があった。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
(祇園湯は)元々祖父が始めて、母親が継いで、僕の中で同じ場所で100年銭湯ができたらいいなと漠然と思っていたが、あと30年ちょっとできたら、この場所で100年商売ができるのでいいかなと今は思っている

実は、「祇園湯」を作ったのは宮尾さんの祖父・博視さんだった。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
僕自身も子どものころから銭湯によく来ていて、おじいちゃん家というところで。今、脱衣所の部分は壊してるが、思うところがあって、思い出が駆け巡る

コロナ禍のピンチの中、模索する新たなビジネスを、自分の思い出の場所を残す取り組みにつなげたい…そんな思いで決断した。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
声が反響するので、そこも工夫しないといけないが、このタイル張りのドーム型の天井は結構個性ある。しっかり残しつつ、天井部分は全部ガラスにして空まで吹き抜ける形にして「酒屋」みたいな感じにできたら

「銭湯」と「酒屋」、異色の組み合わせに宮尾さんの想像は広がる。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
店舗に強力な個性、ミスマッチな部分があった方が話題になるので、今回この店舗は「銭湯×バー×酒屋」というイメージで構築していこう、その辺でいい化学反応が起きれば面白い魅力ある店舗が作れるんじゃないかなと思っている

昭和レトロな雰囲気を残したデザインに

5月7日、祇園湯では工事が進められていた。
工事を手がけるのは、友人の大久保仁志さん。

大一合板商事・大久保仁志社長:
浴室はこちらが女風呂でこちらが男風呂。見ての通り、真ん中の仕切りがあったが、1回撤去して。撤去したといってもガラスブロックだったんで、1個ずつ手作業で外して裏に保管している

男湯と女湯を仕切っていたガラスブロックの壁は撤去する一方で、珍しいアーチ型の天井などはそのまま残す。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
銭湯の趣は残したいけど、かといって「銭湯に来たな」という雰囲気はあまりという感じで、まだ全然こんな状態だが、タイルとかかわいらしいので、壊さずにそのまま使おうと。ここにガラスブロックを敷き詰めて陳列台にしたり

カラフルなタイルが目を引く浴槽は、仕切りに使われていたガラス製のブロックを積み上げ「酒の陳列台」に生まれ変わる。

祇園湯の昭和レトロな雰囲気を残しつつ、時代に合わせたデザイン性も追及する。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
ちょっとずつ店舗の形ができつつある

大一合板商事・大久保仁志社長:
昔の自分が銭湯に入ってた時の感覚はどうなん?

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
浴槽とタイルの天井があるから

大一合板商事・大久保仁志社長:
懐かしい感じ?

宮尾さんにとって、銭湯は家族の歴史そのもの。
新たな店舗にも「祇園湯」の名前を残すつもりだ。

Bar MIYAO・宮尾翔一さん:
屋号は「GION」に。アルファベットで。頭に「バーテンダーセレクト」という店舗名で。残したいのが強い。

100年この場所で商売を。
宮尾さんの思いがこもった新たな「祇園湯」は、6月オープンする。

(テレビ愛媛)

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