全国各地で発生している「野良猫」問題。ここ数年で急激に数が増えたという北海道函館市では、小さな命を救うため、ある女性が立ち上がった。
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歴史と観光の街、函館市。夜景で有名な函館山の麓にある公園で住民を悩ませているのが…野良猫だ。
急増して住民を悩ませる"野良猫"
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通行人などに餌を与えられ、3年ほど前から急激に増えた。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん(68):
この下の植え込みに猫がよく来るんです。こういう風にここに来て、通りがかりの人が餌を置いていくので、ご飯を食べるんです
「にゃ~」
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立ち上がったのは68歳の女性。この春、野良猫問題を解決しようとボランティア団体を作った。ネコたちも地域に生きる仲間。命を奪うことなく、共存するために住民たちが動き出した。
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この春から猫たちの保護に取り組む山口純子さんと歩くと…
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
あら、アンちゃん
持ち込まれる餌…"ふん"問題も
ネコが増えたのは3年ほど前。通行人が餌をもってくるようだ。住民を悩ませているのが庭先での"ふん"。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
猫除けをしているから、いつも"ふん"をされているのかと
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近隣の住民:
(ふんが)もうすごかったです。ドアを開けたとたんにニオイが
そして残った餌を狙うカラスだ。
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山口さんたちのボランティア団体『陽だまり』では、ネコの保護と不妊・去勢手術を行っている。これまで保護したのは70匹以上。手術をした猫のほとんどを元の縄張りに戻している。
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「保護」「不妊・去勢手術」をして「戻す」
この活動は「捕獲(Trap)」「不妊・去勢手術(Neuter)」「元の場所に戻す(Return)」の頭文字をとった「TNR活動」と呼ばれ、野良猫問題が深刻化する全国各地で行われている。
不妊・去勢手術を終えた猫は、メスは左耳に、オスは右耳にV字型のカットを入れられて、元いた場所に戻される。
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活動の目的は、野良猫の命を奪わずに数を減らすこと。「陽だまり」では、不妊・去勢手術をした猫の一部に新しい飼い主を探し、引き渡している。
飼い主を待っているオス猫「ゆず」。函館公園から少し離れた地域で保護された。山口さんが部屋に入ると、かわいい声で鳴きだし、ケージの床にゴロン。
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まだ1歳にもなっていないようだが、かわいらしいしぐさで通行人に甘えることで、餌をもらっていたようだ。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
とっても『甘えん坊さん』なんです。これでも、きのう来たばっかりなんです。飼ってもらったら、すごくかわいがってもらえると思うよ、ね!
活動の最初のステップは、捕獲だ。
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地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
捕獲機のカバーは外した方が良い?
陽だまりのメンバーは地域の住民など約20人。ネコたちを観察し、性格に応じて作戦を変える。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
入口がここだと、捕獲機はこの向きの方が良い?
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ネコは"小梅"と呼ばれる1歳半から2歳のメスだ。すでに2回の出産を経験し、8匹の子どもの母親だ。
「バサッ! 」(捕獲機に入る)
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
OKです!
スタッフ:
ゴメン、大丈夫よ。大丈夫だからね
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
小梅、小梅、大丈夫!ごめんね!小梅ちゃん、アナタも次々に子どもを産むからね。なんとかしないとね
「捕獲」の次の課題は…
課題は手術にかかる費用だ。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
病院に連れていって手術をすると3万円以上かかります。オスでもやっぱり1万5000円から2万円近くまでかかる
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しかし、市内の動物病院が協力を申し出てくれた。費用は1万円ほど安く済むことに。
協力した獣医師は、野良猫の問題が見過ごせなかったと話す。
函館オオツ動物病院 小坂 唱 院長:
(野良猫の生活は)想像を絶する部分があると思います。感染症が流行し、目が"どろどろ"にやられたり、交通事故に巻き込まれたり、何百何千という子猫が死んでいます
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全国から寄せられる支援の気持ち
それでも足りない資金はクラウドファンディングを活用する。約2か月間で目標の倍、192万円が集まった。
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山口さんの活動の原動力はどこにあるのだろうか。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
おととしの11月まで、在宅で夫の介護を28年間。交通事故に遭い寝たきりだったものですから…。ちょうどこの部分にベッドを置いて介護をしていました。今は猫たちのスペースに。主人が亡くなってから
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そんな時に出会ったのが函館公園の野良猫たちだった。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
私らしく元気に生きていくために何かしようと考えて、以前からしていた野良猫の保護活動をしようと…。個人の活動は限界があり、仲間が集まって『陽だまり』を設立しました
2021年10月に、思わぬ援軍が現れた。
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山口さんの住む町内会が、『陽だまり』による猫の保護を正式な活動として認めてくれたのだ。
町内会も活動を後押しへ
青柳町町内会 蒲生 寛之 会長:
ネコが好きな人も苦手な人も、共存するための仕組みで、協力できることはないかと常々思っていました
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町内会としても、広報活動や募金箱の設置を行なうことになった。
「陽だまり」では、保護した野良猫を不妊・去勢手術後、元々いた縄張りに戻している。
しかし、活動はそれで終わりではない。
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毎日、猫の健康をチェック。餌を与え、その残りやふんもきれいに清掃している。飢えた猫が傷つけあったり、病気がまん延しないよう見守っているのだ。
保護した中でも特に人なれしていたり、病気などが理由で今後屋外生活が難しいと思われる猫には、新しい飼い主を探している。
「新しい飼い主」探しも
最初に訪れてから2週間。飼い主を求めていた甘えん坊の「ゆず」の姿は、団体の保護部屋にはなかった。すぐに新しい飼い主が見つかったのだ。
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しかし、そうしたケースばかりではない。
地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
左の眼はまったく見えていないんです
「クミちゃん」は4か月間、新しい飼い主が見つからない。
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地域猫保護猫活動グループ代表 山口 純子さん:
ここから送り出して、幸せな一生を送ってほしいと思います。ね? クミ、ね。がんばってるんだよね。病院にもちゃんと通ってるしね
無責任な餌やりが生む、野良猫たちの過酷な生活。
山口さんは訴える。
野良猫に「かわいい」「かわいそう」と餌を与えるなら、家の中で"死ぬまで飼育"をする覚悟と義務感が必要だと。
(北海道文化放送)