3社の共同企画として、8日NHKで東日本大震災の報道検証と今後の連携をテーマに討論番組が放送されました。当時、被災地で報道にあたったローカル局と地元FMラジオ、災害報道の専門家も交えて活発な議論が行われました。

届かなかった津波映像

東日本大震災では仙台空港が津波で被災して、FNN系列や民放各局のヘリは飛ぶことができず、NHKのヘリが沿岸部に押し寄せる津波の映像を伝えました。また翌日には福島第一原発の建屋で水素爆発がおきましたが、この瞬間を捉えたのは停電していなかった福島の地元民放局の情報カメラだけでした。もし津波の映像を同時間帯にすべてのテレビ局で伝えることができていれば、視聴者は今おきている大災害を確認し、さらに多くの人たちの避難行動につながったかもしれません。

東日本大震災を契機に在京の民放各局は代表ヘリ制度を作り、1社でもヘリが被災した場合は代表ヘリの映像を共用できるようにしました。また名古屋では南海トラフ地震で大津波警報が発表されたときは民放4社のヘリが分割した取材エリアを飛んで、映像を同時使用できることになりました。
災害の状況を迅速に伝えることができるヘリなどの映像をテレビ各社がどこでおきたとしても共有できるようになれば、命を守る行動につながっていきます。

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安否情報の重要性

昨年、一昨年の台風や豪雨災害などでは多くの住民が犠牲となりましたが、全国の自治体では個人情報ということで安否の実名情報を明らかにしないケースが相次いでいます。これは連絡が取れない被災者の無事を願う家族らに情報が届かないだけでなく、救出活動にも影響します。災害現場の捜索でそこの住民が無事であることが事前に分かれば救助隊は次の現場で救出活動にあたれます。安否情報の公表は命を守ることにもつながるのです。

NHK「“死者ゼロ”を目指せ」より

被災者に必要な情報

時間の経過と共に被災者には食料や水、衣料品の支援だけでなく、ガソリンスタンドはどこが空いているのか、お風呂はどこで入れるのかといった情報も必要になってきます。災害現場によってそのニーズはさまざまで、テレビもテロップでそうした情報を流しますが、ストックされた情報を必要な時に取りにいくにはインターネットのほうが優れています。またその地域に根ざしたFMラジオ局などのほうが、より住民に必要な情報を発信できるといえます。

東日本大震災の避難所の取材では自らがここで生存していることを報じてほしい、あるいはこの人と連絡がとりたいという声が多くあり、丹念に伝えました。
一方で熊本地震では多くのメディアが特定の避難所や自治体に集中し、被災者の負担になったこともありました。被災者の立場を思い、どのような取材が求められているのか、メディアは立ち止まって考えることが必要です。


メディアの連携

東日本大震災から9年、テレビとインターネットの融合が進む中で、新たな災害が発生したときに1人でも多くの命を守るためにやれることはまだ数多くあります。
それぞれのメディアが情報を共有して発信する、被災地の継続取材と災害検証などこの討論を出発点として、できることを具体的に実現していくことが何よりも重要だと考えています。


(執筆:フジテレビ報道局取材センター室長兼社会部長 青木良樹)

【NHK フジテレビ ヤフー 共同企画「その時」メディアに何ができるのか】
「 わ・す・れ・な・い 死者をゼロにする情報」
3月11日(水)15時50分~16時50分 フジテレビ※関東ローカル

青木良樹
青木良樹

フジテレビ報道局解説委員室室長 危機管理委員長  東京都出身 1988年フジテレビ入社  警視庁や警察庁記者、ニュースディレクターなどを経て、警視庁クラブキャップ、バンコク支局長、編集長、社会部長などを務める。オウム真理教事件、和歌山カレー事件、ミャンマー日本人ジャーナリスト射殺事件などを取材し、現在は新型コロナや災害取材のとりまとめ、危機管理などにあたっている。

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