“美食の都市”として知られるフランス中部・リヨン市で、9月27日に「ボキューズ・ドール」の決勝戦が行われた。
「ボキューズ・ドール」はフランス料理界の頂点を決める世界最高峰の料理コンクールで、2年に1回開催される。

「トマト」と「エビ」でオリジナリティ溢れる“テイクアウト”

決勝戦では、世界各国を代表するシェフらが、テイクアウトメニューと大皿料理の2つの課題を前にオリジナリティ溢れる料理で競い合った。

テイクアウトメニューに取り組む各国のシェフら
テイクアウトメニューに取り組む各国のシェフら
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「テイクアウトメニュー」は、前菜・メイン・デザート全てでトマトを使用し、メイン料理にはブラックタイガー種の海老を使うよう指定されている。また、環境に配慮して3品すべてを再生可能な一つの箱に入れるのが課題だ。

この課題には、コロナ渦で苦境に立った飲食業界がテイクアウトメニューに力を入れたことを称賛する意味合いが含まれている。

「再生可能な一つの箱に入れる」のも課題だ
「再生可能な一つの箱に入れる」のも課題だ

日本代表・戸枝シェフは「トマトの成長」を表現

日本から出場したのは長野・軽井沢町にあるレストラン「TOEDA」の戸枝忠孝シェフ。

競技中は常に落ち着いた様子で、これまでの練習通り作業を淡々と進めている印象だった。
各皿全て違う種類のトマトを使用し、「トマトの成長」を表現したという。

完成した戸枝シェフの「テイクアウトメニュー」
完成した戸枝シェフの「テイクアウトメニュー」

3つの皿を載せた台は回るようになっていて、一目で全体が見える楽しさがあり、食べやすさにも配慮した親切さも伝わる。

審査員は、台が回転する仕掛けに驚いた様子を見せ、何度もうなずきながら試食していた。

台が回転し驚きをみせる審査員
台が回転し驚きをみせる審査員

「軽井沢の森」をイメージ

牛肉を使った大皿料理の課題では、戸枝シェフは「軽井沢の森」をイメージした。

地元・信州のシイタケとワサビに加え、朴葉をかたどったフランスの焼き菓子「チュイル」で料理を軽く覆う。秋に森を散策しながら、葉を拾った時に現れた自然の宝を思わせる演出だ。

審査を終え、結果発表の時がやってきた。
優勝は地元・フランス代表で、戸枝シェフは参加21カ国中、9位に終わった。冷静な戸枝シェフが初めて悔しさを見せた瞬間だった。

戸枝忠孝シェフ:
やっぱり初めてのお題ということで、しかもトマトを主にしてメインだけ海老という形だったので、普通の料理というよりはすごく戸惑いました。
テイクアウトメニューをどっちの方向に寄せたらいいのかとか、またボックスもちゃんと作っていかないといけないので、すごく難しいお題だったと思います。

テイクアウトが難しいテーマだったという戸枝シェフ。
それでも戸枝シェフの挑戦は、“日本の食の魅力”を世界にアピールする貴重な機会になっただろう。

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国際取材部
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ルアナ・モセ
ルアナ・モセ

異文化と多様性を目指す

フランスとブラジルのハーフ。 フランス国立東洋言語文化大学で日本語と国際関係を勉強した後、立教大学に留学し社会学を専攻。 大学中からFNNパリ支局で取材を手伝っている。