「寛容と許容」と真逆になった会見

先日、眞子さんと小室さんの結婚後の記者会見が行われた。左手の薬指に大きめの結婚指輪をはめ、「小室眞子」になりたての眞子さんは堂々として落ち着いていた。10分間ほどの会見の中では、張りのある声で「小室さんはかけがえのない存在」「結婚は心を守るために必要な選択」などと述べた。これらはすでに耳にしたことがある言葉だった。

二人揃っての会見に臨む眞子さんと小室さん
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驚いたのは、小室さんのお母様の金銭トラブルに関しても自分が進めた、さらにニューヨークの大学への留学も外国の拠点を持つように前倒しを私が依頼したとの発言だった。小室さんが独断で行ったことなど、何もないと言い切ったのだ。

この結婚では眞子さん主導の様子は垣間見えていたが、このように明確に断定されると、たじろいでしまう。これほど強調するのは、夫圭さんをかばうためなのだろうか。

真剣な表情で圭さんをかばう発言を重ねた眞子さん

眞子さんの今回の言動の中に国民に対する親しみや愛情が感じられなくて、私は後味が悪かった。子どもの時から写真などで成長を見守ってきた眞子さんの結婚を、ただお祝いしたいだけなのに、なぜこのように厳しく拒否されるのだろう。

自分たちを理解し支持してくれる人には感謝して、結婚に反対する声は「誹謗中傷である」と捉える。国民を分断してしまうようなロイヤルを、私たちは求めていないはずだ。皇室や王室は、国をまとめる統合の意味合いが強い存在ではなかったか。味方には優しく、敵には容赦ない。これでは、皇室の寛容と許容のイメージとは真逆ではないだろうか。

「過去は変えられないが、未来は変えられる」

思い出されるのは、ノルウェー王室だ。ホーコン皇太子とメッテ=マリット皇太子妃は婚約記者会見に臨んだ。しかし、雰囲気はとげとげしかった。

メッテ=マリット妃は、父親がジャーナリスト、母親は専業主婦という家庭で育ったが、11歳の時に両親が離婚した。それから彼女の生活は荒れる。麻薬に手を染めてしまい、ドラッグパーティーなどに足を向けるようになった。まもなく妊娠したが、相手の男性はそれを知ると、立ち去ってしまった。彼女は一人でマリウス君を出産、育児をするようになった。これを機に彼女は麻薬を断ち切りレストランのウエートレスをしながら、猛勉強を始める。そして、ノルウェー最難関のオスロ大学への入学を果たした。

大学生の時に、ロックフェスティバルで知り合ったのが、ホーコン皇太子だった。当初は皇太子とは知らなかったが、二人は意気投合。マリウス君と共に同棲するようになった。それを知ったメディアは、メッテ=マリット妃について調べ上げる。マリウス君の父親は麻薬常習者で、服役歴があることが分かった。本人も、ドラッグパーティーに出入りしたシングルマザーであるとすっぱ抜いたのだ。将来の王妃にはふさわしくないと厳しく非難したのであった。

「彼女と結婚できないなら王室から離脱する」と決意を語ったホーコン皇太子はメッテ=マリット王妃と2000年に婚約を発表、記者会見に臨んだ。そこでメッテ=マリット妃は「過去は変えられません。しかし未来は変えられます」と国民に誓ったのだ。涙を静かに流しながら、過去を認めて謝罪、将来への決意を明かした。横に座っていた皇太子はしっかり彼女の手を握って励ました。

記者会見の会場の雰囲気は一変した。泣いている女性記者も見受けられた。過去に一点の曇りもない人がいるだろうか。大切なのはそれを反省して今後に生かせる人である。それを教えてくれたのがメッテ=マリット妃だった。

過去を認めて謝罪、将来への決意を明かしホーコン皇太子と結婚したメッテ=マリット妃

結婚式では、ホーコン皇太子はマリウス君を抱いて国民の前に登場、メッテ=マリット妃と共にお祝いの歓声を浴びたのだった。結婚後も妃は、麻薬依存症と取り組む慈善団体を訪れては、患者を励ますなどして支援を続けている。

マリウス君を抱いて国民の前に登場したメッテ=マリット妃(2001年8月)
涙の記者会見から8カ月、国民はこの結婚を祝福した

努力で貫いたスウェーデンのヴィクトリア王太子の愛

スウェーデン王室は、かつて王位継承一位のヴィクトリア王太子が拒食症を患ったとき、治療を兼ねてアメリカに渡った。父親のカール16世グスタフ国王は国民に娘の病気を率直に明かしている。治癒して帰国した王太子は体力回復のためにジムに通う。出逢ったのがパーソナルトレイナーのダニエルさんだ。王太子は自分を理解し心身をささえてくれる彼に恋をして、二人は結婚を誓う。

しかし国王も国民も大反対だった。ダニエルさんは民間人で、一般の体育大学を卒業してスポーツについては詳しくても、女王の夫としての教養は不足しているとみなされた。しかし二人の結婚の意志が固いとみると、国王はダニエルさんに勉強を課す。

フランス語など3カ国語の学習に行儀作法のマスターを求めた。王室やスェーデンの歴史の学習、何より美しいスウェーデン語を完璧に話すように命じたのだ。結局国王から認められるまで7,8年かかった。ダニエルさんは見事にクリアして、2010年に結婚。男性版「シンデレラストーリー」と言われたが、何より彼の忍耐力と努力とそれを支えた王太子も評価された。今は一男一女を授かって、幸せな理想の一家として、国民の人気は高い。

国王から認められるまで7年...そして幸せをつかんだヴィクトリア王太子(画像:EPA=時事)

国民の支持と敬愛があってこそ王室は輝く

かつての王室の結婚は、親同士が決めたり、お見合いをしたりする例が多かった。しかし、今ではほぼすべて恋愛結婚で、国際結婚も当たり前になり、離婚経験者や連れ子がいる場合もある。オランダでは、ロイヤルが同性愛者でも王位に就くのに変わりはないとルッテ首相が発表した。急速にロイヤルの人権は尊重され、自由度は増している。だからこそ、ロイヤルはさらに国民の理解が得られるように努める必要がある。国民の支持と敬愛があってこそ王室は輝く。

【執筆:英国王室ジャーナリスト 多賀幹子】

『孤独は社会問題』多賀幹子著