「人生の大半ここで過ごしたので寂しい」開業時を知るベテラン店長
名古屋中区にある1986年に開業したセントラルパークアネックスビルは、2021年10月17日をもって閉館する。それに伴い、ビルのオープンと同時に開業した「東急ハンズ・アネックス店」も、35年の歴史に幕を下ろす。
他では手に入らないモノや、時代を先取りするモノなどを揃え、多くの人で賑わった東急ハンズ・アネックス店。閉店前の店舗を取材すると、客だけでなく周辺の店や施設など、多くの人たちに愛されていたことが伝わってきた。
この記事の画像(21枚)35年の歴史に幕を下ろす東急ハンズ・アネックス店。
店長の井戸登さん(58)は、アネックスビルがオープンした1986年に入社したベテランで、開業時を知る数少ない一人。
午前9時30分。ハンズの制服に着替えた井戸店長は、事務所でメールや前日の売上を確認。何年もやってきたオープン前の作業だ。
井戸登店長:
20年ぐらいここ(アネックス店)で…。人生の大半を過ごしていますので、やはり寂しい感じはありますね
午前11時にオープン。この日は日曜のため、家族連れなどが訪れる。井戸店長は、お客さんに積極的に話しかけ、商品の案内などをする。
常連の男性客:
高校の時からなので30年ぐらい。東急ハンズ自体が(当時)ここだけだったので、他には置いていないモノとかあったので来た覚えがあります
オープン当初からの常連の女性客:
ちょこっと釘が欲しいなと思うと、小さいサイズも置いてあるから…。すごく助かっていたので、今度からどうしようって感じ…
男性客:
(閉館のニュースを)テレビ見て来ました。システム手帳のノートを買いにきたり、テーブル作ったり。あーもうなくなっちゃうんだなぁって、気になっていて…
最近は、閉館を知って訪れる人も増えたという。
時代を先取りするモノを次々販売…多くの客訪れるも35年の歴史に幕
セントラルパークアネックスビルは、1986年に開業。華やかなセレモニーも開かれ、オープンを盛大に祝った。中でも、東海地方初出店の東急ハンズは大人気で、連日多くの客が訪れた。
他では手に入らないモノ、時代を先取りするモノを次々と入荷。システム手帳は、ハンズの文具売場の顔に。クリスマスツリーやパーティグッズ、懐かしい家庭用の年賀状印刷機など、当時話題になったグッズを販売していた。
さらに、ゴーグルやマスクなどの花粉症の関連グッズに、阪神淡路大震災が起きた1995年には防災グッズや缶詰などを販売するなど、時代が求めるものをいち早く揃えた。
また、ポテトチップス専用のトングや、名古屋市の敬老手帳専用のポーチなど、東急ハンズの社員が開発したものも…。幅広い品揃えに、「東急ハンズにいけば何とかなる」というイメージが定着した。
多くの客が訪れ、1993年度にはビル全館の売上が140億円を突破。
しかし時代は流れ、ビルの老朽化もあり、10月17日をもって35年の歴史に幕を下ろすことになった。
「名駅に負けるな」と栄・久屋大通エリアをけん引…周辺の店舗には閉店惜しむ声
午後2時。ビルの外へ出た井戸店長は、お世話になった周辺の施設にご挨拶。まず向かったのは、中部電力ミライタワーだった。
東急ハンズは、久屋大通エリアを盛り上げるために2012年から2018年まで、名古屋テレビ塔と共にイベントを開催。長く一緒に活動をしてきた。
井戸登店長:
地域の一員として、(盛り上げが)できたっていうのはすごく良かったと思います
中部電力ミライタワーの担当者:
あれ買わなきゃと思った時に、いつも行く所がハンズさんだったので…。無くなってしまうのが、すごく寂しいですね
他にも、丸の内エリアやアネックスビルの中の店にもご挨拶。「名駅に負けるな」と栄・久屋大通エリアを盛り上げようとけん引してきただけに、寂しさが募る。
約4000種類のセール品など掘り出しモノ揃う…最後のハンズメッセ
午後5時。挨拶回りから戻った井戸店長は、3階のコスメフロアで「ハンズメッセ」の準備をしていた。
「ハンズメッセ」は、年に1度開催している東急ハンズのセールで、2020年はコロナの影響で中止となったため、2年ぶりの開催だ。
アネックス店は、名古屋店と一緒に独自商品を入荷して販売。今回は、職人が手作りした石鹸や人気の女性用ストレッチパンツなど約4000種類のセール商品が揃う。
井戸店長も、スタッフと開催前の詰めの打ち合わせ。長く親しんだアネックス店での最後のハンズメッセに気合いが入る。
井戸登店長:
アネックス店にとっては最後のハンズメッセになりますので、今までお世話になった気持ちも込めて、感謝を込めてお客様に還元できたらいいなと思っています
35年の歴史に幕を下ろす東急ハンズ・アネックス店の最後の「ハンズメッセ」は、9月30日まで。
(東海テレビ)