広島の街を縦横無尽に走る路面電車。“鳥の巣”と呼ばれ、「広電」の安全運行を支えた施設がこの度、取り壊されることになった。

路面電車の運行支えた“鳥の巣”

交差点を一望できる空間
交差点を一望できる空間
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電気設備が置かれ、交通の要衝である広島市の十日市交差点を一望できる円形の空間。
ここを訪れたのは、テレビ新広島の野川諭生アナウンサー。

野川諭生アナウンサー:
失礼します…おおっ!ここは…すごい空間ですね。ちょっと言葉が出てこない。時間が止まったような不思議な空間になっています。隅々までここからよく見えますね

野川諭生アナウンサー「時間が止まったような空間」
野川諭生アナウンサー「時間が止まったような空間」

建物は1952年に建てられ、高さ6m50cmの高い場所から顔を出し、鳥の雛のように電車の動きを確認する姿から、広電の社員の中では“鳥の巣”の愛称でも親しまれてきた信号所。

十日市交差点を見守るように建つ
十日市交差点を見守るように建つ
鳥の雛のように顔を出す姿から愛称“鳥の巣”
鳥の雛のように顔を出す姿から愛称“鳥の巣”

かつては広島市中心部に2カ所あり、路面電車の運行に欠かせない大切な役割を担っていた。

その当時、紙屋町交差点にあった信号所での働きを撮影した映像。

当時のナレーション(1990年10月撮影):
ここには信号員が2交代で詰めて、行き先別にポイントを切り替えています。
3方向から進入してくる電車は1日1134本。信号員は交代できない3時間もの間、気を抜くこともトイレにいくこともできません。だから水分を取りすぎないように気を付けているということです

1990年10月撮影
1990年10月撮影

自動化とともに“鳥の巣”は無人に…

こうしたまるで“鳥の目”のような役割は、十日市交差点においても1955年まで行われ、職員が双眼鏡などを使って目視で状況を確認し、電車の行き先に応じたポイントの切り替えをしていた。

路面電車がよく見える
路面電車がよく見える

そんな“鳥の巣”も、ポイント制御の自動化とともに無人化。

広島電鉄 電車技術部・上田賢治電気課長:
人がいなくなってしまったので、ここには機械だけが残ったという形で…耐震性の問題とかもクリアしていない建物ですし、今回  機械が撤去ということもあって、しょうがないのかなという思いの中の解体

通行人:
僕はここで十数年仕事をしていますけど、ずっとここにあるのが当たり前みたいな感じだったので、なくなればなくなったで、寂しいなぁという気がしますけど

9月6日、"鳥の巣”の周りに足場が組まれ、行われた解体作業。
60年以上この地を見守ってきたその歴史に幕が下ろされる。

60年以上も街を見守った歴史に幕
60年以上も街を見守った歴史に幕

街の“シンボル”は、静かにその役目を終えた。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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