北極圏では今、急激な環境変化が進んでいる。

8月には国連の組織(IPCC)が、「北極圏では世界平均の2倍の速度で温暖化が進んでいて、2050年までに少なくとも一度、北極圏の海氷がなくなる可能性が高い」という見解を示した。また、このまま地球温暖化が進むと、世界の平均気温は2040年までに1.5度上昇する可能性が高いともしている。

そんな北極の環境を調べるため、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が海の氷を割りながら進む日本初の砕氷観測研究船を造ることを発表した。建造費総額は約335億円で、引き渡しは2026年度の予定だという。
 

海洋研究開発機構は日本の海洋科学や技術の総合的な研究機関で、1971年に前身となる認可法人海洋科学技術センターとして設立された。有人潜水調査船「しんかい6500」や、地球深部探査船「ちきゅう」などの調査船や探査機を使って日夜様々な研究に取り組んでいる。

有人潜水調査船しんかい6500(出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構)
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地球深部探査船ちきゅう(出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構)

新たな砕氷観測研究船は、全長128m、船幅23m、総トン数約1万3000トンで乗員は99人厚さ1.2mの平坦な1年氷(できて1年経過していない海氷)を連続して砕氷する能力があり、国際的な規則で「多年氷が一部混在する厚い一年氷がある海域を通年航行可能」とされる「ポーラークラス4」を計画している。

ちなみに「ポーラークラス」は数字が低いほど砕氷能力が高く、1996年から同機構が所有する海洋地球研究船「みらい(8706トン)」は「多年氷が一部混在する薄い一年氷の中を夏季又は秋季に航行する」ポーラークラス7。

海上自衛隊の南極観測船「しらせ(1万2650トン)」は「中程度の厳しさの多年氷が存在する氷水域を通年航行する」ポーラークラス2だという。

海洋地球研究船みらい (出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構)

また、新しい砕氷観測研究船には空中・海中ドローンや、巨大なボール状の気象観測装置「ドップラーレーダー」をはじめ、世界トップクラスの高精度な観測機器を搭載。同機構では、これまで「みらい」では行けなかった地域の観測を行うことで観測データを充実させ、北極域や地球環境全体の将来予測の高精度化に貢献するとしている。

出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構

その性能を知れば知るほど、すごい研究船となりそうだ。そして、1万トンを超える船と聞くと、大量の物資を積んで長期間の航海が出来そうだが、一体どのぐらい北極で過ごせるのか?また、日本の研究船は世界のレベルと比べるとどうなのか?

気になる点を海洋研究開発機構の担当者に聞いてみた。

晩春から初冬ぐらいまでの観測航海が可能

――なぜポーラークラス4に決まった?

本船が観測を実施する北極海の海氷の性状(厚さや形状)と、研究船としての船体バランス(船型や大きさ)、経済性などを総合的に勘案し、ポーラークラスを4としました。


――そもそも、どうやって氷を割るの?

主には3ノット程度での連続砕氷を想定していますが、海氷の厚さや形状によってはラミング航行(いったん後退して全速前進する勢いで氷に乗り上げ、船の重みで氷を割る方法)を行う可能性もあります。


――約1万3000トンというのは、世界の研究船と比べて大きい?

研究船としては大型です。砕氷研究船としては平均的と思われます。


――ここまで大きくするメリットがあったの?

総トン数は必要な設備等を考慮して設計した結果です。本船はむしろなるべくコンパクトな船を目指して計画しております。


――この船で北極にどのくらい滞在できる?

具体的な滞在期間については、どのような観測を実施するかによりますので現時点では未定ですが、季節としては晩春から初冬ぐらいまでの間であれば観測航海が可能と想定しています。
 

「みらい」や「ちきゅう」のような名前になる?

――ちなみに、日本の研究船は世界的にレベルが高い?

船の性能という意味では、日本の高度な造船技術で建造されていますのでトップクラスと認識しています。観測活動についても、少なくともJAMSTECでは長年積み重ねてきた技術がありますので、世界的にトップクラスの観測が可能と自負しております。


――温暖化などの環境変化で、研究船の需要は増えている?

ご質問のとおり、社会的ニーズなどの背景があって本船の建造が決定されたものと承知しております。ご期待に応えられるような砕氷研究船となるよう建造を進めてまいります。


――「みらい」や「ちきゅう」のような名前になるの?

今後検討してまいります。
 

出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構

JAMSTECといえば「深海6500」などメカ好きの心をがっちりつかむ、スーパーマシンをたくさん所有しており、もちろん砕氷観測研究船もその一つになりそうだ。

北極海の氷を割り進む砕氷観測研究船の勇ましい姿をはやく見てみたいものだが、引き渡し予定は2026年。いったいどんな名前になるのか、どんな成果を上げるのか今からとても楽しみだ。

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