東京都では、認証を受けた飲食店などの時短要請を10月25日以降に全面解除することを正式決定したが、まだマスク生活は当分続きそうだ。
いわゆる「マスク会食」を煩わしいと思っている人も多いだろうが、そんな中、東京・大手町の日本旅館「星のや東京」が、13日からあるサービスを始めている。
それが、巨大な提灯(ちょうちん)型パーティションを使い、マスク不要で飲食や会話ができる「東京・提灯会食」だ。

「星のや東京」がwithコロナ時代に提案するニューノーマル会食で、天井からつるした直径75×高さ102cmの提灯型パーティションの中に顔を入れた状態で食事をするサービス。提灯は、京都にある老舗の職人が骨組みから絵付けまで手掛けたオリジナルだという。
内部にはLED電球がついているので人の顔や料理が明るく見え、また提灯の最下部とテーブルの間は約20cmの隙間があるとのことで食事もしやすいそうだ。

顔の高さにあたる部分は紙が貼られておらず、前面は薄いビニールで覆われ、また後ろ側は骨組みのみで、飛沫を防止しながら通気性も確保されている。利用者は、この提灯の中でマスクを外し、食事をしながら会話も楽しめるという。

「提灯会食」は5日前までの予約が必要で、基本的に2人以上の1日1組限定。気になる料金は会場代が1組3万円、コース料理の料金が1人あたり2万1780円。
ただし「星のや東京」のダイニングは通常、宿泊客のみの利用に限られ、今回の「提灯会食」に限っては、宿泊者が外から客を招くことはできる。ちなみに「星のや東京」の宿泊料は、取材した16日時点で1室10万2000円(税・サービス料10%込・食事別)からとなっている。

アクリル板のパーティションを設置する飲食店は増えたが、これまでになかった「提灯会食」は、その見た目もあってか注目を集めている。
SNSでは「SFの世界」「インパクトがすごい」などの肯定的な意見がある一方、「正気か?」などの否定的な声も見受けられ、さまざまな意見が飛び交っているのだ。
それにしても、なぜ提灯型にしたのだろう。リリースには「星のや東京のコンセプトに相応しいパーテーションを模索」したとあるのだが、他にどんな形を考えていたのだろうか? また提灯の中は窮屈ではないのか?
星のや東京の広報担当者に聞いてみた。
館内の雰囲気に合わせ出て来た発想
――なぜ提灯型にした?
飲食店、飲食スペースでの(アクリル)パーテーション設置がスタンダード化される中で、せっかくなら同じパーテーション設置でも食事の場をより楽しいものにする体験提案が出来ないか考え、このアイデアに至りました。
提灯に関しては初め館内の雰囲気に合わせ出て来た発想です。快適性や動作検証をする中で、提灯の伸縮性が理にかなっていることが分かり、提灯をベースにして開発を進めてきました。

――提灯型のほかに、どんなアイデアがあった?
全身が収まるアクリル製のボックスや障子型のパーテーションというアイデアが出ましたが、最終的には、実用的かつ機能美に優れた提灯の形になりました。
見た目よりも提灯の中は快適
――会話や食事はしやすいの?
実際の食事のシーンに限りなく近い設定で、複数名のスタッフたちと何度もロールプレイを通した検証を進めました。会話の聞こえやすさはもちろん、視界、お客様の身長、着席離席、スタッフの食事サーブなどを想定した修正を加えており、見た目以上に提灯の中では快適に過ごしていただけます。
――提灯の出入りは手伝ってもらえるの?
基本的にはチェアサービスと同じように、介添えいたします。なお、提灯型パーテーションは、お客様ご自身でも簡単に入ることのできるよう、軽量かつ伸縮性のある設計でございます。

――写真では窮屈そうにも見えるけど、実際は?
写真はイメージなので、実際の食事の際には、背もたれにはクッションを設え快適に食事をお楽しみいただけます。また、他のサービスと同様に、今後はそれぞれのお客様のご要望に合わせて対応します。
――ちなみに、緊急事態が解除されて以降、お客さんは戻ってきた?
第4波以降(21年4月)は、感染者数の増減に関わらず堅調に予約が入る状況が続いていましたが、8月に感染者数が爆発的に増えた際には予約が入りづらい状況になりました。
ただ9月に入ってからは感染者数が落ち着いてきたこともあり、新規予約は再度入るようになってきました。緊急事態宣言の解除前後で大きく変わることはなく、引き続き堅調に予約が動いています。

25日以降は都の認証を受けた飲食店などへの時短要請が全面解除されることから、外食する機会が増える人も多いかもしれない。
マスクを外して会食を楽しみたいという人は、店側が万全の準備を整え、ノーマスクOKを謳う、このようなサービスを利用してみてはいかがだろうか。