高齢者を狙った特殊詐欺は、後を絶たない。警察庁の公表によると、昨年は年間で1万3350件発生している。その中で、高齢者のキャッシュカードをだまし取ったり、盗み取ったりして犯罪者がATMを経由して不正に預金を引き出す被害も多くあるという。

この対策として、情報セキュリティ企業のラックと三菱UFJ銀行はAIを活用し、高齢者らから盗んだキャッシュカードでATMから出金するなどの不正取引を検知する実証実験を実施。この検知率が94%を達成したことを10月22日に発表した。

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では、どうやってAIは不正を検知するのか? その仕組みはこうだ。

最初に、正常取引と不正取引、それぞれの特徴量をAIに学習させてAIモデルを構築。構築したAIモデルは数多くの取引の中からAI自身で不正取引を判断できるようになっており、AIは学習した不正取引の特徴から、不正取引を判断・検知するという。
(※特徴量とは、犯罪を判断する基準として、犯罪者の様々な行動パターンを数値化したもの)
ATMの画面操作でいうと、暗証番号や引出金額など一通りの入力が完了した後のタイミングでAIは不正取引を判断・検知する。

詐欺には気をつけていたとしても、その手口はより巧妙になっていくため、騙されてしまうこともあるかもしれない。こうした仕組みがあると、犯罪の被害の抑止につながると思うが、今後はどのように使われていくのだろうか?

実証実験を行ったラックの担当者に詳しく話を聞いてみた。

キャッシュカードを騙し取ったり、すり替える手口

――そもそも不正出金は、1年間にどのくらい起きている?

全国の被害状況になりますが、警察庁の公表では、令和2年における特殊詐欺の認知件数は1万3550件、そのうち今回の検証対象に該当する「預貯金詐欺」及び「キャッシュカード詐欺盗」と呼ばれる手口はそれぞれ4135件、2850件となります。


――不正出金の特徴は?

「預貯金詐欺」及び「キャッシュカード詐欺盗」の手口は以下の通りです。

<預貯金詐欺>
警察官、銀行協会職員等を名乗り、「あなたの口座が犯罪に利用されています。キャッシュカードの交換手続きが必要です」と言ったり、役所の職員等を名乗り、「医療費などの過払い金があります。こちらで手続きをするのでカードを取りに行きます」などと言って、暗証番号を聞き出しキャッシュカード等をだまし取る(脅し取る)手口です。

<キャッシュカード詐欺盗>
警察官や銀行協会、大手百貨店等の職員を名乗り、「キャッシュカードが不正に利用されているので使えないようにする」などと言って、隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る手口です。


――具体的な内容は?

警察庁のHPでは、このような電話に注意してほしいと呼びかけています。

<預貯金詐欺>
詐欺「医療費(保険料)の払戻しがありまして、振り込みのためには今お使いのキャッシュカードを変更する必要があります。」
高齢者「どうすればいいですか?」
詐欺「のちほど、銀行協会の方から手続きについてお電話でご案内いたします。」
高齢者「ありがとうございます」
詐欺「新しいキャッシュカードを作るので、今からキャッシュカードを自宅に取りに行きます。手続きのため暗証番号も教えていただけますか?」
高齢者「わかりました。XXXXです。」

<キャッシュカード詐欺盗>

詐欺「特殊詐欺グループを捜査しているのですが、あなたのキャッシュカード(銀行口座)が不正に悪用されていることが分かりました。」
高齢者「え!困ります…。」
詐欺「大丈夫です。保護申請の手続きがありまして、そのためにキャッシュカードを確認したいので、ご自宅に伺ってもよろしいですか?」
高齢者「よろしくおねがいします。」


――高齢者が直接、犯罪者の口座に振り込む場合は含まれない?

今回の実証実験では不正出金のみを対象としていますが、ラックとしては今後AI不正検知システムの実現を目指しており、還付金詐欺といった被害者が騙されて振り込む手口なども対象とする予定です。

検知すると銀行は取引停止などの対応

――この仕組みは将来的にどう活用していく?

ラックとしては今後AI不正検知システムの実現を目指しており、将来的には、このシステムを金融機関に、金融サービスの不正利用防止対策として導入して頂くことを目標としています。


――実用化した場合、銀行などはどう使う?

金融機関で導入して頂くことを想定していますので、不正取引は金融機関側で検知するようになります。検知後の対応は金融機関によって異なると考えられますが、取引を停止したり、取引後にお客様に連絡して本人による取引か確認するといった対応が考えられます。


――今後、開発を進める上での課題は?

今後AI不正検知システムの実現を目指すにあたり、今回のATM不正利用だけでなく、インターネットバンキングでの不正検知等においても研究・開発を進めて行く予定です。


実用化にはまだ時間がかかりそうだが、金融機関が将来こうした仕組みを利用することで、少しでも特殊詐欺の犯罪抑止につながってほしい。そして、まずは自分自身がこのような詐欺に遭わないように注意することも大切だろう。