菅首相の電撃辞退で状況が一変した自民党総裁選。安倍前首相が高市氏支援に回るなど、「毎日局面が変わる」との声も出ていて大乱戦の様相。
各候補者が動きを活発化させる中、自民党内では「誰が選挙の顔にふさわしい“発信力”の持ち主か」が争点となっている。
766票をめぐり争う自民党総裁選
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
9月3日の菅首相、総裁選出馬の電撃辞退から、週末を挟んで総裁選の構図が大きく変わりました。誰が菅首相の次の日本のリーダーになるのか?

フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
自民党の総裁選は、国会議員票383票と党員票383票をめぐって争うわけですが、今回特に重要なのが“発信力”だと言われています。
それは総裁選の後に総選挙があるので、総裁選の勝者が自民党の“選挙の顔”になる。そこで各議員も発信力に期待するわけです。ですから候補者たちも、その期待に応えようと必死になっています。

「岸田BOX」を活用し発信力を強調
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
まず、菅首相の辞退で一番大きな影響受けたのは、岸田文雄前政調会長です。岸田前政調会長は「自身の派閥の人」に加えて、いわゆる「反菅票」を集めて戦おうと思っていたのですが、菅首相が出馬を辞退してしまったので、期待した「反菅票」がなくなってしまったわけです。
こうした中、岸田前政調会長は9月5日の「日曜報道 THE PRIME」に出演し、こう話しています。

岸田文雄前政調会長:
候補者の動き、関心ありますし、注視していきたいと思いますが、あくまでも国民あるいは党員に向き合って選挙をやる。これが原点である。

フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
つまり岸田前政調会長は、「世論に対してしっかり発信していくぞ」と、ある意味宣言したわけなんです。さっそく5日に、ネットで国民から意見を募集する「岸田BOX」を使って、政策を発信したり質問に回答したりしました。その中で、こんなひとコマがありました。

岸田文雄前政調会長(YouTube Live対話):
「バナナはおやつに含まれるか?」という質問、含まれません。バナナは昭和30年代中ごろまでは輸入規制がかかっていた。よってですね、大変な高級品であった。


フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
もちろん他にもいろいろな話をしているんですが、こうしたゆるい話をあえて含めて、国民への発信力を強調して知名度を高める。そうすることで、自身の派閥に加えて他の派閥からも「岸田氏で選挙が戦えるぞ」と思ってくれる仲間を増やしていく戦略だと思います。

加藤綾子キャスター:
特にこのコロナ禍においては、発信力というのがリーダーとして求められる要素の一つになりましたね。
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
菅首相が発信力不足を指摘されていましたので、その点でも、岸田前政調会長が発信力を強めるという狙いがあるのだと思います。
高市氏は“伝統的”安倍流政策で支援拡大へ
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
そして、週末に動きがあったのは、高市早苗前総務相です。高市前総務相は、立候補に必要な推薦人20人が集まったとして、出馬する意向を固めました。この背景にいるのは安倍前首相です。安倍前首相が高市前総務相の支援を打ち出したのです。
なぜ安倍さんが支援に回ったかというと、高市前総務相が9月3日の「プライムニュース」でこんな発言をしています。

――安倍政治の継承が大きな旗印?
高市早苗前総務相:
継承というよりは発展。それからもう一つは、安倍内閣の積み残しというのがある。
――総理になって靖国参拝はどうする?
高市早苗前総務相:
役職にかかわらずこれまで続けて参りました。決して外交問題ではございません。

フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
このように高市前総務相は、安倍前首相の政治姿勢、つまり自民党が重んじる伝統的な考え方の発展を強調しているわけなんです。こうした政策の発信力を強調することで、同じ考えの自民党員や安倍前首相の考え方に近い議員を、仲間として集めて戦おうとしているものと見られます。さらに、安倍前首相と関係の近い麻生副総理も支援に回る可能性が指摘されているんです。

フォロワー236万人超 河野流発信でTGC参戦も
加藤綾子キャスター:
麻生副総理は、河野太郎規制改革相が所属する派閥のトップですよね?
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
まさにその河野太郎規制改革相と麻生副総理ですが、9月6日午後1時から会談しました。その後、記者団が河野制改革相に総裁選の質問をしたんですけれども、その質問には答えない形で、会談の内容がどういうものかはまだ分かっていません。

フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
ただ、河野制改革相は出馬の意向をすでに固めていて、今週中にも出馬表明したい考えです。そして、この河野制改革相こそ、発信力が高いとされる政治家です。ツイッターのフォロワー数は236万人を超えていて、5日には東京ガールズコレクションをめぐって、こんなひとコマもありました。

河野太郎規制改革相:
いよいよ若い方も、だんだんと予約が取れるようになってきたので、もう一度ワクチン接種をお願いしますというメッセージを皆さんに発信させていただいた。そういうことです。

加藤綾子キャスター:
こういう若い世代への呼び掛けと共に、自分自身を周知してもらうということですね。
フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
東京ガールズコレクションは若い方にワクチンを接種したいということで、リモート参加しているんですけど、これは河野制改革相ならではだなと思います。
河野制改革相としては、国民の発信力の強さを武器にして、「自分は選挙の顔として戦えるぞ」と選挙に不安を抱えている若手議員を仲間にすることで、総裁選を展開していく見通しなんです。また、現職大臣として公の場所で発信できるのも強みだといえます。

フジテレビ政治部 佐藤友紀デスク:
一方、こちらも発信力が評価される石破茂元幹事長ですが、出馬の是非を慎重に検討しています。野田聖子幹事長代行は推薦が集まるかが焦点で、この2人の動向が注目を集めています。

発信力だけでなく“聞く力”も重要
加藤綾子キャスター:
柳澤さん、ここまでの動きをどうご覧になりますか?
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
確かに「発信力」は大切ですけれども、その前に私は国民の抱いている不安とか思いにしっかりと向き合って、「聞く力」を持ってほしいと思います。そうでなければ、発信力につながらないと思うんですよ。
これまでの菅首相にしても、記者会見で記者の質問にまともに答えないということが、たくさんありましたよね。それでは発信力につながらない。まずは国民の声に、不安にしっかりと向き合って耳を傾けてほしい。それが発信力につながるんじゃないかと、僕は思います。

加藤綾子キャスター:
今のこういう動きを見ていると、日本のリーダーを選ぶためということよりも「自民党の選挙の顔選び」という動きが色濃くなっている感じですね。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
今の政治状況を考えれば、自民党の総裁が日本の舵取りをする総理大臣になるという構図ですから、関心が高いのはやむを得ないとは思います。
加藤綾子キャスター:
慎重に流れを見ている、ということでしょうか。
(「イット!」9月6日放送分より)