11月19日、日本全国で「部分月食」が見られる。

そもそも月食とは、太陽・地球・月が一直線に並ぶとき、地球の影の中を月が通過することによって、月が暗くなったり、欠けたように見えたりする現象のこと。

引用:国立天文台
引用:国立天文台
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太陽光がほぼさえぎられた地球の濃い影を「本影」、その周りの薄い影の部分を「半影」と呼び、この「本影」に月の一部、あるいは全部が入った状態を一般的に「月食」と呼んでいるが、今回見られる「部分月食」は、地球の本影に月全体が入るのではなく、月の一部だけが入る現象のことを指す。

日本全国の地域で見られた前回の部分月食は、2017年8月8日。4年ぶりの現象になるが、実は今回の月食が一味違うのは、「とても深い月食」だということ。

月が地球の影の中に入り込む“程度”のことを「食分」と呼び、月食の場合は地球の影で覆われる月の直径の度合いで表され、その値が大きいほど影の中に月が深く入り込むことを意味する。
今回はこの「食分」が18時02.9分の段階で最大の0.978となり、月の直径の実に97.8%までが影に入り込むという。

月がまるごと地球の影に入り込む現象を「皆既月食」と呼ぶことはご存知だろうが、皆既月食にほど近い状態の部分月食が見られるのだ。

引用:国立天文台
引用:国立天文台

月食自体が日本全国で観測でき、さらに食分が最大になる瞬間がどこの地域でも見られる「とても深い月食」は、国立天文台によると、1881年12月6日以来実に140年ぶりのこと。

さらに月食が見られる時刻は16時18.4分から19時47.4分の約3時間29分。部分月食としては、これほど継続時間が長いものは1440年2月18日(日本では見られず)以来となり、長時間の天体ショーが楽しめる機会ということでも、注目されているのだ。

SNSではすでに当日晴れることを願う声や、前回の“スーパームーン皆既月食”が見られなかった人からの「前回は見られなかったから楽しみ」の声も挙がっているが、ぜひこの天体ショーを見てみたい!という人は、どんな点に注目したらより楽しめるのだろうか?国立天文台にお話を伺った。

いろんな要因が重なる珍しい月食

――改めて、今回の部分月食の特徴は?

今回の部分月食は、月がたいへん深く欠ける部分月食です。そして、継続時間が長い月食でもあります。

月が地球を公転する軌道はまん丸ではなく、楕円形です。このため、地球と月の間の距離は近くなったり遠くなったりします。そして、

地球に近い月…大きく見える。公転スピードが速い(地球から見た動きが大きい)
地球から遠い月…小さく見える。公転スピードが遅い(地球から見た動きが小さい)


などの違いが生じます。 今回の月食は、月が地球から遠い位置にある時に起こります(11月19日の満月は、2021年で2番目に地球から遠い満月です)。 このため月の動きが遅く、地球の影の中をゆっくりと進んでいくため、月食の時間が長くなるのです。

つまり、今回の月食は

・月が地球から遠い位置にある
・月食が起こる
・月がたいへん深く欠けるが皆既食にはならない
・日本から見られる


ということが重なっています。これだけの要因が重なることはなかなかなく、珍しい(同じような条件の月食は、なかなか起こらない)と言えるでしょう。


――「とても深い部分月食」は珍しいもの?


今回(最大食分0.978)よりも食分が大きく「日本全国」で食の最大が見られた前回の部分月食は、140年前の1881年12月6日(最大食分0.980)です。

次回は65年後の2086年11月21日(最大食分:0.992)に、ほぼ日本全国で見られます(南鳥島では食の最大が見られません)。

確かに今回のような「とても深い部分月食」が起こる頻度は多くはありません。しかし、これよりももっと月が欠け、地球の影にすっぽりと入ってしまう皆既月食は、日本では次回、2022年11月8日に起こります。皆既食の直前と直後には今回のような「たいへん深い部分食」の状態の月を見ることができます。
月食は、国立天文台暦計算室の『月食各地予報』で調べられます。長期データベースもあります。

2014年10月8日の皆既月食の際、皆既食になる直前に国立天文台・三鷹キャンパスで撮影されたもの。19日も食の最大時はこのように見える可能性がある(引用:国立天文台)
2014年10月8日の皆既月食の際、皆既食になる直前に国立天文台・三鷹キャンパスで撮影されたもの。19日も食の最大時はこのように見える可能性がある(引用:国立天文台)

東の空が開けた場所で観察するのがおすすめ

――月食を観察する際、こんな点に注目してみるべき・このようなものを用意しておくのが良い、というポイントは?

月は欠けていくにつれどんどん暗くなり、夜空の中で見つけづらくなっていきます。事前にしっかりと月の位置を調べておくと安心です。各地域での月食の見え方は、国立天文台暦計算室の『月食各地予報』で調べられます。

今回は、一部の地域を除き月が欠けた状態で昇ってきます。また、前半では月の高度が低いので、東の空が開けた場所で観察するのがおすすめです。双眼鏡などがあると月を拡大して見ることができます。持っている人は、ぜひ使ってみましょう。

多くの部分月食では、月の欠けている部分は暗くなっているだけで色がはっきりしません。しかし今回は、月がたいへん深く欠ける頃、月の暗い部分が皆既食のときのように赤黒く(赤銅色)見えるかもしれません。月の色の変化に注目してください。

ただし、昇ってきたばかりで地平線の近くにある月は、地球の大気の影響で赤っぽく見えます。詳しくは国立天文台公式サイトのよくある質問 『質問2-3)月が赤く見えるときがあるのはなぜ?』を読んでみてください。

昇ってきたばかりの月を見て、「今日は月食だから月が赤く見えるね」というのは大きな勘違いですので、ご注意ください。この「赤っぽさ」と、月が深く欠けた時の「赤黒さ」が全然違うものであることも自分の目で見て確かめましょう。

月食は、全く同じものは何一つとしてない、一期一会の現象です。この日の月食がどのように見えたのか、ぜひ、記録(記念)に写真を残しておきましょう。望遠レンズで月を拡大して撮影すると、月の欠けている様子がよくわかります。広角レンズで風景と一緒に撮影すると、その日の月食を自分がどのような風景の中で観察したのかを残すことができます。工夫すればスマートフォンのカメラでも撮影できます。

国立天文台公式サイトの『ほしぞら情報 11月19日は部分月食(2021年11月)』に掲載している『2021年11月19日 部分月食 解説資料』の『6-5. 月食は写真に写せる?』を読んで、撮影にチャレンジしてみてください。

引用:国立天文台
引用:国立天文台

最後に改めてスケジュールを確認しておこう。
月は11月19日16時18.4分から欠けはじめ、18時02.9分に食の最大を迎える。その後19時47.4分に部分月食は終わる。
部分月食は日本全国で観察することができるが、北海道や東北地方北部を除く地域では、月食の始まりは月が地平線の下にあって見られず、月が欠けた状態で空に昇ってくる「月出帯食」となるという。

すでに楽しみにしている人も多い部分月食。
ぜひとも観察にぴったりのよく晴れた夜になることを願いたいが、19日はぜひ双眼鏡を片手に、夜空を見上げてみてはいかがだろうか。

【ライブ配信予定】11月19日15時45分~
140年ぶりの「深い部分月食」&「ダイヤモンド富士」

FNNプライムオンラインでは、140年ぶりの天体ショーをライブ配信します。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。