海底火山の噴火で出た軽石によって沖縄県で大きな影響が出ていて、静岡県内にも到達するおそれがあるという。
いつごろ到達し、どんな影響がでるのだろうか。火山学の専門家などを取材した。
原因は100年に一度の大噴火
沖縄本島から東に約360kmに位置する北大東島。その海岸を埋め尽くしていたのは、大量の軽石だ。

鹿児島・喜界島でも、海に起きた異変が捉えられていた。

海に漂う大量の軽石。海中から見上げると、海面が灰色に見える。

軽石が押し寄せたきっかけ、それは8月に噴火が確認された小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」にある。噴火で出た軽石が、1000km先の南西諸島に流れ着いたとみられている。
静岡大学・小山真人教授(火山学):
軽石というのは、マグマが急激に冷えて固まったものです。火山ガスは有毒成分が入っていますが、もう時間が経っていてガス成分は抜けているので、それほど危険なものだとは思いません

これまでにも噴火にともなう軽石が南西諸島に流れ着くことはあったが、今回は規模が違うという。
静岡大学・小山教授:
今回はとにかく規模が大きい。日本列島全体でも、100年に一度くらいの大量のマグマが爆発的に噴出した噴火です。研究者によってばらつきがありますが、数億トンのマグマが出ました。数億トンというのは、富士山の宝永噴火に匹敵するものですね

本州に到達したら漁業や観光が…
沖縄では、漁業や観光業に深刻な被害が出ている。
軽石を吸い込んで船が故障するおそれがあり、沖縄県に37ある漁協のうち6割が出漁を見合わせた。

また海上保安庁の巡視艇が訓練中に航行できなくなり、別の巡視船に引っ張られて港に戻る事態も起きた。

沖縄県は対策チームを設置し、軽石の除去など緊急の対応策を進めている。
この軽石は今後は黒潮に流され、本州の太平洋側、静岡県内の沿岸にも到達する可能性がある。
10月29日朝の下田港では、色鮮やかなキンメダイが水揚げされていた。軽石が北上するおそれに、漁業者も不安を感じ始めている。

漁業者:
下田に大量に流れてきたら、漁民も多いから大変だと思います
別の漁業者:
昼間なら(軽石が)わかるけど、夜だとわからないから危ない

静岡大学・小山教授:
いずれ沈んでいくのですが、これほど大量になると(沈むまでに)どれくらい時間がかかるか見通せないですね

影響は長期化するおそれもある。
原発の冷却水取り入れ施設への影響は
もう一つ、心配されるのが原子力発電所だ。冷却水を取り入れる施設に影響が出るおそれが指摘された。
原子力規制委員会・石渡明委員:
浮いたまま流れてくると、もろに取り込まれる。かなり影響が大きい可能性がある。(今回の軽石が)関連する原子力施設は、九州電力の川内原発や中部電力の浜岡原発だと思う。準備をしておくよう、国から注意喚起をしてもらえれば

中部電力によると、浜岡原発の取水施設には異物の除去装置があり、軽石を取り除くことができるということだ。

静岡・関東への漂着は11月後半か
研究機関のシミュレーションでは、軽石の北上は約1カ月。静岡県内や関東の沿岸には、11月後半にも漂着する見込みだ。
海の状況を注視しながら、関係機関は異変への備えが必要だ。

静岡大・小山教授:
いずれ静岡県の海岸に漂着するということは、当然あり得ると思います。南西諸島ほどのことはないのではという印象を持っていますが、警戒は必要かと思います

静岡県は、「気象庁など国の情報を注視しながら、必要な対応を取っていきたい」としている。漁業や観光業への対応が急がれる。
(テレビ静岡)